小説本文



高志は彷徨(さまよ)っていた。
 境内のベンチで崩れ落ちた姿勢のまま、夢の中を彷徨っていた・・・・。


 部屋の玄関横の小窓から、中の様子を覗きこんでいるのは高志自身だった。
 ダイニングと洋間の扉が開いていて、続き間になった床の上には布団が敷かれている。
 布団の上には素っ裸の男と女の姿。
 女は・・夏美。
 男は・・短髪に太い眉、太い首に異様に盛り上がった肩、そして大木のような腕と太腿、分厚い胸には密林の様な毛が生い茂っている。
 まさにゴリラの様な男。


 微かな声が降りかかってくる。
 耳を澄ませば、それは押し殺された苦渋の声、苦痛に耐える女の声。
 女を上から組み敷いた大男が、女の胸を握り潰すように、下半身ではゆっくりとしたリズムで腰を使っている。
 夏美は横向けた口を手の甲で隠すようにして、無抵抗で凌辱を受けている。
 暴辱を耐えてやり過ごそうとしているのか、その様は木屑(きくず)のようでもある。
 しかし、切れ切れに漏れ聞こえてくるのは、間違いなく生身の女の声。


 沖田が深く抉り込めば、生々しい呻きは徐々に響きわたる。
 それでも頭を振り、髪の毛を乱す姿は、肉の悦(よろこ)びに呑み込まれそうになる己を叱咤する動きか。
 しかし、ゆっくりだが沖田の肉の攻めは一方的なものへとなっていく。


 『んん・・くく、あっっっ・・・』
 零れ落ちた声が、大きくなってくる。
 と、同時に肢体の震えが激しくなり、割り裂かれていた下半身から2つの肢(あし)が天井に向かってそそり立った。
 沖田が動きを止め、その肢を己の肩に乗せ、両手で夏美の肩を押さえつけるように体重をかけた。
 『うあぁぁぁ・・・・・』


 屈曲位の体位に変わった。
 吹き漏れた声は先程より間違いなく大きく、手指がシーツをギュッと掴んだのは細やかな抵抗なのか。
 沖田が腰の動きを前後に繰り返すたびに、夏美の排泄器官が見え隠れする。
 そして夢の中でも高志に、劣等感という刃(やいば)を突き刺したのは、赤黒い牡の肉根だった。


 『イ・・イヤッ』
 羞恥の声と怯えの声が混ざり合った呻きを上げて、夏美の目がスーッと開かれる。


 沖田の腰が一気に抉り込まれた。
 『おおっーーー』
 その生臭い声の余韻を浴びると、沖田が動きを止め腰を引く。
 夏美は、その乱雑な動作に喉(のど)を鳴らし、そして両脚は無防備に投げ出された。


 高志の意識に、猛々とソソリ立った肉塊が映る。
 沖田の太い指が夏美の腰に掛かり、その裸身を難なく転がした。


 凶悪な肉塊の下、うつ伏せた夏美の瞳に困惑の色が宿る。
 沖田の太い指が夏美の熟れた臀肉を掴むと、その態勢から逃げようと夏美は暴れるが。
 しかし、沖田は夏美の細腰をガッと掴み、己の股間へ引き寄せると一気に貫いた。


 『アァァーーーー』
 後ろから突ら抜かれて背筋は反り返り、無意識に開いた口からは言葉にならない生臭い呻きが一気に溢れ出た。


 沖田が腰を振れば、夏美は一気に狂乱の波に襲われる。
 ギュギュっとシーツを噛み締め、髪を宙に打ち振れば、獣(けだもの)が乗り移ったように獣(けもの)じみた叫びをまき散らした。
 『おっ・・おおお・・・・・ああ・・』


 沖田の右手が揺り動く乳房を摘まんで揉み下し、左手で臀の菊門を押ししだくと、夏美の鼻から甘味が混ざった嬌声が溢れ洩れる。
 沖田が薄笑い、腰を抉り続ければ、夏美の貌は更に蒸気して蕩けていく。
 注挿が益々荒っぽくなれば、夏美の貌は恥辱に歪んだ。


 『ああっ、もっ・・もう・・ダ ダメッ・・・イ イクッ』
 汗に濡れた肌と肌が打ち合う音が響き渡り、夏美の口から涎(よだれ)と一緒に屈服の響が吐き出される。
 逞しい牡の力は、牝に自らの悦楽を求めさせる動きを演じさせようとしていた。


 『ああ・・・また・・・ダメ また・・・もう・・・イ クッ イクッ-ーーー–』
 夏美が苦声を炸裂させる。
 獣の態勢でその声は、断末魔の叫びと変わった。


  

 高志の意識はまだ彷徨っている。
 男の下で獣の結合のまま総身を轢き付けさせていた女体が、そのままゆっくり起き上がる。
 女は・・弥生。
 男は・・細い腕と細い腿、薄い胸に体毛は細かな物。
 白髪交じりの短髪に人懐っこい笑み・・・大山大介。


 2人が繋(つな)がったまま立ち上がった。
 弥生が中腰で後手に大山の腕に手を伸ばす。
 結合をもっと深く導くように自らが腰を使う。
 足指がシーツを握り、踏ん張った姿勢で己の乳房を揉み下す。
 程よい大きさの胸の先の突起を掴み、更に空いた指は股間の突起を弄り回す。
 その様は、後から突き刺されながらも完璧な自淫の構図。


 『んん・・・あああ・・・・』
 ねっとり蜜をまぶした様な甘声が響き渡り、白い肢体が赤身を帯びていく。
 弥生は貫かれたまま胸を張る。
 ピンク色の先は間違いなく、鋭敏になっている。


 両指が忍びやかに己の性器を弄(いじく)っている。
 股間を広げ、秘裂に咥え込んだ部分を見せ示すように割り開いた。
 牝の器官が露わになると、蜜汁を垂れ零す女陰が息づいていた。


 不自由な格好のまま、結合を解かぬよう、弥生が窓際へと寄ってくる。
 大山の陰芯を咥えたまま若臀をもじりながら進んでくる。
 小窓のサッシに手が届くと、再び中腰の姿勢をとった。
 そして、瑞々しい若肢をガッと広げ、腰に気を入れた。


 『はぁぁ・・いいわぁ・・・・・もっと強くよお・・・・・』
 無様に拡がった鼻から、甘酸っぱい殷声が吹き漏れた。
  

 顎をグイと突き出し背中を弛ませれば、若臀が浮き上がる。
 2つの双壁の間には食い千切られそうになりながらも、しっかり挿し込む陰芯がある。
 大山が負けじと腰を振ろうとするが、更に激しく弥生が腰を使った。


 『はあぁぁ・・・もっとよ・・』
 弥生の大きな瞳は、宙を彷徨っている。
 揺れ動く巨(おお)きな乳房は、淫らな汗を溢れ流している。


 弥生の自振りの腰がリズムよく跳ね動き、大山の額には汗がにじみ出る。
 弥生の薄赤い唇から絞り出た朱い舌が、宙を舐めまわした。
 突然、弥生の瞳が大きく開かれ、その目が高志を捉える。


 『ふふ・・・そこのオジサン』
 『・・・・・・・・』
 『見たいの?・・・』
 『・・・・・・・・』
 『覗きたいんだあ・・・』
 『・・・・・・・・』
 『この変態・・・・』
 『・・・・・・・・・』


 弥生が徐にタバコの箱を手に取った。
 大山の物を下で咥え込みながら、取り出した一本を口に咥え、そこに火を着ける。
 目を閉じ上手そうに吸い込むと、ブルルっと裸身を震わせたのは、射精を感じたからなのか。
 弥生が煙を吐き出した。


 高志の顔が煙に巻かれ何も見えない。
 胸が圧迫され息が詰まる。
 肺から詰まりを吐き出すように咳き込んだ。


 ・・・・と、その時 高志は目を覚ました。