小説本文



翌日の土曜、日曜はDVDは見なかった。朝起きてまた改めて考えてみたからだ。
怪しいと思っても見てはいけないものはある。
見たい気持ちは抑えよう。朝から朝食を作って掃除をして、家庭のために一生懸命働いてくれている。
妻を見て、そういう気持ちを持つことに凄く罪悪感を感じたのだ。

次の週の金曜、久しぶりに妻に駅まで迎えに来てもらった。
妻の運転中、妻の携帯がなった。運転中だったが、車を路肩に停めて電話に出た。
「うん、うん、じゃあ明日ね!」そう言って電話を切る。
明日友人が出てくるから会うことになったの。飲んでくるから送ってって。

翌日、昼前に妻を送っていった。子供たちも朝から出かけている。
家に一人になって、改めてDVDのことが気になる。
今ならいくらでも見れる。もちろんそれは妻には勝手に見ることになる。その罪悪感はないわけではない。
しかし今みたらばれずに見ることができる。
結局車までDVDを取りに行き、DVDを持ってきてしまった。
この間見たのは「1」と書いてあるDVDだ。今日は「2」から見てみよう。
DVDを手に取り、プレーヤーに挿入する。
一回深呼吸をして、再生ボタンを押す。
前回同様、画像ファイルだった。
1枚目を表示してみる。
そこに写ったのは水着の女性だった。
顔を見てみるとこの間見たDVDと同じ女性に見える。
前回見たのは服を着ている姿だったが、今回は水着だ。
歳は若くはないがスタイルはいい。本当に何のためのDVDだかわからないくらいポーズは微妙に変わるが、
同じような水着の、同じ女性の写真ばかりだった。
一応100枚近くあるすべてのファイルを流し見した。
もしかして「3」では水着まで脱いでいたりするのだろうか?
それならばなおさら見てみたい。DVD-R1枚に画像を100枚前後しか入れないということはそれなりに分けてあるのだろう。
DVD「3」を再生する。
すると今度は動画ファイルが1つ入っている。それを再生してみる。
そこにはさっきとは別の女性が映っていた。ホテルの一室だろうか、綺麗なベッドが画面に映りこんでいる。
綺麗な服を着ている20代後半に見える女性だ。カメラマンの男の声がして、それにあわせて女性がポーズをとる。
全身を舐め回すように映した後、「じゃ、脱ごうか」と男の声がした。
すると女性は着ていたワンピースを脱ぎ、下着姿になる。そしてそのまま下着を取り全裸になってしまった。
そのままいろんなポーズをとり、写真を撮られている。AVの撮影か何かか?
いったいなんのDVDなんだ。つくり的に誰かが撮った映像ファイルをDVDに焼いているのだろうが、それをなぜ妻が持っているのだろう。
そして撮影が終わったのか、画面はカメラがまわしっぱなしでただホテルの壁を映している映像になった。
早送りをするがそのDVDは最後まで壁が映っていた。
不覚にも勃起してしまった。
普通のAVではない、むしろAVに編集する前の映像のような感じだ。
DVD「4」、「5」はキーがかかって見れなかった。
DVD「6」を再生した。
また同じように女性が映っていたが、その顔を見て愕然とした。
今までみたDVDと同様、ホテルの一室で妻が椅子に座っている。
鼓動が激しくなり、息苦しさを感じた。
部屋の空気がなくなったかのように、息の仕方を忘れたかのように苦しくなり、
脈がドクドクいっているのがわかるくらいに体が熱くなっていた。
慌ててDVDの停止ボタンを押す。
部屋の床をぼーっと見ていた。
今の状況がわからなくなりそうだった。
自分が何をしているのかが分からなくなった。
しばらくして落ち着いてきてから自分が今まで何をしていたかを考え直すことができた。

なんで妻がDVDに映ってるんだ。今まで見た展開から行けば脱ぐのか?



先を見たくない。でも見なければならない。いや、見たいのかもしれない。
自分の気持ちすらわからなくなった。
そのまま惰性に任せて画面を見続ける。
画面の妻は他のDVD同様カメラマンと思われる男の声に合わせてポーズをとっている。
そして聞きたくはない言葉が聞こえた。
「じゃあ脱ごうか」
人の妻に服を脱げと・・・しかもタメ口で・・・なんなんだこれは。
胸が苦しい。今まで積み上げてきたものがぜ全部崩れ去っていくような感覚が襲ってくる。
茫然自失で画面を見ていると妻が上着のボタンに手をかけ、上から一つ一つ外していく。
顔は下を向いて恥ずかしそうに。
「早く脱ぐんだよ」
ちょっと強い口調で男が言う。
妻はハッとした様子で手早くボタンを外す。
そして上着の脱ぎ、ブラ姿をカメラの前に晒す。
「こっちを見て脱ぐんだよ!」
さっきより少し強い声で叫んでいる。
AVならドキドキする場面かもしれない。
だが今自分が見ているのはAVではない。
なぜなら画面に映っているのが自分の妻だからだ。
自分の妻であり、子供達の母親。
画面に映っている妻が妻ではないことを祈った。
まだよく似ている人かもしれない。
現実逃避をするしかなかった。