作品:役員会 ~マゾ夫婦の誕生~ 連載中 作者・NT 約8分で読めます
第9話
誰が名付けたのか『館(ヤカタ)』と呼ばれた建物の一室。ベッドの上には、二つの裸体が余韻の荒息を吐きながら横たわっている。東山明美と太田由香である。
それを見詰める千明の手には、バイブが握られたまま。
「どうですか千明さん、自分の手で女を逝かせた感想は」
振り向けば明美の夫が、嬉しそうな笑みを携えていた。
「それにしても、二人とも見事な逝きっぷりでしたね。千明さんも興奮したでしょ」言って東山が、千明の手からそっとバイブを引き取った。
そのバイブを目の前でかざして、東山がニタニタと笑う。「見て下さい、こんなにビシャビシャに由香ちゃんの愛液が付いてますよ。となると、欲求不満が残っているのは僕と...千明さんですよねぇ」
悍ましい響きを乗せて、東山が千明を見詰める。そして千明の後ろに周る。耳元に再び悍ましい声「千明さんのアソコ...確かめさせて下さいよ」
千明が身体を硬直させた瞬間には、乳房を鷲掴みされていた。
「なっ!止め...」
抗いの声が上がる寸前、千明は唇を奪われた。
一気に感じたのはタバコの臭い。夫は吸わないタバコの味。それもまた、千明にとっては“彼”を思い出す一つの切っ掛けであった。
「アァ...」千明は不覚にも甘い声を漏らしてしまった。目を瞑ればそこに“彼”の顔が浮かぶ。乳房を揉む荒々しさは夫にはなく、彼に似たもの。
千明は身体から力が抜けていく我が身を自覚したのだった。
東山の...いや“彼”の鼻先と唇が首筋を襲う。彼の力強さは息苦しさとなるが、それさえ今の千明には懐かしく思えてしまう。
大きな掌が服を脱がし始めた。それをどこか他人事のように思える自分がいる。
ベッドの上には、黒マスクの二人の女がで相変わらず乳房や下半身を曝したまま。裸になっていく千明の意識の中で、彼が頷いている。
「す、素晴らしい身体じゃないですか」
その声を受け入れた瞬間、千明は我に返った。既に乳房は露出していて、ショーツ1枚の格好。
千明は弾けるように、東山の手から逃れようとした。
しかし、腰を抱かれてベッドの上に押し倒された。
細かい動きで千明は逃げようとするが、相手の重みに自由が利かない。
そして一瞬、千明の動きを見測ったように、鋭い動きがショーツを引き抜いた。
千明の悲鳴に明美、そして由香が、のっそりと身体を起こす。明美が千明の両腕を掴んで押さえ付けてきた。そして由香に目配せした。
「あ、明美さん...由香ちゃん...お願い、離して」
それでも明美は力を緩めない。由香も明美の傀儡に堕ちたか、千明の腕を押さえ付ける。
「さてっと」唇を歪め、東山が服を脱ぎ始める。
千明の目に驚愕の色が浮かんだ。
「あぁアタシ、また興奮してきたわ。主人がアタシの前で女の人と...」
明美の声が、暴れる千明の耳元でした。
「明美さんっ、止めさせて!お願い、お願いします」
泣きの混じった帯びえの懇願など、明美には関係なかった。サディスティックな笑いさえ携え、明美は千明の顔を覗き込む。
「ごめんね千明さん。でもアタシも由香も恥を曝したんだから、貴女もね、お願い」
妻の言葉を受けて、東山はあっと言う間に素っ裸になった。千明が目にした股間では、牡の象徴が早くも天を向いている。
「じゃあ前戯なしの一発をぶち込んで、大人しくなってもらいましょうか」言って、東山が千明の腰を割り開いた。
硬度を携えた牡の塊が、千明のソコの入口を捕らえる。肉棒の尖端が膣に納まった瞬間、千明はギュッと目を瞑った。
眉間に皺(しわ)がよって、目尻から涙が溢れ出た。その瞬間“彼”の姿が脳裏を横切り、千明は自分に驚愕を覚えた。
そして心の中で、慌てて懺悔の叫びを上げた。今度こそそれは、夫の貴明に向けたものであった。
寸刻みから始めた東山の動きは、事を急ぐように性急になっている。時おり思い出したように、乳房にムシャブリつく。
千明は心を遠くへ、死に体になってそれを受け入れている。それでも徐々にではあるが、快感の波が寄せて来た。
「うぅぅ...っっ」
ゆっくりとだが千明の背は反り、蒼白い喉が仰け反った。乱れた髪は、シーツに擦り付けられている。
「んああっっ」上ずった声が、朱い唇から絞り出る。
「素晴らしい締まり具合ですよ」
突きながら東山が女体を褒めると、千明が濡れた瞳を向ける。
上気する千明の表情を拝んで、東山が唇を重ねにきた。
タバコの匂いに、再び彼の顔が浮かぶ。気づけば千明の舌が、侵入を受け入れている。
「あぁ、主人が他の人とキスしてるのを見るのも興奮するわぁ」
薄く開いた千明の瞳に、覗き込む明美の顔が映った。直ぐそこに由香の顔も加わる。
「由香ちゃんはそっち、アタシはこっち、二人で千明さんのオッパイを責めましょうよ」
左右から違った舌遣いが胸房を襲う。突起は直ぐに鋭敏に、そこから全身に快感の信号を送っていった。
千明の鼻から苦息が零れ始める。
「...ん...ク、ん、ぁっっ」
その反応を確かめて、東山は肉塊を一旦先端まで引くと、ズンッと突き込んだ。
重い叫びと同時に、千明の両脚が一瞬跳ね上がる。
「ああ、んん...くッ、気持ち...」
千明は目を閉じ、声だけは出すまいと歯を食いしばるのだが。
東山は女肉を抉(えぐ)る動きを続ける。
「あぁ何だか千明さんの顔、妖艶。ほら見て由香ちゃん」
「あぁ...くッ、み、見ないで...」
重い一突きの繰り返しに、ついに唇から堪えようのない声が漏れはじめた。
「うッ、ああぁっ」
「いい声だよ千明の声は」肉根を注挿し続けながら、東山が悦びの声を吐き掛ける。
結合の部分からは、淫靡な濡れ音が溢れ出てくる。
千明の身体がピクピクと震え始めた。東山は更なる強弱をつけ始める。
震える胸肌や首筋には、細かな汗が滲んでいる。淫猥な汗はクーラーの熱と相まって、モワっと上気していく。
「おい明美、千明のオマンコ凄い締まりだぞ。それに何度も絡みついて来る」
密着した股間を動かしながら、東山が口元を歪めている。
「思った通り千明さんは好き者なのよ。貴男が云ったようにマゾの才能があるんだわ」
千明のけぶる瞳が、傍らの明美を意識する。マゾの響きに、彼の影が蘇る。途端にアソコがキュウんと男を締め付けた。
「ああッ、し、締まりが、凄い!」
「アアッ、アタシもうダメッ」
取り囲む者達の事など気にする余裕もなく、千明の狼狽が激しくなっていく。
そして。
「んグッ、逝ぐ、逝きそう」
そして千明は、快楽に負けて高い叫びを吐き出したのである。
朦朧とする目は、天井を向いて節穴と見詰め合っていた。あそこから誰かが見ている。覗いている。
頭の中には“彼”と夫、夫と“彼”、二つの顔が浮かんだのだった。
・・・・
貴明は拓実の寝息を確認すると、そっと子供部屋のドアを閉めた。
居間に戻ってLINEを確認すると、妻に送ったメッセージが既読になっていた。返信も来ている。
《太田コーチの相談が長引いてます。まだ掛かると思うので先に寝てて下さい》
太田コーチとは、先日、拓実から聞かされた“噂”のある女性コーチで、確か下の名前は『由香』。ボーイッシュなイメージの大学生コーチである。その彼女の相談とは、やはり誰かのお父さんとの不倫に関する事だろうか。
ふうっと息を吐いてソファーに腰を降ろす。そして保護者達の顔を浮かべるーー。
遠藤康史君のお父さんは歳が少し上で、以前から試合会場では必ず見掛けて、厳つい感じはあるが、話すと物知りで頼りがいのありそうな人である。
東山誠也君の両親は、夫婦揃って試合や飲み会の出席率はいいようだ。先日の飲み会でも少し話したが、奥様の明美さんは活発で元気が良かったが、ご主人の方は少し陰気な印象を受けた。
高山雄大君のお父さんは、奥様とは別行動が多いのか試合などには殆ど一人で来るみたいだ。本人は若い頃にサッカーをやっていたようで、飲み会ではコーチ達と盛り上がっていた。
貴明は他のお父さん連中の顔も思い出そうとするが、2年のブランクがあるせいか、他には浮かんで来ない。と、そこで彼を思い出した。
土曜の深夜、散歩と称した徘徊の途中で出会った秦光博(ハタ ミツヒロ)君のお父さん...髪が短くガタイの良い男。あの彼もいつも、試合には一人で来る印象がある。
ざっと頭に浮かんだ彼等と、由香コーチを結びつけようとしても、証拠になるようなものは何も浮かばない。そんな事を考えているうちに、貴明はソファーに座ったまま睡魔に飲み込まれていったのだった。
・・・・
この店は何時までやっているのだろう、千明は目の前のコーヒーカップを見ながら、ふと思った。
東山夫妻から解放されて、今いるのは『館(ヤカタ)』から歩いて20分ほどのカフェである。
明美の夫は、千明と行為を終えた途端、小動物のように気の弱そうなところをみせていた。ゴメンネを何度も繰り返し、まるで出来心の言い訳をするようだった。妻の明美も謝罪を口にしたが、彼女自身は由香との秘め事を披露したからか、どこかで開き直ってるように観えた。その時の眼差しには、また楽しみましょうよーーーそんなメッセージが込められていた気もする。
しかし自分は相手にする気はない。確かに絶頂を味わい、端ない姿を見せた事は自覚しているが、写真などは撮られなかったはず。由香の事は気になるが、これから関わる気は全くない。
そんな事より...。
千明の心にあるのは、東山に犯されながら自然と浮かんだ“彼”の事だった。赴任先から2年振りに帰った夫との営みの時もそうだったが、行為の中で無意識に彼と比較してしまうのである。
こうして目を瞑れば、タバコの匂いと体臭を思い出し、彼の厚みを受け入れた時の気持ちが蘇って来る。
千明はもう一度スマホを取り出した。夫には帰りが遅くなる旨をLINEで伝えてある。
夕方頃に受信した“彼”からのメッセージには、まだ返信をしていなかった。
彼は、山際恵美のAVの噂について分かった事があると告げていた。その事で今夜にも会えないかと、書いていたのだ。
《バタバタしていて、返信が遅くなりました》
そこまで返信を打ったところで、千明は身体の奥が熱くなるのを感じた。
自分は今、汚れた身体を“彼”に癒やしてもらいたいと想っている?
千明は続けた。《明日の夜にでも、何とか時間を作ります。都合は如何ですか》
メッセージを送り終えた千明は、目を瞑り、彼を思い浮かべながら自分の身体を抱き締めたのだった。
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