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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
” [“publish_status”]=> string(1) “1” [“publish_date”]=> NULL [“category_id”]=> NULL } } 841684984の時、$oは2array(2) { [1]=> array(7) { [“id”]=> string(3) “481” [“user_name”]=> string(2) “NT” [“novel_title”]=> NULL [“novel_body”]=> string(18793) “
 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
” [“publish_status”]=> string(1) “1” [“publish_date”]=> NULL [“category_id”]=> NULL } [2]=> array(7) { [“id”]=> string(3) “480” [“user_name”]=> string(2) “NT” [“novel_title”]=> NULL [“novel_body”]=> string(17057) “
 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私の目の前、秋葉先生がようやくウンウンと頷いた。
 そして「黒子だけど、奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ」
 「!…」
 「だけどね、ふふっ、たまにシールを貼る事があるんだ」
 「シール?」
 「ああ、そうだよ、シールだ」
 「何故シールなんかを」
 「んっ、それは久美子君の耳たぶの下にあるからだよ、黒子が」
 「えっ、どういう意味ですか」
 「実はね、以前に久美子君と同じ勤務先になった時期があっただろ」
 「ああ、それは私も聞いています」
 「うむ、その頃、僕と久美子君は言わば上司と部下の関係で、色々と指導していたわけだ。そのうちに僕の方が、彼女に対して好意を持つようになってな」
 「え、それって」
 「ああ、分かり易く言えば、久美子君と犯(や)りたくなったわけだよ」
 「ええっ!」
 「それでも中々上手くいかず、いずれ僕が別の学校に転勤になったんだ」
 「………」
 「その後は会う機会もなくなって、疎遠になっていったわけだよ。そんな時、当時の勤め先に赴任して来たのが奈美子だ。初めて見た時に、ずいぶん久美子君と似てると思ってな。その事を奈美子と親しくなった時にポロっと云ったんだ。奈美子もそれが直ぐに久美子君と分かってな。聞けば同じ大学を出ていて、仲も良かったと言うから更にビックリだよ」
 「そんな事があったんですか」
 「ああ、それから僕と奈美子は親密な関係になって行くわけだが、ある時に、久美子君の耳たぶの下に黒子があった事を何故か覚えていてね、それを思い出したんだ。奈美子にも訊いてみれば、親友の黒子をよく覚えていてね。それで暫くして、奈美子にお願いしたんだ」
 「そ、それは何を?」
 「うん、黒子を付けてくれと。久美子君と同じ所にシールでいいから付けてみてくれないかとね」
 「あぁ…」
 「そう、僕は正直に告(い)ったよ。前から久美子君と一度オマンコしてみたいと思ってたんだ、ってね」
 「あッ!」
 「奈美子は特に驚く事もなくてね。と言うのも、その頃の僕達は互いに変態度を認めあってて、性癖をカミングアウトしあってたから、奈美子も理解を示してくれたわけだよ」
 「せ、先生に、そんな癖が…」
 「ああ、そうだよ。今の君なら聞ける話だろ」
 「ああ、はい」
 「ふふっ、それだけでも薬の効果があったかな」
 「ああっ」
 「そう、それで髪型も久美子君に似させて、時に黒子のシールを貼って貰って、奈美子に久美子君を演じて貰ったわけだよ。それにしても、今のシールは精巧に出来てるね。僕はその黒子を意識しながら奈美子を久美子君と思って、これまで頭の中だけでしか犯(や)れなかった事をたっぷりやったんだよ」
 「な、奈美子さんはそんな…扱いといいますか、それを受け入れたんですか…」
 「だから、奈美子もストレスの塊だったんだよ」
 「ああッ!」
 「そう、教師特有の病的なストレスに蝕まれたから…いや、蝕れないように、精神の開放を性的開放に委ねたんだよ」
 「アアアッッ、ウウウッ」
 「そしてある時、久美子君から君の相談を貰って、それを切っ掛けに会うようになってね。背景には奈美子が僕への相談を促した、と言う事もあるんだけどな」
 「………」
 「そう、それに娘のストーカー被害が発覚して、それを久美子君に相談したりもしたんで、余計に会う機会が増えてね。久美子君自身も凄いストレスを抱えてるのは分かっていたから、解消の手伝いをしてやろうと思ってね」
 「そ、それって」
 「ん、もう分かっているだろ。奈美子と相談してマンションに呼ぶようになったんだよ」
 「あぁ、奈美子さんと夫婦として借りてるマンションですか」
 「覚えていたね。そう、そこでさっきも云った変態プレイの協力をして貰ったよ」
 「………」
 「ん、どうだね?」
 「あ、あの…それで先生は、く、久美子とはセックスまでいったんでしょうか…」
 「それはさっきも云ったじゃないか」
 「あ、あぁ…そうでしたか。けど、ハッキリしないんですよ頭の中が。先生の話なのか自分の妄想なのかが。思い出そうとしても…そう、ひょっとしたら、全ては白昼夢ではないかと…」
 「………」
 「………」
 「…じゃあ、どっちが良い?」
 「え!どっちと言いますと…」
 「ん、だから久美子君とセックスした方が良かったのか不味かったのか」
 「そ、それは…」
 「ふふふ、いや、悪い悪い。久美子君とはまだ犯(や)ってないから大丈夫だよ」
 「………」
 「逆に聞くけど、君は奥さん以外の“誰か“と浮気…セックスをした事はないのかい?」
 「あうッ!」
 その一言に、身体の中を電流が走り抜けた。


 「んっ、どうした、大丈夫かい?」
 「あ、あの…実は1度だけ」
 「ふふっ、分かってるって」
 「えっ!」
 「ああ、君は何時だったか◯◯町の◯◯ホテルに行った事があるだろ」
 その言葉に、一瞬にして電流が流れたように背筋が伸びてしまった。
 「ロビーをこっそり見ていたら、変な髪型をした男性を見つけてね。本人は上手く化けたつもりかもしれなかったが、僕には直ぐに分ったよ」
 あぁ、あの時…。
 そして、やはり「先生と奈美子さんだったんですね“歳の差夫婦”って…」
 「ん、歳の差…?」
 「あ、いや…」
 「確かに、僕と奈美子は一回り以上の“歳の差”があるが?」
 「いえ、それはこちらの事でして…はい」
 私の聞き取れないような小さな声にも、先生は特に興味を示すような事はなかった。


 「あの…確かに私は“ある人”を通して誘いを受け、そのホテルに行きました。そこで」
 「ああ、分かっているよ。僕もまさか寺田君が現れるとは思っていなかったから、その時は凄くビックリしたよ。同時に恐ろしい偶然があるものだと2度ビックリしたね」
 「本当に仰る通りです」
 「しかし狭い世界だから、共通の知り合いがいてもおかしくはないよね」
 「はい…」
 頭の中には、渋谷君や神田先生の顔が浮かんでいた。考えてみれば、彼等の仕事の範囲もある程度は決まっている筈なのだ。まして体験者によって紹介が生まれるのだろうから、自ずと狭い世界での出会いになってしまう。


 コホン、先生の咳払いがした。私は改めて先生の顔を見つめる。
 「それで、君は奈美子を抱いたわけだ。だから僕も、堂々と久美子君をね。どうだい“ご主人”」
 「あぁ…」
 私には先に奈美子さんとセックスしてしまった負い目がある。それに、妻を寝取られたいという願望もある。そう、今ならハッキリそれが自覚できるのだ。
 しかし…。
 「あのぉ、先生」
 「ん、なんだね?」
 「やっぱり、その、無理そうです…」
 「………」
 先生は私は暫く見詰めた後、フーっと大きく息を吐き出した。そしてニコリと笑った。
 「そうか。それは仕方ないなぁ」
 「す、すいません」
 「いや、気にする事なんか何もないよ」
 「………」
 「君の方は、最近になって久美子君との仲が良い方向に向かってるみたいだしね」
 先生の言葉に、私は無意識に頷いていた。そうなのだ。先だっての日曜日から、久美子の“一人語り”によって私の欲求は満たされつつあるのだ。同時に妻の精神も開放されてると実感する事が出来ているのだ。奈美子さんとセックスした負い目はあるわけだが、その秘密を内に秘めるのも快感の一種と考えよう。私は自分の思考を上手くコントロールしようとしていたのだ。


 先生との会話はその後、世間のニュースや職場の話題に変わり、いたって健康的な時間となっていった。不思議なもので、陰湿な空気が流れていたこの店の雰囲気も、開店を待つ有りふれた酒場の一つに思えていた。
 そして、頃合いを見計らった時だった。
 「秋葉先生、ではそろそろ」と腰を浮かせようとした。
 先生の方も、引き留める素振りを見せる事もなく、あっさりとお別れの挨拶となったのだった。
 「じゃあ寺田君、また何かあればね」
 先生は最後に、ウインクまでみせていた。その表情(かお)は、年甲斐もなくお茶目な一面を浮かべていた。


 先生が店のドアを開けてくれて、私は陽の高い世間へと歩み出た。その時だ。
 「そうだ。久美子君の事だけど」
 その言葉に、一瞬緊張が走った。
 「奈美子が今まで通り、お茶会なんかに誘うのは許しておくれ」
 私は笑みを作ろうと試みながら頷く。
 「僕から久美子君を誘う事は、もうないからね」
 「は、はい」と私は畏まった。
 「でも、久美子君の方から“僕達夫婦“に新たな相談でもあったら…ふふふ」
 「………」
 先生がまだ何か云いたそうに見えた私だったが、その会話を自ら打ち消すように、先生はニコリと微笑んでドアを閉めたのだった。
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私の目の前、秋葉先生がようやくウンウンと頷いた。
 そして「黒子だけど、奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ」
 「!…」
 「だけどね、ふふっ、たまにシールを貼る事があるんだ」
 「シール?」
 「ああ、そうだよ、シールだ」
 「何故シールなんかを」
 「んっ、それは久美子君の耳たぶの下にあるからだよ、黒子が」
 「えっ、どういう意味ですか」
 「実はね、以前に久美子君と同じ勤務先になった時期があっただろ」
 「ああ、それは私も聞いています」
 「うむ、その頃、僕と久美子君は言わば上司と部下の関係で、色々と指導していたわけだ。そのうちに僕の方が、彼女に対して好意を持つようになってな」
 「え、それって」
 「ああ、分かり易く言えば、久美子君と犯(や)りたくなったわけだよ」
 「ええっ!」
 「それでも中々上手くいかず、いずれ僕が別の学校に転勤になったんだ」
 「………」
 「その後は会う機会もなくなって、疎遠になっていったわけだよ。そんな時、当時の勤め先に赴任して来たのが奈美子だ。初めて見た時に、ずいぶん久美子君と似てると思ってな。その事を奈美子と親しくなった時にポロっと云ったんだ。奈美子もそれが直ぐに久美子君と分かってな。聞けば同じ大学を出ていて、仲も良かったと言うから更にビックリだよ」
 「そんな事があったんですか」
 「ああ、それから僕と奈美子は親密な関係になって行くわけだが、ある時に、久美子君の耳たぶの下に黒子があった事を何故か覚えていてね、それを思い出したんだ。奈美子にも訊いてみれば、親友の黒子をよく覚えていてね。それで暫くして、奈美子にお願いしたんだ」
 「そ、それは何を?」
 「うん、黒子を付けてくれと。久美子君と同じ所にシールでいいから付けてみてくれないかとね」
 「あぁ…」
 「そう、僕は正直に告(い)ったよ。前から久美子君と一度オマンコしてみたいと思ってたんだ、ってね」
 「あッ!」
 「奈美子は特に驚く事もなくてね。と言うのも、その頃の僕達は互いに変態度を認めあってて、性癖をカミングアウトしあってたから、奈美子も理解を示してくれたわけだよ」
 「せ、先生に、そんな癖が…」
 「ああ、そうだよ。今の君なら聞ける話だろ」
 「ああ、はい」
 「ふふっ、それだけでも薬の効果があったかな」
 「ああっ」
 「そう、それで髪型も久美子君に似させて、時に黒子のシールを貼って貰って、奈美子に久美子君を演じて貰ったわけだよ。それにしても、今のシールは精巧に出来てるね。僕はその黒子を意識しながら奈美子を久美子君と思って、これまで頭の中だけでしか犯(や)れなかった事をたっぷりやったんだよ」
 「な、奈美子さんはそんな…扱いといいますか、それを受け入れたんですか…」
 「だから、奈美子もストレスの塊だったんだよ」
 「ああッ!」
 「そう、教師特有の病的なストレスに蝕まれたから…いや、蝕れないように、精神の開放を性的開放に委ねたんだよ」
 「アアアッッ、ウウウッ」
 「そしてある時、久美子君から君の相談を貰って、それを切っ掛けに会うようになってね。背景には奈美子が僕への相談を促した、と言う事もあるんだけどな」
 「………」
 「そう、それに娘のストーカー被害が発覚して、それを久美子君に相談したりもしたんで、余計に会う機会が増えてね。久美子君自身も凄いストレスを抱えてるのは分かっていたから、解消の手伝いをしてやろうと思ってね」
 「そ、それって」
 「ん、もう分かっているだろ。奈美子と相談してマンションに呼ぶようになったんだよ」
 「あぁ、奈美子さんと夫婦として借りてるマンションですか」
 「覚えていたね。そう、そこでさっきも云った変態プレイの協力をして貰ったよ」
 「………」
 「ん、どうだね?」
 「あ、あの…それで先生は、く、久美子とはセックスまでいったんでしょうか…」
 「それはさっきも云ったじゃないか」
 「あ、あぁ…そうでしたか。けど、ハッキリしないんですよ頭の中が。先生の話なのか自分の妄想なのかが。思い出そうとしても…そう、ひょっとしたら、全ては白昼夢ではないかと…」
 「………」
 「………」
 「…じゃあ、どっちが良い?」
 「え!どっちと言いますと…」
 「ん、だから久美子君とセックスした方が良かったのか不味かったのか」
 「そ、それは…」
 「ふふふ、いや、悪い悪い。久美子君とはまだ犯(や)ってないから大丈夫だよ」
 「………」
 「逆に聞くけど、君は奥さん以外の“誰か“と浮気…セックスをした事はないのかい?」
 「あうッ!」
 その一言に、身体の中を電流が走り抜けた。


 「んっ、どうした、大丈夫かい?」
 「あ、あの…実は1度だけ」
 「ふふっ、分かってるって」
 「えっ!」
 「ああ、君は何時だったか◯◯町の◯◯ホテルに行った事があるだろ」
 その言葉に、一瞬にして電流が流れたように背筋が伸びてしまった。
 「ロビーをこっそり見ていたら、変な髪型をした男性を見つけてね。本人は上手く化けたつもりかもしれなかったが、僕には直ぐに分ったよ」
 あぁ、あの時…。
 そして、やはり「先生と奈美子さんだったんですね“歳の差夫婦”って…」
 「ん、歳の差…?」
 「あ、いや…」
 「確かに、僕と奈美子は一回り以上の“歳の差”があるが?」
 「いえ、それはこちらの事でして…はい」
 私の聞き取れないような小さな声にも、先生は特に興味を示すような事はなかった。


 「あの…確かに私は“ある人”を通して誘いを受け、そのホテルに行きました。そこで」
 「ああ、分かっているよ。僕もまさか寺田君が現れるとは思っていなかったから、その時は凄くビックリしたよ。同時に恐ろしい偶然があるものだと2度ビックリしたね」
 「本当に仰る通りです」
 「しかし狭い世界だから、共通の知り合いがいてもおかしくはないよね」
 「はい…」
 頭の中には、渋谷君や神田先生の顔が浮かんでいた。考えてみれば、彼等の仕事の範囲もある程度は決まっている筈なのだ。まして体験者によって紹介が生まれるのだろうから、自ずと狭い世界での出会いになってしまう。


 コホン、先生の咳払いがした。私は改めて先生の顔を見つめる。
 「それで、君は奈美子を抱いたわけだ。だから僕も、堂々と久美子君をね。どうだい“ご主人”」
 「あぁ…」
 私には先に奈美子さんとセックスしてしまった負い目がある。それに、妻を寝取られたいという願望もある。そう、今ならハッキリそれが自覚できるのだ。
 しかし…。
 「あのぉ、先生」
 「ん、なんだね?」
 「やっぱり、その、無理そうです…」
 「………」
 先生は私は暫く見詰めた後、フーっと大きく息を吐き出した。そしてニコリと笑った。
 「そうか。それは仕方ないなぁ」
 「す、すいません」
 「いや、気にする事なんか何もないよ」
 「………」
 「君の方は、最近になって久美子君との仲が良い方向に向かってるみたいだしね」
 先生の言葉に、私は無意識に頷いていた。そうなのだ。先だっての日曜日から、久美子の“一人語り”によって私の欲求は満たされつつあるのだ。同時に妻の精神も開放されてると実感する事が出来ているのだ。奈美子さんとセックスした負い目はあるわけだが、その秘密を内に秘めるのも快感の一種と考えよう。私は自分の思考を上手くコントロールしようとしていたのだ。


 先生との会話はその後、世間のニュースや職場の話題に変わり、いたって健康的な時間となっていった。不思議なもので、陰湿な空気が流れていたこの店の雰囲気も、開店を待つ有りふれた酒場の一つに思えていた。
 そして、頃合いを見計らった時だった。
 「秋葉先生、ではそろそろ」と腰を浮かせようとした。
 先生の方も、引き留める素振りを見せる事もなく、あっさりとお別れの挨拶となったのだった。
 「じゃあ寺田君、また何かあればね」
 先生は最後に、ウインクまでみせていた。その表情(かお)は、年甲斐もなくお茶目な一面を浮かべていた。


 先生が店のドアを開けてくれて、私は陽の高い世間へと歩み出た。その時だ。
 「そうだ。久美子君の事だけど」
 その言葉に、一瞬緊張が走った。
 「奈美子が今まで通り、お茶会なんかに誘うのは許しておくれ」
 私は笑みを作ろうと試みながら頷く。
 「僕から久美子君を誘う事は、もうないからね」
 「は、はい」と私は畏まった。
 「でも、久美子君の方から“僕達夫婦“に新たな相談でもあったら…ふふふ」
 「………」
 先生がまだ何か云いたそうに見えた私だったが、その会話を自ら打ち消すように、先生はニコリと微笑んでドアを閉めたのだった。
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 BAR白昼夢ーー。
 目の前、秋葉先生が手に持つ小瓶を、私はジッと見ていた。ソレは確かに、栄養ドリンクの瓶にしか見えなかったが、中身は『シンカノシズク』と言う精力剤の一種だとか。


 「どうしたんだね、心配かい?」と、先生が真顔で訊いてくる。
 「え、ええ、あまり聞いた事のない物ですから」
 「ふふっ、まぁ仕方がない。でも、僕達もたまに世話になるけど、後遺症とかは全くないよ。依存する事もないしね」
 「本当ですか」
 「ああ、勿論だよ」


 「先生はソレを、奈美子さ…」と云ってしまったところで、慌てて口を抑えた。
 一瞬、先生の目が光った気がした。
 「…そうか。フムフム、久美子君から聞いたんだね」
 先生の言葉に、私は「すいません」反射的に頭を下げている。
 「いや、いいよ。ただし、他では彼女の名前は出さないように気をつけておくれよ。特に教師連中の間ではね」
 「は、はい、それは勿論です。それに、そんな事を私が吹聴したって分かったら、私の方だって…」
 「そうだな、君の変態性癖が世間にね…それに、君の奥さんの久美子君が変態マゾ女って事もね…」
 「ええっ!!つ、妻がマゾ…女ですって!」
 「ふふふ」
 「せ、先生、それは一体どういう…」
 「聞きたいかい?気になるよね。でも、聞くには…」と、先生が又も小瓶を振っている。やはり“ソレ”を飲まないと聞けないような話なのか。


 「少し飲んでみるかい、勇気を出して。僕も付き合うからさ」
 先生は云うなり、1本のキャップを開けはじめた。
 開いたところでもう1本のキャップも開けて、私に向けて来た。私はそれを恐々と受け取った。
 「じゃあ、もう一度乾杯だ」
 カチリと小さな音がすると、先生はあっさり、というか手本を示すように飲み干した。そして、視線で私に勧めてくる。
 私はゴクリと息を飲むと口をつけ…そして一気に飲み込んだ。


 喉を通った感触は確かに栄養ドリンクか。覚悟していたほどの刺激は全くない。そんな私の様子を見てか「寺田君、どうだい何もないだろ」と先生が笑っている。
 「では、話に戻ろうか。ええっと、何の話をしていたんだっけ、寺田君」
 如何にもの教師の口調に聞こえて、一瞬生徒の気分になった気がした。
 「え~っと、久美子の、しゃ、社会体験のところでした」と告げた瞬間、視線の端で小さな光が瞬いた。その光の流れを追い掛けると、それは天に昇り、光の雫となって降ってきた。
 あぁ…雫…コレが神華の雫か…。


 「寺田君」
 声に前を向き直れば、優しそうな先生の顔だ。
 「そう社会体験、な~んて堅苦しい話じゃなくて、久美子君がオマンコを濡らす話だよ」
 「アーーーッ、そ、そうでした!それを聞きたかったんでシュよ」と声が変だ、と思ったが気にならなかった。それどころか、背中の後ろからモワモワと高鳴りが湧いてきた。
 眼の前では、先生の口がパクパク開いたり閉じたりしていた。口の中からは言葉が舞い上がって行くのが見える。
 その言葉は宙で文字となり、私の頭の中に降りて来た。


 ーー寺田く~ん、半年ほど前に久美子君から相談があったんだよ…。
 ーー彼女は君がストレスを抱えてると心配してたっけね~。
 ーー彼女自身も職場のストレス、夫の心配、彼女も疲れていたみたいだよ…。
 ーーだから機をみて、奈美子と夫婦として借りてるマンションに呼んであげたんだよね…。
 ーーそこで、僕達のセックスを見せてあげるって云ったら、驚いていたよ…。
 ーーでも、僕達は気にせず裸になったんだ…。
 ーー久美子君はどうしてそんな事が出来るのかと聞くから、夫婦だからと答えたよ…。
 ーー僕達の姿を見て、どうすれば寺田君に寄り添えるか考えてごらんって云ってね…。
 ーーそれから僕達は久美子君に撮影をお願いしたんだよ…。
 ーー僕と奈美子は色んな格好でシャブリあったり舐めあったりしたね。うん、見せつけるようにね…。
 ーー奈美子がアソコを拡げると、久美子君は撮影をしてくれてたね。おそらく、久美子君も自分のアソコを濡らしてたと想うよ…。


 ーー奈美子のヤツも最初の頃は他人に見せるなんてと恥ずかしがってたけど、あの薬のせいか、元々持ってた資質のせいか、大胆になってきてね。友達の前で平気で尻の穴まで見せていたよ…。
 ーー僕のアソコも異様に膨らんでね。ソレで奈美子をヒーヒーいわせてたよ…。
 ーー久美子君は時おり撮影を忘れて、僕達の絡みに魅入られる事があったね…。
 ーー僕達も調子に乗って、やった事のない体位を披露したよ…。
 ーー押し車って知ってるかい?後ろから挿入したまま歩くんだ。奈美子は四つ足で、僕は腰を前に突き出すようにしてね。久美子君もやってみたいと思ったんじゃないかな…。
 ーーそれと、僕のアレが奈美子のアソコに入っている所を近くから撮らせたりもしたね…。
 ーーその映像を、プレイの後に三人で視たりもしたね…。
 ーー他には仮面を着けてプレイしてるところを撮った日もあったね…。
 ーー久美子君もだんだんと慣れてきたけど、毎回生殺しで辛かったんじゃないかな…。
 ーーん、久美子君と僕が“本番“をやったかって?
 ーーフフフ、さぁそれはどうだろうか…。
 ーーまぁ、そうやって色々と妄想してるだけでも楽しいんじゃないかな…。


 ーーだけど、僕の勃(た)ちが悪くなってきてね。ふふっ、歳には勝てないって事だね…。
 ーーそんな時“あの人達“を知ってね、お願いに行ったんだよ…。
 ーー実際に相手をしてくれたのは若い人だったね…。
 ーーその彼とは色んなプレイをやったよ…。
 ーー僕の前で奈美子がその彼とプレイする処を見るのは刺激的だったな…。
 ーーその彼は日によって手を変え、品を変えて楽しませてくれたよ…。
 ーー僕自身にも新たな発見があったよ。自分の中にSとMが同居してるって分かったしね…んんっ!?。
 ーー寺田君!?


 「どうした寺田君?」
 「ヒッ、ヒィーーッ!ヒィーーッ!ヒィーーッ!」
 「おいっ、寺田君!」
 「………」


 頭の奥で、色んな顔が現われては消えていた…久美子、奈美子さん、秋葉先生、渋谷君、それと仮面の女…。
 と、誰かが私の名前を呼んでいる…。
 やがて、瞼がゆっくり開いていき…暗い天井が目に付いた。
 天井に“言葉”が、いくつか舞って見えた。それが今度は、黒い雫となって消えていく。あぁ… “黒子”のような雫だ。
 すると、身体が揺れている事に気が付いた「寺田君、大丈夫かい」先生が私の身体を揺すっていたのだ。


 私は2、3度頭を振って、ゆっくりと椅子の背もたれから身体を起こそうとした。
 「わ、私は一体…」
 「ああ、話を聞かせてたら、急に痙攣が起きたみたいに震え出したんだよ。…大丈夫かい」
 「は、はぁ…」
 「頭が痛いとか、気持ち悪いとかは?」
 「え、ええ、大丈夫みたいです」と口にしたが、頭はまだボォっとしている。
 「ちょっと待ってておくれ。冷たい水を持って来るから」
 そう告げて、先生がカウンターの中へと入って行った。その後ろ姿に、先生はあの“薬”を本当に飲んだのだろうか、そんな疑問が重い頭を横切った。
 私は瞬きをして、一度目を瞑った。
 目を閉じた私の耳に、ガチャガチャと氷の音が聞こえてきた。先生が製氷器から取り出しているのか。その音の合間をプチプチと“黒子”が弾け飛んでいる。


 やがて先生が戻って来て「寺田君、まだ、ボォっとしてるみたいだけど、本当に大丈夫?」と、水差しと氷の入ったグラスを置いてくれた。そして、波々と注いでくれる。私は頭を下げて、それを飲み干した。
 先生は私の様子を観(み)ながら「もう1杯くらい飲んでおこうか」と云って、空になったコップに注いできた。
 「これには何も入ってないからね」
 その言葉にむせ返りそうになりながらも、続けて飲み干してみた。
 胃の奥に水が染み渡って暫くすると、身体が熱くなってきた。そして、額の辺りから汗が吹き出る感触を覚えた。
 「発汗が来たら、スッキリすると思うよ」と、先生が頷いている。


 「でも寺田君、今日はこの辺で止めておこうか」
 「いや…あの、実は黒子が」
 「黒子!?」
 「はぁ、そうなんです、黒子なんです。さっき黒子が降って来たんですよ。それで…」
 先生は私を心配げにシゲシゲと覗きこんできた。それでも私の口は止まらなかった。
 「あのお…先生の彼女、奈美子さんの右の耳たぶの下に、黒子なんてありませんよねぇ」
 私自身も何故そんな質問を口にしたのか、理由など理解できなかった。先生を見れば、目が真ん丸と拡がっていた。初めて見る先生の表情(かお)かもしれない。


 「寺田君、君はやっぱり面白いところがあるなぁ」
 「あ、いや、すいません…」
 「………」
 「ま、不味かったでしょうか…」と言い掛けたところで「いや大丈夫だよ。うん、君はやっぱり面白い人だ」と呟きが聞こえた。
 私は先生のその顔を暫くの間、見詰めていたのだった。
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私の目の前、秋葉先生がようやくウンウンと頷いた。
 そして「黒子だけど、奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ」
 「!…」
 「だけどね、ふふっ、たまにシールを貼る事があるんだ」
 「シール?」
 「ああ、そうだよ、シールだ」
 「何故シールなんかを」
 「んっ、それは久美子君の耳たぶの下にあるからだよ、黒子が」
 「えっ、どういう意味ですか」
 「実はね、以前に久美子君と同じ勤務先になった時期があっただろ」
 「ああ、それは私も聞いています」
 「うむ、その頃、僕と久美子君は言わば上司と部下の関係で、色々と指導していたわけだ。そのうちに僕の方が、彼女に対して好意を持つようになってな」
 「え、それって」
 「ああ、分かり易く言えば、久美子君と犯(や)りたくなったわけだよ」
 「ええっ!」
 「それでも中々上手くいかず、いずれ僕が別の学校に転勤になったんだ」
 「………」
 「その後は会う機会もなくなって、疎遠になっていったわけだよ。そんな時、当時の勤め先に赴任して来たのが奈美子だ。初めて見た時に、ずいぶん久美子君と似てると思ってな。その事を奈美子と親しくなった時にポロっと云ったんだ。奈美子もそれが直ぐに久美子君と分かってな。聞けば同じ大学を出ていて、仲も良かったと言うから更にビックリだよ」
 「そんな事があったんですか」
 「ああ、それから僕と奈美子は親密な関係になって行くわけだが、ある時に、久美子君の耳たぶの下に黒子があった事を何故か覚えていてね、それを思い出したんだ。奈美子にも訊いてみれば、親友の黒子をよく覚えていてね。それで暫くして、奈美子にお願いしたんだ」
 「そ、それは何を?」
 「うん、黒子を付けてくれと。久美子君と同じ所にシールでいいから付けてみてくれないかとね」
 「あぁ…」
 「そう、僕は正直に告(い)ったよ。前から久美子君と一度オマンコしてみたいと思ってたんだ、ってね」
 「あッ!」
 「奈美子は特に驚く事もなくてね。と言うのも、その頃の僕達は互いに変態度を認めあってて、性癖をカミングアウトしあってたから、奈美子も理解を示してくれたわけだよ」
 「せ、先生に、そんな癖が…」
 「ああ、そうだよ。今の君なら聞ける話だろ」
 「ああ、はい」
 「ふふっ、それだけでも薬の効果があったかな」
 「ああっ」
 「そう、それで髪型も久美子君に似させて、時に黒子のシールを貼って貰って、奈美子に久美子君を演じて貰ったわけだよ。それにしても、今のシールは精巧に出来てるね。僕はその黒子を意識しながら奈美子を久美子君と思って、これまで頭の中だけでしか犯(や)れなかった事をたっぷりやったんだよ」
 「な、奈美子さんはそんな…扱いといいますか、それを受け入れたんですか…」
 「だから、奈美子もストレスの塊だったんだよ」
 「ああッ!」
 「そう、教師特有の病的なストレスに蝕まれたから…いや、蝕れないように、精神の開放を性的開放に委ねたんだよ」
 「アアアッッ、ウウウッ」
 「そしてある時、久美子君から君の相談を貰って、それを切っ掛けに会うようになってね。背景には奈美子が僕への相談を促した、と言う事もあるんだけどな」
 「………」
 「そう、それに娘のストーカー被害が発覚して、それを久美子君に相談したりもしたんで、余計に会う機会が増えてね。久美子君自身も凄いストレスを抱えてるのは分かっていたから、解消の手伝いをしてやろうと思ってね」
 「そ、それって」
 「ん、もう分かっているだろ。奈美子と相談してマンションに呼ぶようになったんだよ」
 「あぁ、奈美子さんと夫婦として借りてるマンションですか」
 「覚えていたね。そう、そこでさっきも云った変態プレイの協力をして貰ったよ」
 「………」
 「ん、どうだね?」
 「あ、あの…それで先生は、く、久美子とはセックスまでいったんでしょうか…」
 「それはさっきも云ったじゃないか」
 「あ、あぁ…そうでしたか。けど、ハッキリしないんですよ頭の中が。先生の話なのか自分の妄想なのかが。思い出そうとしても…そう、ひょっとしたら、全ては白昼夢ではないかと…」
 「………」
 「………」
 「…じゃあ、どっちが良い?」
 「え!どっちと言いますと…」
 「ん、だから久美子君とセックスした方が良かったのか不味かったのか」
 「そ、それは…」
 「ふふふ、いや、悪い悪い。久美子君とはまだ犯(や)ってないから大丈夫だよ」
 「………」
 「逆に聞くけど、君は奥さん以外の“誰か“と浮気…セックスをした事はないのかい?」
 「あうッ!」
 その一言に、身体の中を電流が走り抜けた。


 「んっ、どうした、大丈夫かい?」
 「あ、あの…実は1度だけ」
 「ふふっ、分かってるって」
 「えっ!」
 「ああ、君は何時だったか◯◯町の◯◯ホテルに行った事があるだろ」
 その言葉に、一瞬にして電流が流れたように背筋が伸びてしまった。
 「ロビーをこっそり見ていたら、変な髪型をした男性を見つけてね。本人は上手く化けたつもりかもしれなかったが、僕には直ぐに分ったよ」
 あぁ、あの時…。
 そして、やはり「先生と奈美子さんだったんですね“歳の差夫婦”って…」
 「ん、歳の差…?」
 「あ、いや…」
 「確かに、僕と奈美子は一回り以上の“歳の差”があるが?」
 「いえ、それはこちらの事でして…はい」
 私の聞き取れないような小さな声にも、先生は特に興味を示すような事はなかった。


 「あの…確かに私は“ある人”を通して誘いを受け、そのホテルに行きました。そこで」
 「ああ、分かっているよ。僕もまさか寺田君が現れるとは思っていなかったから、その時は凄くビックリしたよ。同時に恐ろしい偶然があるものだと2度ビックリしたね」
 「本当に仰る通りです」
 「しかし狭い世界だから、共通の知り合いがいてもおかしくはないよね」
 「はい…」
 頭の中には、渋谷君や神田先生の顔が浮かんでいた。考えてみれば、彼等の仕事の範囲もある程度は決まっている筈なのだ。まして体験者によって紹介が生まれるのだろうから、自ずと狭い世界での出会いになってしまう。


 コホン、先生の咳払いがした。私は改めて先生の顔を見つめる。
 「それで、君は奈美子を抱いたわけだ。だから僕も、堂々と久美子君をね。どうだい“ご主人”」
 「あぁ…」
 私には先に奈美子さんとセックスしてしまった負い目がある。それに、妻を寝取られたいという願望もある。そう、今ならハッキリそれが自覚できるのだ。
 しかし…。
 「あのぉ、先生」
 「ん、なんだね?」
 「やっぱり、その、無理そうです…」
 「………」
 先生は私は暫く見詰めた後、フーっと大きく息を吐き出した。そしてニコリと笑った。
 「そうか。それは仕方ないなぁ」
 「す、すいません」
 「いや、気にする事なんか何もないよ」
 「………」
 「君の方は、最近になって久美子君との仲が良い方向に向かってるみたいだしね」
 先生の言葉に、私は無意識に頷いていた。そうなのだ。先だっての日曜日から、久美子の“一人語り”によって私の欲求は満たされつつあるのだ。同時に妻の精神も開放されてると実感する事が出来ているのだ。奈美子さんとセックスした負い目はあるわけだが、その秘密を内に秘めるのも快感の一種と考えよう。私は自分の思考を上手くコントロールしようとしていたのだ。


 先生との会話はその後、世間のニュースや職場の話題に変わり、いたって健康的な時間となっていった。不思議なもので、陰湿な空気が流れていたこの店の雰囲気も、開店を待つ有りふれた酒場の一つに思えていた。
 そして、頃合いを見計らった時だった。
 「秋葉先生、ではそろそろ」と腰を浮かせようとした。
 先生の方も、引き留める素振りを見せる事もなく、あっさりとお別れの挨拶となったのだった。
 「じゃあ寺田君、また何かあればね」
 先生は最後に、ウインクまでみせていた。その表情(かお)は、年甲斐もなくお茶目な一面を浮かべていた。


 先生が店のドアを開けてくれて、私は陽の高い世間へと歩み出た。その時だ。
 「そうだ。久美子君の事だけど」
 その言葉に、一瞬緊張が走った。
 「奈美子が今まで通り、お茶会なんかに誘うのは許しておくれ」
 私は笑みを作ろうと試みながら頷く。
 「僕から久美子君を誘う事は、もうないからね」
 「は、はい」と私は畏まった。
 「でも、久美子君の方から“僕達夫婦“に新たな相談でもあったら…ふふふ」
 「………」
 先生がまだ何か云いたそうに見えた私だったが、その会話を自ら打ち消すように、先生はニコリと微笑んでドアを閉めたのだった。
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 BAR白昼夢ーー。
 目の前、秋葉先生が手に持つ小瓶を、私はジッと見ていた。ソレは確かに、栄養ドリンクの瓶にしか見えなかったが、中身は『シンカノシズク』と言う精力剤の一種だとか。


 「どうしたんだね、心配かい?」と、先生が真顔で訊いてくる。
 「え、ええ、あまり聞いた事のない物ですから」
 「ふふっ、まぁ仕方がない。でも、僕達もたまに世話になるけど、後遺症とかは全くないよ。依存する事もないしね」
 「本当ですか」
 「ああ、勿論だよ」


 「先生はソレを、奈美子さ…」と云ってしまったところで、慌てて口を抑えた。
 一瞬、先生の目が光った気がした。
 「…そうか。フムフム、久美子君から聞いたんだね」
 先生の言葉に、私は「すいません」反射的に頭を下げている。
 「いや、いいよ。ただし、他では彼女の名前は出さないように気をつけておくれよ。特に教師連中の間ではね」
 「は、はい、それは勿論です。それに、そんな事を私が吹聴したって分かったら、私の方だって…」
 「そうだな、君の変態性癖が世間にね…それに、君の奥さんの久美子君が変態マゾ女って事もね…」
 「ええっ!!つ、妻がマゾ…女ですって!」
 「ふふふ」
 「せ、先生、それは一体どういう…」
 「聞きたいかい?気になるよね。でも、聞くには…」と、先生が又も小瓶を振っている。やはり“ソレ”を飲まないと聞けないような話なのか。


 「少し飲んでみるかい、勇気を出して。僕も付き合うからさ」
 先生は云うなり、1本のキャップを開けはじめた。
 開いたところでもう1本のキャップも開けて、私に向けて来た。私はそれを恐々と受け取った。
 「じゃあ、もう一度乾杯だ」
 カチリと小さな音がすると、先生はあっさり、というか手本を示すように飲み干した。そして、視線で私に勧めてくる。
 私はゴクリと息を飲むと口をつけ…そして一気に飲み込んだ。


 喉を通った感触は確かに栄養ドリンクか。覚悟していたほどの刺激は全くない。そんな私の様子を見てか「寺田君、どうだい何もないだろ」と先生が笑っている。
 「では、話に戻ろうか。ええっと、何の話をしていたんだっけ、寺田君」
 如何にもの教師の口調に聞こえて、一瞬生徒の気分になった気がした。
 「え~っと、久美子の、しゃ、社会体験のところでした」と告げた瞬間、視線の端で小さな光が瞬いた。その光の流れを追い掛けると、それは天に昇り、光の雫となって降ってきた。
 あぁ…雫…コレが神華の雫か…。


 「寺田君」
 声に前を向き直れば、優しそうな先生の顔だ。
 「そう社会体験、な~んて堅苦しい話じゃなくて、久美子君がオマンコを濡らす話だよ」
 「アーーーッ、そ、そうでした!それを聞きたかったんでシュよ」と声が変だ、と思ったが気にならなかった。それどころか、背中の後ろからモワモワと高鳴りが湧いてきた。
 眼の前では、先生の口がパクパク開いたり閉じたりしていた。口の中からは言葉が舞い上がって行くのが見える。
 その言葉は宙で文字となり、私の頭の中に降りて来た。


 ーー寺田く~ん、半年ほど前に久美子君から相談があったんだよ…。
 ーー彼女は君がストレスを抱えてると心配してたっけね~。
 ーー彼女自身も職場のストレス、夫の心配、彼女も疲れていたみたいだよ…。
 ーーだから機をみて、奈美子と夫婦として借りてるマンションに呼んであげたんだよね…。
 ーーそこで、僕達のセックスを見せてあげるって云ったら、驚いていたよ…。
 ーーでも、僕達は気にせず裸になったんだ…。
 ーー久美子君はどうしてそんな事が出来るのかと聞くから、夫婦だからと答えたよ…。
 ーー僕達の姿を見て、どうすれば寺田君に寄り添えるか考えてごらんって云ってね…。
 ーーそれから僕達は久美子君に撮影をお願いしたんだよ…。
 ーー僕と奈美子は色んな格好でシャブリあったり舐めあったりしたね。うん、見せつけるようにね…。
 ーー奈美子がアソコを拡げると、久美子君は撮影をしてくれてたね。おそらく、久美子君も自分のアソコを濡らしてたと想うよ…。


 ーー奈美子のヤツも最初の頃は他人に見せるなんてと恥ずかしがってたけど、あの薬のせいか、元々持ってた資質のせいか、大胆になってきてね。友達の前で平気で尻の穴まで見せていたよ…。
 ーー僕のアソコも異様に膨らんでね。ソレで奈美子をヒーヒーいわせてたよ…。
 ーー久美子君は時おり撮影を忘れて、僕達の絡みに魅入られる事があったね…。
 ーー僕達も調子に乗って、やった事のない体位を披露したよ…。
 ーー押し車って知ってるかい?後ろから挿入したまま歩くんだ。奈美子は四つ足で、僕は腰を前に突き出すようにしてね。久美子君もやってみたいと思ったんじゃないかな…。
 ーーそれと、僕のアレが奈美子のアソコに入っている所を近くから撮らせたりもしたね…。
 ーーその映像を、プレイの後に三人で視たりもしたね…。
 ーー他には仮面を着けてプレイしてるところを撮った日もあったね…。
 ーー久美子君もだんだんと慣れてきたけど、毎回生殺しで辛かったんじゃないかな…。
 ーーん、久美子君と僕が“本番“をやったかって?
 ーーフフフ、さぁそれはどうだろうか…。
 ーーまぁ、そうやって色々と妄想してるだけでも楽しいんじゃないかな…。


 ーーだけど、僕の勃(た)ちが悪くなってきてね。ふふっ、歳には勝てないって事だね…。
 ーーそんな時“あの人達“を知ってね、お願いに行ったんだよ…。
 ーー実際に相手をしてくれたのは若い人だったね…。
 ーーその彼とは色んなプレイをやったよ…。
 ーー僕の前で奈美子がその彼とプレイする処を見るのは刺激的だったな…。
 ーーその彼は日によって手を変え、品を変えて楽しませてくれたよ…。
 ーー僕自身にも新たな発見があったよ。自分の中にSとMが同居してるって分かったしね…んんっ!?。
 ーー寺田君!?


 「どうした寺田君?」
 「ヒッ、ヒィーーッ!ヒィーーッ!ヒィーーッ!」
 「おいっ、寺田君!」
 「………」


 頭の奥で、色んな顔が現われては消えていた…久美子、奈美子さん、秋葉先生、渋谷君、それと仮面の女…。
 と、誰かが私の名前を呼んでいる…。
 やがて、瞼がゆっくり開いていき…暗い天井が目に付いた。
 天井に“言葉”が、いくつか舞って見えた。それが今度は、黒い雫となって消えていく。あぁ… “黒子”のような雫だ。
 すると、身体が揺れている事に気が付いた「寺田君、大丈夫かい」先生が私の身体を揺すっていたのだ。


 私は2、3度頭を振って、ゆっくりと椅子の背もたれから身体を起こそうとした。
 「わ、私は一体…」
 「ああ、話を聞かせてたら、急に痙攣が起きたみたいに震え出したんだよ。…大丈夫かい」
 「は、はぁ…」
 「頭が痛いとか、気持ち悪いとかは?」
 「え、ええ、大丈夫みたいです」と口にしたが、頭はまだボォっとしている。
 「ちょっと待ってておくれ。冷たい水を持って来るから」
 そう告げて、先生がカウンターの中へと入って行った。その後ろ姿に、先生はあの“薬”を本当に飲んだのだろうか、そんな疑問が重い頭を横切った。
 私は瞬きをして、一度目を瞑った。
 目を閉じた私の耳に、ガチャガチャと氷の音が聞こえてきた。先生が製氷器から取り出しているのか。その音の合間をプチプチと“黒子”が弾け飛んでいる。


 やがて先生が戻って来て「寺田君、まだ、ボォっとしてるみたいだけど、本当に大丈夫?」と、水差しと氷の入ったグラスを置いてくれた。そして、波々と注いでくれる。私は頭を下げて、それを飲み干した。
 先生は私の様子を観(み)ながら「もう1杯くらい飲んでおこうか」と云って、空になったコップに注いできた。
 「これには何も入ってないからね」
 その言葉にむせ返りそうになりながらも、続けて飲み干してみた。
 胃の奥に水が染み渡って暫くすると、身体が熱くなってきた。そして、額の辺りから汗が吹き出る感触を覚えた。
 「発汗が来たら、スッキリすると思うよ」と、先生が頷いている。


 「でも寺田君、今日はこの辺で止めておこうか」
 「いや…あの、実は黒子が」
 「黒子!?」
 「はぁ、そうなんです、黒子なんです。さっき黒子が降って来たんですよ。それで…」
 先生は私を心配げにシゲシゲと覗きこんできた。それでも私の口は止まらなかった。
 「あのお…先生の彼女、奈美子さんの右の耳たぶの下に、黒子なんてありませんよねぇ」
 私自身も何故そんな質問を口にしたのか、理由など理解できなかった。先生を見れば、目が真ん丸と拡がっていた。初めて見る先生の表情(かお)かもしれない。


 「寺田君、君はやっぱり面白いところがあるなぁ」
 「あ、いや、すいません…」
 「………」
 「ま、不味かったでしょうか…」と言い掛けたところで「いや大丈夫だよ。うん、君はやっぱり面白い人だ」と呟きが聞こえた。
 私は先生のその顔を暫くの間、見詰めていたのだった。
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 待ち合わせの時間に遅れないようにと店を出た私ーー寺田達夫。
 約束の5分前、北口の1番大きな改札の前にやって来た。秋葉先生はまだ、来られていないようだ。
 暫く改札の中を見つめていると、向こうの方から記憶通りの姿がこちらにやって来るのが見えた。秋葉先生だ。
 目の前に来られた先生は相変わらず恰幅が良く、茶色いブレザーを着こなした姿は威厳に溢れていた。


 「やあ、寺田君、久しぶりだね」
 「ご、ご無沙汰してます。今日はよろしくお願いします」
 先生を前にすると、私の緊張は嫌でも高まっていく。
 先生の方は、私の表情(かお)を覗くや「ちょっと痩せたかな?けど、顔色は思ったほど悪くないね。お世辞にも良いとは云えないけど」と、リラックスした感じだ。
 それから、ふふふと口元を歪めて「君の顔を見ると、何だか今日の相談事の中身が分かる気がするよ」と目を細めて告げてこられた。
 こちらは顔を強張らせるだけだと言うのに。


 「じゃあ、秘密の話をするのに相応しい店があるからそこに行こうか」
 先生は笑みを浮かべながら、踵を返して歩き始めた。私はその後を追いかける。
 人の波をやり過ごしながらエスカレーターに向かい、そこを下れば覚えのある場所だった。先日、久美子と秋葉先生が落ち合った場所だ。先生はそこを通り過ぎると足を速めた。
 先生の横に肩を並べてチラリと横顔を覗く。微かに白髪が確認出来るが、皺も少なく肌の艶も良さそうだ。歳は私より一回以上も上なのに。


 「久美子君とは上手くいってないのかい?そんな事はないよね」
 いきなり向けられた質問にドキリとした。先生を見れば、口元がニヤついている。
 「く、久美子とは、そのまぁボチボチです…はい」
 「ボチボチか。と言う事は悪くないという事だな」と告げて、今度は朗らかな笑みを向けてきた。
 「君は久美子君と結婚してどのくらい経つのかな」
 「えっと10年以上は…」
 「ん、何だか頼りない言い方だな。でも夫婦ってそんなもんだよな」
 「………」
 歩きながら話す先生。それも思った以上に口が回る先生に、意外な気がしながらも緊張が少し解れる気がした。これはすんなり、色んな事が聞けるかもしれない。


 やがて覚えのある通りにやって来た。
 雰囲気は先だってと同じで、今日土曜日のこの時間帯も人が疎(まば)らな飲み屋街だ。
 先生が足を止めたのは、例の店【BAR 白昼夢】の前だった。
 先生は扉の前で一旦振り返って私を見た。その目が、ここでいいよな、と怪しく誘ってる気がして、身体が竦みそうになってしまった。
 「さあ、ここだよ。入ろうか」と落ち着いた声だ。
 私は先生の後ろ姿に引き込まれるように足を進めた。


 店の中は想像した通り、落ち着いた感じの造りだった。
 先生が照明のスイッチを入れれば、浮かび出たのはレトロな灯りだ。


 カウンターの中に入った先生が「さぁどこでもいいけど、そこがいいかな」と云って、二人掛けのボックス席を指さした。
 店は小さなボックス席が二つに、カウンターは5人でいっぱい。かなり小ぢんまりとした店だった。


 瓶ビールを取り出し、グラスの用意を始めた後ろ姿に「あのぉ今日は誰もいないんですか」と聞いてみた。
 「ああ、開くのは暗くなってからだからね。来るのはバーテンが一人で、その彼がいつも一人で切り盛りしてるよ」
 「あっそう言えば」そこで私は久美子から聞いた言葉を思い出した「この店って、先生の教え子さんがやってるとか…」
 「久美子君から聞いたんだね。そうだよ、かなり古い子なんだけどね。うん、その彼からここの鍵を借りたんだよ」
 先生はそう云いながら、盆を持ってこちら側に出てきた。


 小さなテーブルを挟んで向かい合った私達。
 「さぁいこうか」
 私がビール瓶を持った所で、先に先生が注いでこられた。私は恐縮しながらも頂く事にした。そして直ぐさま注ぎ返す。
 軽く乾杯したところで「今日は久美子君の事で相談だったよね」と、いきなりの本題だ。私は蒸せそうになりながら頷いている。
 「ふふっ、何となく内容も分かりそうな気がするけど、喋り辛くなったら云っておくれ。酒は色々あるからね」
 はぁ…と、頼りない返事をしてしまう私に「それに、腹を割れないなら、口を割らせる酒もあるからね」
 一瞬、先生が冗談を云ったのかと思ったが、意味は読み込めない。先生は早くも1杯目を飲み終わって、2杯目を口にするところだ。
 私も酒の力を借りてと、自分に言い聞かせながらグラスの残りを一気に呑みほした。
 そして「秋葉先生、あのですね、妻の久美子から私の事で何か相談とか愚痴とか聞いてらっしゃいませんか」と、一息で口にした。そう、今日の相談とは言ってみればこれだけの事なのだ。
 先生はグラスを置くと口元に笑みを浮かべた。
 「ふふふ、聞いてるよ。聞いてるとも、君の事は色々とね」
 その声の響きに、背筋がキュッと硬くなっていった。


 「じゃあ、どこからか話そうか…そうだなぁ」
 先生が呟きながら、その目は私を甚振る目ではないのか。
 「でも、その前に僕自身の事を少し話そうかな。その方が君もこの後の話が聞きやすいと思うしね」
 あぁ…それはどう言う意味だ…。やはりこれは、飲まないと聞けない話なのか。
 そして私はもう一杯、手酌で注いで飲み干してみせた。


 「ふふっ、いい飲みっぷりだ」
 「………」
 「そう、君も既に知ってると思うが、僕は何年も前に離婚していて、今は独身なんだ。久美子君の世話になった娘は、別れた女房と一緒に暮らしているし、僕は一人暮らしなわけだよ」
 「はぁ…」そうですね、と心の中で応える。
 「だけどね、君にだから教えておくけど、実は恋人がいるんだ」
 え!っと驚いてみせた。が、その事実は妻から訊いている。
 先生は私の表情など気にせず、グラスを口に運んでいる。


 「恋人といったって子供じゃあるまいし分かるよね、それがどんな関係か」
 「は、はぁ」またも頼りない返事だ。
 「ふふっ、まぁ愛人とかセックスフレンドといった方が分かり易いよね」
 ううッ、改まってそんな言葉をぶつけられると萎縮してしまう。
 「どう?こんな話も聞きたいだろ」先生がビール瓶を向けて来ながら、私の覚悟を計っている、ような感じだ。
 「でもね、時には夫婦もやるんだよ」
 「え、どう言う意味ですか」
 「疑似夫婦さ」
 「疑似夫婦?」
 「そう。愛人、セックスフレンドだとしても付き合いが長くなればマンネリが生まれてくるだろ。だから新しい刺激を探したんだよ」
 「あぁ、それが…」
 「そう、その彼女と二人で夫婦として色んな所に顔を出したり、呼んだりネ」
 「それは…」と聞きかけてゴクッと息を飲み込んだ。先生の目が据わって見えたのだ。
 その先生がこちらに向かって顎をしゃくる。もっと飲めと云っているのか、私は慌ててグラスを口に運ぶ。


 「長い事教師をやってるとね、色んな人に会ったり色んな噂を聞いたりするんだよ」
 「………」
 「君は知ってるかな…悩みを抱える教師やお堅い職業の人達を相手に、コーディネートをしてる人がいてね。悩み多き人達がストレスから性犯罪なんかを犯さないように、解放出来る場所を用意したり、解放出来るシチュエーションを作ったりしてくれるんだ」
 「ああっ!」そんな事が…と云おうとしたが、口が開かなかった。それでも頭の中には、“ある人“の顔を浮かべていた。
 「まぁ僕も…と言うか僕達も縁があって、たまに世話になるんだけどね」
 「………」
 「とまぁ、それだけ我々教師連中は病的なストレスに犯されているという事だよ。それで半年ほど前、君の奥さん、久美子君から相談のメールを貰った時も直ぐにピンときたんだ。彼女も恐らく、病的なストレスを抱えてるってね。でも、悩みは彼女自身の事だけじゃなかったんだよね」と先生が口元を歪めた。
 私は遂に来たかと、身構えてしまう。
 「そう、久美子君の相談のメインは、君の事だったんだよ」
 「あぁ…」
 「彼女も話しずらかったと思う。だから僕の方から聞いてみたんだよ」
 「そ、それはどんな風にでしょうか…」
 「ああ、『ひょっとして、寺田君が性的な事件でも起こしそうなのかい?』って」
 「ああっ!」
 「ふふっ、その時の久美子君も今の君みたいな反応だったよ」
 あうッ、思わず今度は、背筋が伸びてしまう。
 「図星みたいな様子だったから『じゃあ、家にパソコンがあるなら1度ネットの履歴が見れないか試してごらん』って云ってみたわけさ」
 「………」
 「そう、それで久美子君は視たんだな。もちろん君自身もシッカリ記憶にあるやつをだね」
 ああっ!。


 「ふふふ。それでね、僕の娘のストーカー騒動の事で頻繁に連絡を取るようになってたんで、そのネット履歴の報告を聞く機会を改まって設けたんだ。じっくり聞かせて貰おうと思ってね」
 「あぁ、そんな事が…」
 「ああ、そうだよ。それで君の性癖も知る事になってね、久美子君にはこう告(い)ったんだ『ご主人…寺田君に付き合ってあげろ。おそらく彼の悩みは半端なものじゃない。間違いを起こして世間から後ろ指を指される前に、君も彼の性癖に寄りそってやれ』とね」
 「そうだったんですか!」
 「だけど久美子君は、ずっと戸惑ってる様子だったな。だから君の方に態度として現れたのは、最近じゃないのかな。思い当たる事はないかい?」
 あッと、見事に日曜の一夜の出来事が浮かんできた。そして、妻に最後の一押しをしたのはあの日の昼間、この店で秋葉先生と会ったからに違いない、と思えた。
 「ふふっ、どうやら身に覚えがあるみたいだね。それは大いに結構な事だよ」と口にして、先生がウンウンと頷いている。
 「まぁ僕としたら時間が掛かったと思ったけどね。と言うのも、久美子君がそのネット履歴の話を初めて僕にした時から、彼女自身も興味は持っていたみたいだからね」
 「きょ、興味を、妻が…ですか…。その興味って…」
 「んん、決まってるじゃないか、性的好奇心ってやつだよ」
 「ああッ!!」
 「そう、それで久美子君には色々とな…ふふふ」
 「い、色々とは…」
 「んん、まあ生徒に教えるのと同じ云い方をするなら“社会体験”ってところかな」
 「え!その社会体験って…」
 「ふふ、その詳しい内容を話すには飲みが足りないな。勿論、僕もだけど」
 と告げた先生が立ち上がって、カウンターの中へと進んでいく。新しいビールでも取りに行くのだろうか。


 先生は直ぐに戻ってきた。手にはよく見る栄養ドリンクの小瓶が2本。
 「これはね、実は中身は違うんだよ」と、手に持った小瓶を顔の前で振って「ブレンドなんだよね」と目を向けてきた。
 「ブ、ブレンド?」
 「あぁ、非合法のね」
 「ええっ!」
 「とは云っても、人体にはさほど影響はない。一時的に夢を見るだけだよ」
 「ほ、本当ですか」
 「ああ、この中身は“神華の雫(シンカノシズク)”といって一種の精力剤、それに興奮剤を少し混ぜて薄めたやつなんだ」
 「せ、先生は…」何故そんな物を…と続けようとしたが、口が動かなかった。
 「なんだ、びっくりしてるのかい。こんなのは普通の栄養ドリンクとそんなに変わらないさ。勿論、女性だって飲める物だよ」
 「ま、まさかソレを…」
 「ふふふ…」
 先生の笑いに身体がゾクゾクと震えて来た。あぁ…私は何か過ちを犯そうとしているのだろうか…。
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私の目の前、秋葉先生がようやくウンウンと頷いた。
 そして「黒子だけど、奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ」
 「!…」
 「だけどね、ふふっ、たまにシールを貼る事があるんだ」
 「シール?」
 「ああ、そうだよ、シールだ」
 「何故シールなんかを」
 「んっ、それは久美子君の耳たぶの下にあるからだよ、黒子が」
 「えっ、どういう意味ですか」
 「実はね、以前に久美子君と同じ勤務先になった時期があっただろ」
 「ああ、それは私も聞いています」
 「うむ、その頃、僕と久美子君は言わば上司と部下の関係で、色々と指導していたわけだ。そのうちに僕の方が、彼女に対して好意を持つようになってな」
 「え、それって」
 「ああ、分かり易く言えば、久美子君と犯(や)りたくなったわけだよ」
 「ええっ!」
 「それでも中々上手くいかず、いずれ僕が別の学校に転勤になったんだ」
 「………」
 「その後は会う機会もなくなって、疎遠になっていったわけだよ。そんな時、当時の勤め先に赴任して来たのが奈美子だ。初めて見た時に、ずいぶん久美子君と似てると思ってな。その事を奈美子と親しくなった時にポロっと云ったんだ。奈美子もそれが直ぐに久美子君と分かってな。聞けば同じ大学を出ていて、仲も良かったと言うから更にビックリだよ」
 「そんな事があったんですか」
 「ああ、それから僕と奈美子は親密な関係になって行くわけだが、ある時に、久美子君の耳たぶの下に黒子があった事を何故か覚えていてね、それを思い出したんだ。奈美子にも訊いてみれば、親友の黒子をよく覚えていてね。それで暫くして、奈美子にお願いしたんだ」
 「そ、それは何を?」
 「うん、黒子を付けてくれと。久美子君と同じ所にシールでいいから付けてみてくれないかとね」
 「あぁ…」
 「そう、僕は正直に告(い)ったよ。前から久美子君と一度オマンコしてみたいと思ってたんだ、ってね」
 「あッ!」
 「奈美子は特に驚く事もなくてね。と言うのも、その頃の僕達は互いに変態度を認めあってて、性癖をカミングアウトしあってたから、奈美子も理解を示してくれたわけだよ」
 「せ、先生に、そんな癖が…」
 「ああ、そうだよ。今の君なら聞ける話だろ」
 「ああ、はい」
 「ふふっ、それだけでも薬の効果があったかな」
 「ああっ」
 「そう、それで髪型も久美子君に似させて、時に黒子のシールを貼って貰って、奈美子に久美子君を演じて貰ったわけだよ。それにしても、今のシールは精巧に出来てるね。僕はその黒子を意識しながら奈美子を久美子君と思って、これまで頭の中だけでしか犯(や)れなかった事をたっぷりやったんだよ」
 「な、奈美子さんはそんな…扱いといいますか、それを受け入れたんですか…」
 「だから、奈美子もストレスの塊だったんだよ」
 「ああッ!」
 「そう、教師特有の病的なストレスに蝕まれたから…いや、蝕れないように、精神の開放を性的開放に委ねたんだよ」
 「アアアッッ、ウウウッ」
 「そしてある時、久美子君から君の相談を貰って、それを切っ掛けに会うようになってね。背景には奈美子が僕への相談を促した、と言う事もあるんだけどな」
 「………」
 「そう、それに娘のストーカー被害が発覚して、それを久美子君に相談したりもしたんで、余計に会う機会が増えてね。久美子君自身も凄いストレスを抱えてるのは分かっていたから、解消の手伝いをしてやろうと思ってね」
 「そ、それって」
 「ん、もう分かっているだろ。奈美子と相談してマンションに呼ぶようになったんだよ」
 「あぁ、奈美子さんと夫婦として借りてるマンションですか」
 「覚えていたね。そう、そこでさっきも云った変態プレイの協力をして貰ったよ」
 「………」
 「ん、どうだね?」
 「あ、あの…それで先生は、く、久美子とはセックスまでいったんでしょうか…」
 「それはさっきも云ったじゃないか」
 「あ、あぁ…そうでしたか。けど、ハッキリしないんですよ頭の中が。先生の話なのか自分の妄想なのかが。思い出そうとしても…そう、ひょっとしたら、全ては白昼夢ではないかと…」
 「………」
 「………」
 「…じゃあ、どっちが良い?」
 「え!どっちと言いますと…」
 「ん、だから久美子君とセックスした方が良かったのか不味かったのか」
 「そ、それは…」
 「ふふふ、いや、悪い悪い。久美子君とはまだ犯(や)ってないから大丈夫だよ」
 「………」
 「逆に聞くけど、君は奥さん以外の“誰か“と浮気…セックスをした事はないのかい?」
 「あうッ!」
 その一言に、身体の中を電流が走り抜けた。


 「んっ、どうした、大丈夫かい?」
 「あ、あの…実は1度だけ」
 「ふふっ、分かってるって」
 「えっ!」
 「ああ、君は何時だったか◯◯町の◯◯ホテルに行った事があるだろ」
 その言葉に、一瞬にして電流が流れたように背筋が伸びてしまった。
 「ロビーをこっそり見ていたら、変な髪型をした男性を見つけてね。本人は上手く化けたつもりかもしれなかったが、僕には直ぐに分ったよ」
 あぁ、あの時…。
 そして、やはり「先生と奈美子さんだったんですね“歳の差夫婦”って…」
 「ん、歳の差…?」
 「あ、いや…」
 「確かに、僕と奈美子は一回り以上の“歳の差”があるが?」
 「いえ、それはこちらの事でして…はい」
 私の聞き取れないような小さな声にも、先生は特に興味を示すような事はなかった。


 「あの…確かに私は“ある人”を通して誘いを受け、そのホテルに行きました。そこで」
 「ああ、分かっているよ。僕もまさか寺田君が現れるとは思っていなかったから、その時は凄くビックリしたよ。同時に恐ろしい偶然があるものだと2度ビックリしたね」
 「本当に仰る通りです」
 「しかし狭い世界だから、共通の知り合いがいてもおかしくはないよね」
 「はい…」
 頭の中には、渋谷君や神田先生の顔が浮かんでいた。考えてみれば、彼等の仕事の範囲もある程度は決まっている筈なのだ。まして体験者によって紹介が生まれるのだろうから、自ずと狭い世界での出会いになってしまう。


 コホン、先生の咳払いがした。私は改めて先生の顔を見つめる。
 「それで、君は奈美子を抱いたわけだ。だから僕も、堂々と久美子君をね。どうだい“ご主人”」
 「あぁ…」
 私には先に奈美子さんとセックスしてしまった負い目がある。それに、妻を寝取られたいという願望もある。そう、今ならハッキリそれが自覚できるのだ。
 しかし…。
 「あのぉ、先生」
 「ん、なんだね?」
 「やっぱり、その、無理そうです…」
 「………」
 先生は私は暫く見詰めた後、フーっと大きく息を吐き出した。そしてニコリと笑った。
 「そうか。それは仕方ないなぁ」
 「す、すいません」
 「いや、気にする事なんか何もないよ」
 「………」
 「君の方は、最近になって久美子君との仲が良い方向に向かってるみたいだしね」
 先生の言葉に、私は無意識に頷いていた。そうなのだ。先だっての日曜日から、久美子の“一人語り”によって私の欲求は満たされつつあるのだ。同時に妻の精神も開放されてると実感する事が出来ているのだ。奈美子さんとセックスした負い目はあるわけだが、その秘密を内に秘めるのも快感の一種と考えよう。私は自分の思考を上手くコントロールしようとしていたのだ。


 先生との会話はその後、世間のニュースや職場の話題に変わり、いたって健康的な時間となっていった。不思議なもので、陰湿な空気が流れていたこの店の雰囲気も、開店を待つ有りふれた酒場の一つに思えていた。
 そして、頃合いを見計らった時だった。
 「秋葉先生、ではそろそろ」と腰を浮かせようとした。
 先生の方も、引き留める素振りを見せる事もなく、あっさりとお別れの挨拶となったのだった。
 「じゃあ寺田君、また何かあればね」
 先生は最後に、ウインクまでみせていた。その表情(かお)は、年甲斐もなくお茶目な一面を浮かべていた。


 先生が店のドアを開けてくれて、私は陽の高い世間へと歩み出た。その時だ。
 「そうだ。久美子君の事だけど」
 その言葉に、一瞬緊張が走った。
 「奈美子が今まで通り、お茶会なんかに誘うのは許しておくれ」
 私は笑みを作ろうと試みながら頷く。
 「僕から久美子君を誘う事は、もうないからね」
 「は、はい」と私は畏まった。
 「でも、久美子君の方から“僕達夫婦“に新たな相談でもあったら…ふふふ」
 「………」
 先生がまだ何か云いたそうに見えた私だったが、その会話を自ら打ち消すように、先生はニコリと微笑んでドアを閉めたのだった。
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 BAR白昼夢ーー。
 目の前、秋葉先生が手に持つ小瓶を、私はジッと見ていた。ソレは確かに、栄養ドリンクの瓶にしか見えなかったが、中身は『シンカノシズク』と言う精力剤の一種だとか。


 「どうしたんだね、心配かい?」と、先生が真顔で訊いてくる。
 「え、ええ、あまり聞いた事のない物ですから」
 「ふふっ、まぁ仕方がない。でも、僕達もたまに世話になるけど、後遺症とかは全くないよ。依存する事もないしね」
 「本当ですか」
 「ああ、勿論だよ」


 「先生はソレを、奈美子さ…」と云ってしまったところで、慌てて口を抑えた。
 一瞬、先生の目が光った気がした。
 「…そうか。フムフム、久美子君から聞いたんだね」
 先生の言葉に、私は「すいません」反射的に頭を下げている。
 「いや、いいよ。ただし、他では彼女の名前は出さないように気をつけておくれよ。特に教師連中の間ではね」
 「は、はい、それは勿論です。それに、そんな事を私が吹聴したって分かったら、私の方だって…」
 「そうだな、君の変態性癖が世間にね…それに、君の奥さんの久美子君が変態マゾ女って事もね…」
 「ええっ!!つ、妻がマゾ…女ですって!」
 「ふふふ」
 「せ、先生、それは一体どういう…」
 「聞きたいかい?気になるよね。でも、聞くには…」と、先生が又も小瓶を振っている。やはり“ソレ”を飲まないと聞けないような話なのか。


 「少し飲んでみるかい、勇気を出して。僕も付き合うからさ」
 先生は云うなり、1本のキャップを開けはじめた。
 開いたところでもう1本のキャップも開けて、私に向けて来た。私はそれを恐々と受け取った。
 「じゃあ、もう一度乾杯だ」
 カチリと小さな音がすると、先生はあっさり、というか手本を示すように飲み干した。そして、視線で私に勧めてくる。
 私はゴクリと息を飲むと口をつけ…そして一気に飲み込んだ。


 喉を通った感触は確かに栄養ドリンクか。覚悟していたほどの刺激は全くない。そんな私の様子を見てか「寺田君、どうだい何もないだろ」と先生が笑っている。
 「では、話に戻ろうか。ええっと、何の話をしていたんだっけ、寺田君」
 如何にもの教師の口調に聞こえて、一瞬生徒の気分になった気がした。
 「え~っと、久美子の、しゃ、社会体験のところでした」と告げた瞬間、視線の端で小さな光が瞬いた。その光の流れを追い掛けると、それは天に昇り、光の雫となって降ってきた。
 あぁ…雫…コレが神華の雫か…。


 「寺田君」
 声に前を向き直れば、優しそうな先生の顔だ。
 「そう社会体験、な~んて堅苦しい話じゃなくて、久美子君がオマンコを濡らす話だよ」
 「アーーーッ、そ、そうでした!それを聞きたかったんでシュよ」と声が変だ、と思ったが気にならなかった。それどころか、背中の後ろからモワモワと高鳴りが湧いてきた。
 眼の前では、先生の口がパクパク開いたり閉じたりしていた。口の中からは言葉が舞い上がって行くのが見える。
 その言葉は宙で文字となり、私の頭の中に降りて来た。


 ーー寺田く~ん、半年ほど前に久美子君から相談があったんだよ…。
 ーー彼女は君がストレスを抱えてると心配してたっけね~。
 ーー彼女自身も職場のストレス、夫の心配、彼女も疲れていたみたいだよ…。
 ーーだから機をみて、奈美子と夫婦として借りてるマンションに呼んであげたんだよね…。
 ーーそこで、僕達のセックスを見せてあげるって云ったら、驚いていたよ…。
 ーーでも、僕達は気にせず裸になったんだ…。
 ーー久美子君はどうしてそんな事が出来るのかと聞くから、夫婦だからと答えたよ…。
 ーー僕達の姿を見て、どうすれば寺田君に寄り添えるか考えてごらんって云ってね…。
 ーーそれから僕達は久美子君に撮影をお願いしたんだよ…。
 ーー僕と奈美子は色んな格好でシャブリあったり舐めあったりしたね。うん、見せつけるようにね…。
 ーー奈美子がアソコを拡げると、久美子君は撮影をしてくれてたね。おそらく、久美子君も自分のアソコを濡らしてたと想うよ…。


 ーー奈美子のヤツも最初の頃は他人に見せるなんてと恥ずかしがってたけど、あの薬のせいか、元々持ってた資質のせいか、大胆になってきてね。友達の前で平気で尻の穴まで見せていたよ…。
 ーー僕のアソコも異様に膨らんでね。ソレで奈美子をヒーヒーいわせてたよ…。
 ーー久美子君は時おり撮影を忘れて、僕達の絡みに魅入られる事があったね…。
 ーー僕達も調子に乗って、やった事のない体位を披露したよ…。
 ーー押し車って知ってるかい?後ろから挿入したまま歩くんだ。奈美子は四つ足で、僕は腰を前に突き出すようにしてね。久美子君もやってみたいと思ったんじゃないかな…。
 ーーそれと、僕のアレが奈美子のアソコに入っている所を近くから撮らせたりもしたね…。
 ーーその映像を、プレイの後に三人で視たりもしたね…。
 ーー他には仮面を着けてプレイしてるところを撮った日もあったね…。
 ーー久美子君もだんだんと慣れてきたけど、毎回生殺しで辛かったんじゃないかな…。
 ーーん、久美子君と僕が“本番“をやったかって?
 ーーフフフ、さぁそれはどうだろうか…。
 ーーまぁ、そうやって色々と妄想してるだけでも楽しいんじゃないかな…。


 ーーだけど、僕の勃(た)ちが悪くなってきてね。ふふっ、歳には勝てないって事だね…。
 ーーそんな時“あの人達“を知ってね、お願いに行ったんだよ…。
 ーー実際に相手をしてくれたのは若い人だったね…。
 ーーその彼とは色んなプレイをやったよ…。
 ーー僕の前で奈美子がその彼とプレイする処を見るのは刺激的だったな…。
 ーーその彼は日によって手を変え、品を変えて楽しませてくれたよ…。
 ーー僕自身にも新たな発見があったよ。自分の中にSとMが同居してるって分かったしね…んんっ!?。
 ーー寺田君!?


 「どうした寺田君?」
 「ヒッ、ヒィーーッ!ヒィーーッ!ヒィーーッ!」
 「おいっ、寺田君!」
 「………」


 頭の奥で、色んな顔が現われては消えていた…久美子、奈美子さん、秋葉先生、渋谷君、それと仮面の女…。
 と、誰かが私の名前を呼んでいる…。
 やがて、瞼がゆっくり開いていき…暗い天井が目に付いた。
 天井に“言葉”が、いくつか舞って見えた。それが今度は、黒い雫となって消えていく。あぁ… “黒子”のような雫だ。
 すると、身体が揺れている事に気が付いた「寺田君、大丈夫かい」先生が私の身体を揺すっていたのだ。


 私は2、3度頭を振って、ゆっくりと椅子の背もたれから身体を起こそうとした。
 「わ、私は一体…」
 「ああ、話を聞かせてたら、急に痙攣が起きたみたいに震え出したんだよ。…大丈夫かい」
 「は、はぁ…」
 「頭が痛いとか、気持ち悪いとかは?」
 「え、ええ、大丈夫みたいです」と口にしたが、頭はまだボォっとしている。
 「ちょっと待ってておくれ。冷たい水を持って来るから」
 そう告げて、先生がカウンターの中へと入って行った。その後ろ姿に、先生はあの“薬”を本当に飲んだのだろうか、そんな疑問が重い頭を横切った。
 私は瞬きをして、一度目を瞑った。
 目を閉じた私の耳に、ガチャガチャと氷の音が聞こえてきた。先生が製氷器から取り出しているのか。その音の合間をプチプチと“黒子”が弾け飛んでいる。


 やがて先生が戻って来て「寺田君、まだ、ボォっとしてるみたいだけど、本当に大丈夫?」と、水差しと氷の入ったグラスを置いてくれた。そして、波々と注いでくれる。私は頭を下げて、それを飲み干した。
 先生は私の様子を観(み)ながら「もう1杯くらい飲んでおこうか」と云って、空になったコップに注いできた。
 「これには何も入ってないからね」
 その言葉にむせ返りそうになりながらも、続けて飲み干してみた。
 胃の奥に水が染み渡って暫くすると、身体が熱くなってきた。そして、額の辺りから汗が吹き出る感触を覚えた。
 「発汗が来たら、スッキリすると思うよ」と、先生が頷いている。


 「でも寺田君、今日はこの辺で止めておこうか」
 「いや…あの、実は黒子が」
 「黒子!?」
 「はぁ、そうなんです、黒子なんです。さっき黒子が降って来たんですよ。それで…」
 先生は私を心配げにシゲシゲと覗きこんできた。それでも私の口は止まらなかった。
 「あのお…先生の彼女、奈美子さんの右の耳たぶの下に、黒子なんてありませんよねぇ」
 私自身も何故そんな質問を口にしたのか、理由など理解できなかった。先生を見れば、目が真ん丸と拡がっていた。初めて見る先生の表情(かお)かもしれない。


 「寺田君、君はやっぱり面白いところがあるなぁ」
 「あ、いや、すいません…」
 「………」
 「ま、不味かったでしょうか…」と言い掛けたところで「いや大丈夫だよ。うん、君はやっぱり面白い人だ」と呟きが聞こえた。
 私は先生のその顔を暫くの間、見詰めていたのだった。
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 待ち合わせの時間に遅れないようにと店を出た私ーー寺田達夫。
 約束の5分前、北口の1番大きな改札の前にやって来た。秋葉先生はまだ、来られていないようだ。
 暫く改札の中を見つめていると、向こうの方から記憶通りの姿がこちらにやって来るのが見えた。秋葉先生だ。
 目の前に来られた先生は相変わらず恰幅が良く、茶色いブレザーを着こなした姿は威厳に溢れていた。


 「やあ、寺田君、久しぶりだね」
 「ご、ご無沙汰してます。今日はよろしくお願いします」
 先生を前にすると、私の緊張は嫌でも高まっていく。
 先生の方は、私の表情(かお)を覗くや「ちょっと痩せたかな?けど、顔色は思ったほど悪くないね。お世辞にも良いとは云えないけど」と、リラックスした感じだ。
 それから、ふふふと口元を歪めて「君の顔を見ると、何だか今日の相談事の中身が分かる気がするよ」と目を細めて告げてこられた。
 こちらは顔を強張らせるだけだと言うのに。


 「じゃあ、秘密の話をするのに相応しい店があるからそこに行こうか」
 先生は笑みを浮かべながら、踵を返して歩き始めた。私はその後を追いかける。
 人の波をやり過ごしながらエスカレーターに向かい、そこを下れば覚えのある場所だった。先日、久美子と秋葉先生が落ち合った場所だ。先生はそこを通り過ぎると足を速めた。
 先生の横に肩を並べてチラリと横顔を覗く。微かに白髪が確認出来るが、皺も少なく肌の艶も良さそうだ。歳は私より一回以上も上なのに。


 「久美子君とは上手くいってないのかい?そんな事はないよね」
 いきなり向けられた質問にドキリとした。先生を見れば、口元がニヤついている。
 「く、久美子とは、そのまぁボチボチです…はい」
 「ボチボチか。と言う事は悪くないという事だな」と告げて、今度は朗らかな笑みを向けてきた。
 「君は久美子君と結婚してどのくらい経つのかな」
 「えっと10年以上は…」
 「ん、何だか頼りない言い方だな。でも夫婦ってそんなもんだよな」
 「………」
 歩きながら話す先生。それも思った以上に口が回る先生に、意外な気がしながらも緊張が少し解れる気がした。これはすんなり、色んな事が聞けるかもしれない。


 やがて覚えのある通りにやって来た。
 雰囲気は先だってと同じで、今日土曜日のこの時間帯も人が疎(まば)らな飲み屋街だ。
 先生が足を止めたのは、例の店【BAR 白昼夢】の前だった。
 先生は扉の前で一旦振り返って私を見た。その目が、ここでいいよな、と怪しく誘ってる気がして、身体が竦みそうになってしまった。
 「さあ、ここだよ。入ろうか」と落ち着いた声だ。
 私は先生の後ろ姿に引き込まれるように足を進めた。


 店の中は想像した通り、落ち着いた感じの造りだった。
 先生が照明のスイッチを入れれば、浮かび出たのはレトロな灯りだ。


 カウンターの中に入った先生が「さぁどこでもいいけど、そこがいいかな」と云って、二人掛けのボックス席を指さした。
 店は小さなボックス席が二つに、カウンターは5人でいっぱい。かなり小ぢんまりとした店だった。


 瓶ビールを取り出し、グラスの用意を始めた後ろ姿に「あのぉ今日は誰もいないんですか」と聞いてみた。
 「ああ、開くのは暗くなってからだからね。来るのはバーテンが一人で、その彼がいつも一人で切り盛りしてるよ」
 「あっそう言えば」そこで私は久美子から聞いた言葉を思い出した「この店って、先生の教え子さんがやってるとか…」
 「久美子君から聞いたんだね。そうだよ、かなり古い子なんだけどね。うん、その彼からここの鍵を借りたんだよ」
 先生はそう云いながら、盆を持ってこちら側に出てきた。


 小さなテーブルを挟んで向かい合った私達。
 「さぁいこうか」
 私がビール瓶を持った所で、先に先生が注いでこられた。私は恐縮しながらも頂く事にした。そして直ぐさま注ぎ返す。
 軽く乾杯したところで「今日は久美子君の事で相談だったよね」と、いきなりの本題だ。私は蒸せそうになりながら頷いている。
 「ふふっ、何となく内容も分かりそうな気がするけど、喋り辛くなったら云っておくれ。酒は色々あるからね」
 はぁ…と、頼りない返事をしてしまう私に「それに、腹を割れないなら、口を割らせる酒もあるからね」
 一瞬、先生が冗談を云ったのかと思ったが、意味は読み込めない。先生は早くも1杯目を飲み終わって、2杯目を口にするところだ。
 私も酒の力を借りてと、自分に言い聞かせながらグラスの残りを一気に呑みほした。
 そして「秋葉先生、あのですね、妻の久美子から私の事で何か相談とか愚痴とか聞いてらっしゃいませんか」と、一息で口にした。そう、今日の相談とは言ってみればこれだけの事なのだ。
 先生はグラスを置くと口元に笑みを浮かべた。
 「ふふふ、聞いてるよ。聞いてるとも、君の事は色々とね」
 その声の響きに、背筋がキュッと硬くなっていった。


 「じゃあ、どこからか話そうか…そうだなぁ」
 先生が呟きながら、その目は私を甚振る目ではないのか。
 「でも、その前に僕自身の事を少し話そうかな。その方が君もこの後の話が聞きやすいと思うしね」
 あぁ…それはどう言う意味だ…。やはりこれは、飲まないと聞けない話なのか。
 そして私はもう一杯、手酌で注いで飲み干してみせた。


 「ふふっ、いい飲みっぷりだ」
 「………」
 「そう、君も既に知ってると思うが、僕は何年も前に離婚していて、今は独身なんだ。久美子君の世話になった娘は、別れた女房と一緒に暮らしているし、僕は一人暮らしなわけだよ」
 「はぁ…」そうですね、と心の中で応える。
 「だけどね、君にだから教えておくけど、実は恋人がいるんだ」
 え!っと驚いてみせた。が、その事実は妻から訊いている。
 先生は私の表情など気にせず、グラスを口に運んでいる。


 「恋人といったって子供じゃあるまいし分かるよね、それがどんな関係か」
 「は、はぁ」またも頼りない返事だ。
 「ふふっ、まぁ愛人とかセックスフレンドといった方が分かり易いよね」
 ううッ、改まってそんな言葉をぶつけられると萎縮してしまう。
 「どう?こんな話も聞きたいだろ」先生がビール瓶を向けて来ながら、私の覚悟を計っている、ような感じだ。
 「でもね、時には夫婦もやるんだよ」
 「え、どう言う意味ですか」
 「疑似夫婦さ」
 「疑似夫婦?」
 「そう。愛人、セックスフレンドだとしても付き合いが長くなればマンネリが生まれてくるだろ。だから新しい刺激を探したんだよ」
 「あぁ、それが…」
 「そう、その彼女と二人で夫婦として色んな所に顔を出したり、呼んだりネ」
 「それは…」と聞きかけてゴクッと息を飲み込んだ。先生の目が据わって見えたのだ。
 その先生がこちらに向かって顎をしゃくる。もっと飲めと云っているのか、私は慌ててグラスを口に運ぶ。


 「長い事教師をやってるとね、色んな人に会ったり色んな噂を聞いたりするんだよ」
 「………」
 「君は知ってるかな…悩みを抱える教師やお堅い職業の人達を相手に、コーディネートをしてる人がいてね。悩み多き人達がストレスから性犯罪なんかを犯さないように、解放出来る場所を用意したり、解放出来るシチュエーションを作ったりしてくれるんだ」
 「ああっ!」そんな事が…と云おうとしたが、口が開かなかった。それでも頭の中には、“ある人“の顔を浮かべていた。
 「まぁ僕も…と言うか僕達も縁があって、たまに世話になるんだけどね」
 「………」
 「とまぁ、それだけ我々教師連中は病的なストレスに犯されているという事だよ。それで半年ほど前、君の奥さん、久美子君から相談のメールを貰った時も直ぐにピンときたんだ。彼女も恐らく、病的なストレスを抱えてるってね。でも、悩みは彼女自身の事だけじゃなかったんだよね」と先生が口元を歪めた。
 私は遂に来たかと、身構えてしまう。
 「そう、久美子君の相談のメインは、君の事だったんだよ」
 「あぁ…」
 「彼女も話しずらかったと思う。だから僕の方から聞いてみたんだよ」
 「そ、それはどんな風にでしょうか…」
 「ああ、『ひょっとして、寺田君が性的な事件でも起こしそうなのかい?』って」
 「ああっ!」
 「ふふっ、その時の久美子君も今の君みたいな反応だったよ」
 あうッ、思わず今度は、背筋が伸びてしまう。
 「図星みたいな様子だったから『じゃあ、家にパソコンがあるなら1度ネットの履歴が見れないか試してごらん』って云ってみたわけさ」
 「………」
 「そう、それで久美子君は視たんだな。もちろん君自身もシッカリ記憶にあるやつをだね」
 ああっ!。


 「ふふふ。それでね、僕の娘のストーカー騒動の事で頻繁に連絡を取るようになってたんで、そのネット履歴の報告を聞く機会を改まって設けたんだ。じっくり聞かせて貰おうと思ってね」
 「あぁ、そんな事が…」
 「ああ、そうだよ。それで君の性癖も知る事になってね、久美子君にはこう告(い)ったんだ『ご主人…寺田君に付き合ってあげろ。おそらく彼の悩みは半端なものじゃない。間違いを起こして世間から後ろ指を指される前に、君も彼の性癖に寄りそってやれ』とね」
 「そうだったんですか!」
 「だけど久美子君は、ずっと戸惑ってる様子だったな。だから君の方に態度として現れたのは、最近じゃないのかな。思い当たる事はないかい?」
 あッと、見事に日曜の一夜の出来事が浮かんできた。そして、妻に最後の一押しをしたのはあの日の昼間、この店で秋葉先生と会ったからに違いない、と思えた。
 「ふふっ、どうやら身に覚えがあるみたいだね。それは大いに結構な事だよ」と口にして、先生がウンウンと頷いている。
 「まぁ僕としたら時間が掛かったと思ったけどね。と言うのも、久美子君がそのネット履歴の話を初めて僕にした時から、彼女自身も興味は持っていたみたいだからね」
 「きょ、興味を、妻が…ですか…。その興味って…」
 「んん、決まってるじゃないか、性的好奇心ってやつだよ」
 「ああッ!!」
 「そう、それで久美子君には色々とな…ふふふ」
 「い、色々とは…」
 「んん、まあ生徒に教えるのと同じ云い方をするなら“社会体験”ってところかな」
 「え!その社会体験って…」
 「ふふ、その詳しい内容を話すには飲みが足りないな。勿論、僕もだけど」
 と告げた先生が立ち上がって、カウンターの中へと進んでいく。新しいビールでも取りに行くのだろうか。


 先生は直ぐに戻ってきた。手にはよく見る栄養ドリンクの小瓶が2本。
 「これはね、実は中身は違うんだよ」と、手に持った小瓶を顔の前で振って「ブレンドなんだよね」と目を向けてきた。
 「ブ、ブレンド?」
 「あぁ、非合法のね」
 「ええっ!」
 「とは云っても、人体にはさほど影響はない。一時的に夢を見るだけだよ」
 「ほ、本当ですか」
 「ああ、この中身は“神華の雫(シンカノシズク)”といって一種の精力剤、それに興奮剤を少し混ぜて薄めたやつなんだ」
 「せ、先生は…」何故そんな物を…と続けようとしたが、口が動かなかった。
 「なんだ、びっくりしてるのかい。こんなのは普通の栄養ドリンクとそんなに変わらないさ。勿論、女性だって飲める物だよ」
 「ま、まさかソレを…」
 「ふふふ…」
 先生の笑いに身体がゾクゾクと震えて来た。あぁ…私は何か過ちを犯そうとしているのだろうか…。
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 妻との衝撃的な一夜を過ごしてから、4日が経った。
 その4日間の中には、清々しい朝を迎える事が出来た日もあった。それは決まって、前日の夜に久美子が再び“妻の一人語り”をしてくれた時だった。
 その時の妻は、少しばかりの酒を呑んで、アルコールの力も借りながら私のエロ履歴にあった変態女を演じてくれるのだった。
 私は自分のエロ履歴を視られていた事が、結果的にはケガの功名となって、思わぬ恩恵を受けるようになったわけだ。
 とは言っても私の真面目な性格は“歳の差夫婦”の奈美子さんとセックスしてしまった負い目を忘れる事はなかった。


 それともう一つ気になっている事があった。
 妻が先日の日曜、M駅の【BAR 白昼夢】で、秋葉先生に相談をしたその詳しい内容だ。
 妻はどこまで私の変態気質を教えたのだろうか。秋葉先生に限って、私が変態である事を世間に吹聴するとは思えないが、小心者の私はやはり恐いのだ。妻から秋葉先生の不倫事実と、その“プレイ”の内容も少しは知ったつもりだったが、それもどこまで本当かは分からない。
 この数日間、妻と床を一緒にした時も、私は心の何処かに小骨が刺さった気持ちでいたのだった。


 金曜日。考えた末、私は秋葉先生と会って直接話しをしてみようと決めた。
 早速昼休みに知り合いの教師仲間達に、メールで秋葉先生の連絡先を尋ねてみた。私の記憶が正しければ、先生は隣町の中学で教頭の職に就いている筈だったが、直接学校に電話するのは控える事にしていた。
 妻に聞けば携帯番号やメールアドレスも分かるのだろうが、やはり彼女には聞きづらかったのだ。
 そしてその日の夕方、予期せぬ事に先生本人からショートメールが来たのだった。


 《寺田君
 ご無沙汰しています。
 僕の連絡先を探していたみたいですね。
 急ぎの用件でも出来たのかな。
 僕の方は明日明後日のどちらかなら時間はとれるから、よかったら連絡してみて下さい。
 では。      秋葉洋司》


 私は暫し、そのメールを何度か読み返した。
 私からのメールを受け取った誰かが、先生に直接私の携帯番号を教えたのだろうが、今更そこを追求する気はなかった。それよりも緊張が先に立つ自分だった。いざ会った時には、どういう風に話しを切り出そうか。
 と考えても、今のところ作戦などは思いつかない。こちらも先生の弱みーー不倫事実に変態気質を知っているのだからと自分に言い聞かせていた。
 おそらく先生の方は、私が妻の久美子から連絡先を聞かなかった事に疑念を持った筈だ。私はそれなりに考えて返信を送る事にした。


 《秋葉先生
 寺田です。ご無沙汰しております。
 実は妻の事で相談したい事があります。
 明日の土曜日か日曜日、どちらでも構いませんのでお時間を頂けませんでしょうか。
 詳しい事は会った時にお話ししたいと思います。
 よろしくお願いいたします》


 目的を“妻の事”とした事で、先生からも妻にこの件が伝わる事はないだろうと自分を納得させていた。
 やがて返信が来た。


 《承知しました。
 では、明日の土曜日13時にM駅の北口改札で待ち合わせましょう》


 M駅とあった事には多少の驚きと同時に、やはりと言うどこか納得の気持ちが生まれていた。
 私はこの日の夜は“妻の一人語り”を聞く事もなく、明日の事を考えながら眠りについたのだったーー。


 ーー土曜日。
 今朝も比較的気持ちよく朝を迎える事が出来た私だった。
 顔を洗いリビングへと向かって、妻に「おはよう」と声を投げ掛けた。
 久美子はいつも通りに家事をしていた。返って来た「おはようございます」の声にも明るい響きが含まれていた。


 妻の手が一休みした時だ。
 「あのさぁ久美子の今日の予定は?僕の方は、また古本屋に行くつもりなんだよね」と若干声が震えた気がしたが、何とか言葉にしていた。
 「そうですねぇ、アタシの方は」と云いかけたところで「あ、ひょっとして奈美子さんと体操教室?」と割って尋ねてしまった。


 「は、はい、その予定です。でも、奈美子はお休みなんで一人で…」
 何処と無く緊張を感じる妻の言葉だったが、私はシッカリと頷き返していた。その私に彼女が続ける。
 「でも、午前中は家にいます。実は仕事が溜まってて持ち帰ってるんです。だから家で」
 その言葉にも私は頷いていた。最近では教師が持ち帰った書類等を紛失する事が何度とあって、極力事務仕事は学校内で済ますようにと御用達のある学校が増えているらしい。しかし、私や妻が勤める学校はその点、少し緩かったのだ。
 私はもう一度頷き「頑張って」と声を掛けていた。


 昼前になると少し早いが家を出た。仕事をしてる妻に昼食の用意をしてもらうのも申し訳なく、外で食べようと思っていたのだ。
 家からM駅までは乗り継ぎがスムーズに行けば1時間ほど。この日も問題なく目的地に着く事が出来た。


 改札を出て、北口でラーメンでもと足が向きかけた私だったが、何故か気持ちは南口の方に惹かれていた。
 やはり“悪“の魅力に取り込まれていたのか、フラフラとした足取りは南口のエスカレータに向かったのだった。
 ロータリーに降りてスマホで確認すれば、約束の13時まではまだ余裕がある。私は何時かのように、この辺りを探索する事にした。


 少し歩けば、神田先生の事務所のある古い雑居ビルの前にやって来た。
 事務所といっても、中にはマジックミラーの部屋があって、そこを病的な趣向の持主達に時間貸しをしたりしているのだ。その利用者の大半は恐らく、教員達なのだろう。こうしている間にも、訳ありのカップルがビルに入って行くのではないかと奇妙な緊張を感じていた。帽子にサングラス、それに何時かの私のように変な髪型の人はいないか。私はそんな事を気にしながら暫くそこに立っていたのだ。


 ふと気づけば、一人歩きの女性の姿が目に付く。歳は妻と同じく位かもう少し上か、いわゆる熟女の部類に入る人達だ。
 あぁ、ひょっとしてこの女性は人妻売春を…と思ったところで、記憶の中から何時かの女店主の言葉が甦って来た。


 ーーみんな訳ありだけど…。
 ーー家に帰れば普通の主婦だし。
 ーー倦怠期の…あっちの方だって凄いのよ。
 ーー旦那にやった事のないサービスだって…。


 ゴクリ、私は知らずに唾を飲み込んでいた。その目の前を又、人妻風の女性が通り過ぎて行く。しかし、その女性は隣の体操教室があるビルに入って行った。そう、ここにジッといたら妻が教室にやって来てしまう。古本屋に行ったはずの私がいたら、おかしな事になる。
 と、その時グウっと腹が鳴った。丁度よい頃合いだ。今のうちに腹を満たしておくのだ。
 駅の方に踵を返せば、あの店の事が浮かんでいた。例の女店主がいる店だ。妻との遭遇を考えれば北口に行くべきだろうが、私は恐いもの見たさで、もう一度その店に行く事にした。


 今日のその店は、それなりの混み具合だった。女店主の姿はあったが、流石に客の対応で忙しそうだ。
 私は手っ取り早く済まそうと、土曜日もやってるランチを注文した。
 頼んだ定食がきたところで、改まって客の様子を探る。今日は多種多様な客層だ。若いカップルに中年カップル、一人でドリンクを飲んでる中年女性がいれば、それを見詰める私のような中年男もいる。流石に家族連れの姿は見受けられない。


 食べ終わって、食後のコーヒーに口を付けながら時間を確認する。あと少ししたら、ここを出発しよう。そう思いながら、窓の外を眺めてみた。視界に映るのは朽ち果てた感じのビル群だ。
 あれらのビルの中では、どんな人間模様が織り成されているのだろうか。当然、性的な行いも絡んでいる筈だ。
 そんな事を考えながら外を見ていると、あの夜のマジックミラーの部屋の様子を思い出した。
 ヤモリみたいに裸体をガラス窓に貼り着けて揺すっていた女ーー “歳の差夫婦”の奈美子さんの姿は衝撃的だった。あれが私と同じ教師と知っていたから、尚更その衝撃は強烈だった。あの女性が職業的売春婦だったら、あそこまでの驚きはなかった筈では、とも考えてしまう。
 そして、未だに私はあれが妻の久美子だったらと妄想してしまう時がある。そしてそんな時は、きまってアソコが硬くなっているのだった。
 あぁ、私はやっぱり生粋の変態男だ。
 いや…。
 それでも…。
 これから会う秋葉先生にだって、それなりの変態性癖があるのだ。と、期待している私がいる。
 先生は、妻の友人の奈美子さんを実際のところ…どんな風に…調教しているのだろうか…と、無意識に二人の関係を妄想しようとしている。
 あぁ、秋葉先生との話はどんな風になるのだろうか、武者震いが湧いて仕方がない。
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私の目の前、秋葉先生がようやくウンウンと頷いた。
 そして「黒子だけど、奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ」
 「!…」
 「だけどね、ふふっ、たまにシールを貼る事があるんだ」
 「シール?」
 「ああ、そうだよ、シールだ」
 「何故シールなんかを」
 「んっ、それは久美子君の耳たぶの下にあるからだよ、黒子が」
 「えっ、どういう意味ですか」
 「実はね、以前に久美子君と同じ勤務先になった時期があっただろ」
 「ああ、それは私も聞いています」
 「うむ、その頃、僕と久美子君は言わば上司と部下の関係で、色々と指導していたわけだ。そのうちに僕の方が、彼女に対して好意を持つようになってな」
 「え、それって」
 「ああ、分かり易く言えば、久美子君と犯(や)りたくなったわけだよ」
 「ええっ!」
 「それでも中々上手くいかず、いずれ僕が別の学校に転勤になったんだ」
 「………」
 「その後は会う機会もなくなって、疎遠になっていったわけだよ。そんな時、当時の勤め先に赴任して来たのが奈美子だ。初めて見た時に、ずいぶん久美子君と似てると思ってな。その事を奈美子と親しくなった時にポロっと云ったんだ。奈美子もそれが直ぐに久美子君と分かってな。聞けば同じ大学を出ていて、仲も良かったと言うから更にビックリだよ」
 「そんな事があったんですか」
 「ああ、それから僕と奈美子は親密な関係になって行くわけだが、ある時に、久美子君の耳たぶの下に黒子があった事を何故か覚えていてね、それを思い出したんだ。奈美子にも訊いてみれば、親友の黒子をよく覚えていてね。それで暫くして、奈美子にお願いしたんだ」
 「そ、それは何を?」
 「うん、黒子を付けてくれと。久美子君と同じ所にシールでいいから付けてみてくれないかとね」
 「あぁ…」
 「そう、僕は正直に告(い)ったよ。前から久美子君と一度オマンコしてみたいと思ってたんだ、ってね」
 「あッ!」
 「奈美子は特に驚く事もなくてね。と言うのも、その頃の僕達は互いに変態度を認めあってて、性癖をカミングアウトしあってたから、奈美子も理解を示してくれたわけだよ」
 「せ、先生に、そんな癖が…」
 「ああ、そうだよ。今の君なら聞ける話だろ」
 「ああ、はい」
 「ふふっ、それだけでも薬の効果があったかな」
 「ああっ」
 「そう、それで髪型も久美子君に似させて、時に黒子のシールを貼って貰って、奈美子に久美子君を演じて貰ったわけだよ。それにしても、今のシールは精巧に出来てるね。僕はその黒子を意識しながら奈美子を久美子君と思って、これまで頭の中だけでしか犯(や)れなかった事をたっぷりやったんだよ」
 「な、奈美子さんはそんな…扱いといいますか、それを受け入れたんですか…」
 「だから、奈美子もストレスの塊だったんだよ」
 「ああッ!」
 「そう、教師特有の病的なストレスに蝕まれたから…いや、蝕れないように、精神の開放を性的開放に委ねたんだよ」
 「アアアッッ、ウウウッ」
 「そしてある時、久美子君から君の相談を貰って、それを切っ掛けに会うようになってね。背景には奈美子が僕への相談を促した、と言う事もあるんだけどな」
 「………」
 「そう、それに娘のストーカー被害が発覚して、それを久美子君に相談したりもしたんで、余計に会う機会が増えてね。久美子君自身も凄いストレスを抱えてるのは分かっていたから、解消の手伝いをしてやろうと思ってね」
 「そ、それって」
 「ん、もう分かっているだろ。奈美子と相談してマンションに呼ぶようになったんだよ」
 「あぁ、奈美子さんと夫婦として借りてるマンションですか」
 「覚えていたね。そう、そこでさっきも云った変態プレイの協力をして貰ったよ」
 「………」
 「ん、どうだね?」
 「あ、あの…それで先生は、く、久美子とはセックスまでいったんでしょうか…」
 「それはさっきも云ったじゃないか」
 「あ、あぁ…そうでしたか。けど、ハッキリしないんですよ頭の中が。先生の話なのか自分の妄想なのかが。思い出そうとしても…そう、ひょっとしたら、全ては白昼夢ではないかと…」
 「………」
 「………」
 「…じゃあ、どっちが良い?」
 「え!どっちと言いますと…」
 「ん、だから久美子君とセックスした方が良かったのか不味かったのか」
 「そ、それは…」
 「ふふふ、いや、悪い悪い。久美子君とはまだ犯(や)ってないから大丈夫だよ」
 「………」
 「逆に聞くけど、君は奥さん以外の“誰か“と浮気…セックスをした事はないのかい?」
 「あうッ!」
 その一言に、身体の中を電流が走り抜けた。


 「んっ、どうした、大丈夫かい?」
 「あ、あの…実は1度だけ」
 「ふふっ、分かってるって」
 「えっ!」
 「ああ、君は何時だったか◯◯町の◯◯ホテルに行った事があるだろ」
 その言葉に、一瞬にして電流が流れたように背筋が伸びてしまった。
 「ロビーをこっそり見ていたら、変な髪型をした男性を見つけてね。本人は上手く化けたつもりかもしれなかったが、僕には直ぐに分ったよ」
 あぁ、あの時…。
 そして、やはり「先生と奈美子さんだったんですね“歳の差夫婦”って…」
 「ん、歳の差…?」
 「あ、いや…」
 「確かに、僕と奈美子は一回り以上の“歳の差”があるが?」
 「いえ、それはこちらの事でして…はい」
 私の聞き取れないような小さな声にも、先生は特に興味を示すような事はなかった。


 「あの…確かに私は“ある人”を通して誘いを受け、そのホテルに行きました。そこで」
 「ああ、分かっているよ。僕もまさか寺田君が現れるとは思っていなかったから、その時は凄くビックリしたよ。同時に恐ろしい偶然があるものだと2度ビックリしたね」
 「本当に仰る通りです」
 「しかし狭い世界だから、共通の知り合いがいてもおかしくはないよね」
 「はい…」
 頭の中には、渋谷君や神田先生の顔が浮かんでいた。考えてみれば、彼等の仕事の範囲もある程度は決まっている筈なのだ。まして体験者によって紹介が生まれるのだろうから、自ずと狭い世界での出会いになってしまう。


 コホン、先生の咳払いがした。私は改めて先生の顔を見つめる。
 「それで、君は奈美子を抱いたわけだ。だから僕も、堂々と久美子君をね。どうだい“ご主人”」
 「あぁ…」
 私には先に奈美子さんとセックスしてしまった負い目がある。それに、妻を寝取られたいという願望もある。そう、今ならハッキリそれが自覚できるのだ。
 しかし…。
 「あのぉ、先生」
 「ん、なんだね?」
 「やっぱり、その、無理そうです…」
 「………」
 先生は私は暫く見詰めた後、フーっと大きく息を吐き出した。そしてニコリと笑った。
 「そうか。それは仕方ないなぁ」
 「す、すいません」
 「いや、気にする事なんか何もないよ」
 「………」
 「君の方は、最近になって久美子君との仲が良い方向に向かってるみたいだしね」
 先生の言葉に、私は無意識に頷いていた。そうなのだ。先だっての日曜日から、久美子の“一人語り”によって私の欲求は満たされつつあるのだ。同時に妻の精神も開放されてると実感する事が出来ているのだ。奈美子さんとセックスした負い目はあるわけだが、その秘密を内に秘めるのも快感の一種と考えよう。私は自分の思考を上手くコントロールしようとしていたのだ。


 先生との会話はその後、世間のニュースや職場の話題に変わり、いたって健康的な時間となっていった。不思議なもので、陰湿な空気が流れていたこの店の雰囲気も、開店を待つ有りふれた酒場の一つに思えていた。
 そして、頃合いを見計らった時だった。
 「秋葉先生、ではそろそろ」と腰を浮かせようとした。
 先生の方も、引き留める素振りを見せる事もなく、あっさりとお別れの挨拶となったのだった。
 「じゃあ寺田君、また何かあればね」
 先生は最後に、ウインクまでみせていた。その表情(かお)は、年甲斐もなくお茶目な一面を浮かべていた。


 先生が店のドアを開けてくれて、私は陽の高い世間へと歩み出た。その時だ。
 「そうだ。久美子君の事だけど」
 その言葉に、一瞬緊張が走った。
 「奈美子が今まで通り、お茶会なんかに誘うのは許しておくれ」
 私は笑みを作ろうと試みながら頷く。
 「僕から久美子君を誘う事は、もうないからね」
 「は、はい」と私は畏まった。
 「でも、久美子君の方から“僕達夫婦“に新たな相談でもあったら…ふふふ」
 「………」
 先生がまだ何か云いたそうに見えた私だったが、その会話を自ら打ち消すように、先生はニコリと微笑んでドアを閉めたのだった。
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 BAR白昼夢ーー。
 目の前、秋葉先生が手に持つ小瓶を、私はジッと見ていた。ソレは確かに、栄養ドリンクの瓶にしか見えなかったが、中身は『シンカノシズク』と言う精力剤の一種だとか。


 「どうしたんだね、心配かい?」と、先生が真顔で訊いてくる。
 「え、ええ、あまり聞いた事のない物ですから」
 「ふふっ、まぁ仕方がない。でも、僕達もたまに世話になるけど、後遺症とかは全くないよ。依存する事もないしね」
 「本当ですか」
 「ああ、勿論だよ」


 「先生はソレを、奈美子さ…」と云ってしまったところで、慌てて口を抑えた。
 一瞬、先生の目が光った気がした。
 「…そうか。フムフム、久美子君から聞いたんだね」
 先生の言葉に、私は「すいません」反射的に頭を下げている。
 「いや、いいよ。ただし、他では彼女の名前は出さないように気をつけておくれよ。特に教師連中の間ではね」
 「は、はい、それは勿論です。それに、そんな事を私が吹聴したって分かったら、私の方だって…」
 「そうだな、君の変態性癖が世間にね…それに、君の奥さんの久美子君が変態マゾ女って事もね…」
 「ええっ!!つ、妻がマゾ…女ですって!」
 「ふふふ」
 「せ、先生、それは一体どういう…」
 「聞きたいかい?気になるよね。でも、聞くには…」と、先生が又も小瓶を振っている。やはり“ソレ”を飲まないと聞けないような話なのか。


 「少し飲んでみるかい、勇気を出して。僕も付き合うからさ」
 先生は云うなり、1本のキャップを開けはじめた。
 開いたところでもう1本のキャップも開けて、私に向けて来た。私はそれを恐々と受け取った。
 「じゃあ、もう一度乾杯だ」
 カチリと小さな音がすると、先生はあっさり、というか手本を示すように飲み干した。そして、視線で私に勧めてくる。
 私はゴクリと息を飲むと口をつけ…そして一気に飲み込んだ。


 喉を通った感触は確かに栄養ドリンクか。覚悟していたほどの刺激は全くない。そんな私の様子を見てか「寺田君、どうだい何もないだろ」と先生が笑っている。
 「では、話に戻ろうか。ええっと、何の話をしていたんだっけ、寺田君」
 如何にもの教師の口調に聞こえて、一瞬生徒の気分になった気がした。
 「え~っと、久美子の、しゃ、社会体験のところでした」と告げた瞬間、視線の端で小さな光が瞬いた。その光の流れを追い掛けると、それは天に昇り、光の雫となって降ってきた。
 あぁ…雫…コレが神華の雫か…。


 「寺田君」
 声に前を向き直れば、優しそうな先生の顔だ。
 「そう社会体験、な~んて堅苦しい話じゃなくて、久美子君がオマンコを濡らす話だよ」
 「アーーーッ、そ、そうでした!それを聞きたかったんでシュよ」と声が変だ、と思ったが気にならなかった。それどころか、背中の後ろからモワモワと高鳴りが湧いてきた。
 眼の前では、先生の口がパクパク開いたり閉じたりしていた。口の中からは言葉が舞い上がって行くのが見える。
 その言葉は宙で文字となり、私の頭の中に降りて来た。


 ーー寺田く~ん、半年ほど前に久美子君から相談があったんだよ…。
 ーー彼女は君がストレスを抱えてると心配してたっけね~。
 ーー彼女自身も職場のストレス、夫の心配、彼女も疲れていたみたいだよ…。
 ーーだから機をみて、奈美子と夫婦として借りてるマンションに呼んであげたんだよね…。
 ーーそこで、僕達のセックスを見せてあげるって云ったら、驚いていたよ…。
 ーーでも、僕達は気にせず裸になったんだ…。
 ーー久美子君はどうしてそんな事が出来るのかと聞くから、夫婦だからと答えたよ…。
 ーー僕達の姿を見て、どうすれば寺田君に寄り添えるか考えてごらんって云ってね…。
 ーーそれから僕達は久美子君に撮影をお願いしたんだよ…。
 ーー僕と奈美子は色んな格好でシャブリあったり舐めあったりしたね。うん、見せつけるようにね…。
 ーー奈美子がアソコを拡げると、久美子君は撮影をしてくれてたね。おそらく、久美子君も自分のアソコを濡らしてたと想うよ…。


 ーー奈美子のヤツも最初の頃は他人に見せるなんてと恥ずかしがってたけど、あの薬のせいか、元々持ってた資質のせいか、大胆になってきてね。友達の前で平気で尻の穴まで見せていたよ…。
 ーー僕のアソコも異様に膨らんでね。ソレで奈美子をヒーヒーいわせてたよ…。
 ーー久美子君は時おり撮影を忘れて、僕達の絡みに魅入られる事があったね…。
 ーー僕達も調子に乗って、やった事のない体位を披露したよ…。
 ーー押し車って知ってるかい?後ろから挿入したまま歩くんだ。奈美子は四つ足で、僕は腰を前に突き出すようにしてね。久美子君もやってみたいと思ったんじゃないかな…。
 ーーそれと、僕のアレが奈美子のアソコに入っている所を近くから撮らせたりもしたね…。
 ーーその映像を、プレイの後に三人で視たりもしたね…。
 ーー他には仮面を着けてプレイしてるところを撮った日もあったね…。
 ーー久美子君もだんだんと慣れてきたけど、毎回生殺しで辛かったんじゃないかな…。
 ーーん、久美子君と僕が“本番“をやったかって?
 ーーフフフ、さぁそれはどうだろうか…。
 ーーまぁ、そうやって色々と妄想してるだけでも楽しいんじゃないかな…。


 ーーだけど、僕の勃(た)ちが悪くなってきてね。ふふっ、歳には勝てないって事だね…。
 ーーそんな時“あの人達“を知ってね、お願いに行ったんだよ…。
 ーー実際に相手をしてくれたのは若い人だったね…。
 ーーその彼とは色んなプレイをやったよ…。
 ーー僕の前で奈美子がその彼とプレイする処を見るのは刺激的だったな…。
 ーーその彼は日によって手を変え、品を変えて楽しませてくれたよ…。
 ーー僕自身にも新たな発見があったよ。自分の中にSとMが同居してるって分かったしね…んんっ!?。
 ーー寺田君!?


 「どうした寺田君?」
 「ヒッ、ヒィーーッ!ヒィーーッ!ヒィーーッ!」
 「おいっ、寺田君!」
 「………」


 頭の奥で、色んな顔が現われては消えていた…久美子、奈美子さん、秋葉先生、渋谷君、それと仮面の女…。
 と、誰かが私の名前を呼んでいる…。
 やがて、瞼がゆっくり開いていき…暗い天井が目に付いた。
 天井に“言葉”が、いくつか舞って見えた。それが今度は、黒い雫となって消えていく。あぁ… “黒子”のような雫だ。
 すると、身体が揺れている事に気が付いた「寺田君、大丈夫かい」先生が私の身体を揺すっていたのだ。


 私は2、3度頭を振って、ゆっくりと椅子の背もたれから身体を起こそうとした。
 「わ、私は一体…」
 「ああ、話を聞かせてたら、急に痙攣が起きたみたいに震え出したんだよ。…大丈夫かい」
 「は、はぁ…」
 「頭が痛いとか、気持ち悪いとかは?」
 「え、ええ、大丈夫みたいです」と口にしたが、頭はまだボォっとしている。
 「ちょっと待ってておくれ。冷たい水を持って来るから」
 そう告げて、先生がカウンターの中へと入って行った。その後ろ姿に、先生はあの“薬”を本当に飲んだのだろうか、そんな疑問が重い頭を横切った。
 私は瞬きをして、一度目を瞑った。
 目を閉じた私の耳に、ガチャガチャと氷の音が聞こえてきた。先生が製氷器から取り出しているのか。その音の合間をプチプチと“黒子”が弾け飛んでいる。


 やがて先生が戻って来て「寺田君、まだ、ボォっとしてるみたいだけど、本当に大丈夫?」と、水差しと氷の入ったグラスを置いてくれた。そして、波々と注いでくれる。私は頭を下げて、それを飲み干した。
 先生は私の様子を観(み)ながら「もう1杯くらい飲んでおこうか」と云って、空になったコップに注いできた。
 「これには何も入ってないからね」
 その言葉にむせ返りそうになりながらも、続けて飲み干してみた。
 胃の奥に水が染み渡って暫くすると、身体が熱くなってきた。そして、額の辺りから汗が吹き出る感触を覚えた。
 「発汗が来たら、スッキリすると思うよ」と、先生が頷いている。


 「でも寺田君、今日はこの辺で止めておこうか」
 「いや…あの、実は黒子が」
 「黒子!?」
 「はぁ、そうなんです、黒子なんです。さっき黒子が降って来たんですよ。それで…」
 先生は私を心配げにシゲシゲと覗きこんできた。それでも私の口は止まらなかった。
 「あのお…先生の彼女、奈美子さんの右の耳たぶの下に、黒子なんてありませんよねぇ」
 私自身も何故そんな質問を口にしたのか、理由など理解できなかった。先生を見れば、目が真ん丸と拡がっていた。初めて見る先生の表情(かお)かもしれない。


 「寺田君、君はやっぱり面白いところがあるなぁ」
 「あ、いや、すいません…」
 「………」
 「ま、不味かったでしょうか…」と言い掛けたところで「いや大丈夫だよ。うん、君はやっぱり面白い人だ」と呟きが聞こえた。
 私は先生のその顔を暫くの間、見詰めていたのだった。
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 待ち合わせの時間に遅れないようにと店を出た私ーー寺田達夫。
 約束の5分前、北口の1番大きな改札の前にやって来た。秋葉先生はまだ、来られていないようだ。
 暫く改札の中を見つめていると、向こうの方から記憶通りの姿がこちらにやって来るのが見えた。秋葉先生だ。
 目の前に来られた先生は相変わらず恰幅が良く、茶色いブレザーを着こなした姿は威厳に溢れていた。


 「やあ、寺田君、久しぶりだね」
 「ご、ご無沙汰してます。今日はよろしくお願いします」
 先生を前にすると、私の緊張は嫌でも高まっていく。
 先生の方は、私の表情(かお)を覗くや「ちょっと痩せたかな?けど、顔色は思ったほど悪くないね。お世辞にも良いとは云えないけど」と、リラックスした感じだ。
 それから、ふふふと口元を歪めて「君の顔を見ると、何だか今日の相談事の中身が分かる気がするよ」と目を細めて告げてこられた。
 こちらは顔を強張らせるだけだと言うのに。


 「じゃあ、秘密の話をするのに相応しい店があるからそこに行こうか」
 先生は笑みを浮かべながら、踵を返して歩き始めた。私はその後を追いかける。
 人の波をやり過ごしながらエスカレーターに向かい、そこを下れば覚えのある場所だった。先日、久美子と秋葉先生が落ち合った場所だ。先生はそこを通り過ぎると足を速めた。
 先生の横に肩を並べてチラリと横顔を覗く。微かに白髪が確認出来るが、皺も少なく肌の艶も良さそうだ。歳は私より一回以上も上なのに。


 「久美子君とは上手くいってないのかい?そんな事はないよね」
 いきなり向けられた質問にドキリとした。先生を見れば、口元がニヤついている。
 「く、久美子とは、そのまぁボチボチです…はい」
 「ボチボチか。と言う事は悪くないという事だな」と告げて、今度は朗らかな笑みを向けてきた。
 「君は久美子君と結婚してどのくらい経つのかな」
 「えっと10年以上は…」
 「ん、何だか頼りない言い方だな。でも夫婦ってそんなもんだよな」
 「………」
 歩きながら話す先生。それも思った以上に口が回る先生に、意外な気がしながらも緊張が少し解れる気がした。これはすんなり、色んな事が聞けるかもしれない。


 やがて覚えのある通りにやって来た。
 雰囲気は先だってと同じで、今日土曜日のこの時間帯も人が疎(まば)らな飲み屋街だ。
 先生が足を止めたのは、例の店【BAR 白昼夢】の前だった。
 先生は扉の前で一旦振り返って私を見た。その目が、ここでいいよな、と怪しく誘ってる気がして、身体が竦みそうになってしまった。
 「さあ、ここだよ。入ろうか」と落ち着いた声だ。
 私は先生の後ろ姿に引き込まれるように足を進めた。


 店の中は想像した通り、落ち着いた感じの造りだった。
 先生が照明のスイッチを入れれば、浮かび出たのはレトロな灯りだ。


 カウンターの中に入った先生が「さぁどこでもいいけど、そこがいいかな」と云って、二人掛けのボックス席を指さした。
 店は小さなボックス席が二つに、カウンターは5人でいっぱい。かなり小ぢんまりとした店だった。


 瓶ビールを取り出し、グラスの用意を始めた後ろ姿に「あのぉ今日は誰もいないんですか」と聞いてみた。
 「ああ、開くのは暗くなってからだからね。来るのはバーテンが一人で、その彼がいつも一人で切り盛りしてるよ」
 「あっそう言えば」そこで私は久美子から聞いた言葉を思い出した「この店って、先生の教え子さんがやってるとか…」
 「久美子君から聞いたんだね。そうだよ、かなり古い子なんだけどね。うん、その彼からここの鍵を借りたんだよ」
 先生はそう云いながら、盆を持ってこちら側に出てきた。


 小さなテーブルを挟んで向かい合った私達。
 「さぁいこうか」
 私がビール瓶を持った所で、先に先生が注いでこられた。私は恐縮しながらも頂く事にした。そして直ぐさま注ぎ返す。
 軽く乾杯したところで「今日は久美子君の事で相談だったよね」と、いきなりの本題だ。私は蒸せそうになりながら頷いている。
 「ふふっ、何となく内容も分かりそうな気がするけど、喋り辛くなったら云っておくれ。酒は色々あるからね」
 はぁ…と、頼りない返事をしてしまう私に「それに、腹を割れないなら、口を割らせる酒もあるからね」
 一瞬、先生が冗談を云ったのかと思ったが、意味は読み込めない。先生は早くも1杯目を飲み終わって、2杯目を口にするところだ。
 私も酒の力を借りてと、自分に言い聞かせながらグラスの残りを一気に呑みほした。
 そして「秋葉先生、あのですね、妻の久美子から私の事で何か相談とか愚痴とか聞いてらっしゃいませんか」と、一息で口にした。そう、今日の相談とは言ってみればこれだけの事なのだ。
 先生はグラスを置くと口元に笑みを浮かべた。
 「ふふふ、聞いてるよ。聞いてるとも、君の事は色々とね」
 その声の響きに、背筋がキュッと硬くなっていった。


 「じゃあ、どこからか話そうか…そうだなぁ」
 先生が呟きながら、その目は私を甚振る目ではないのか。
 「でも、その前に僕自身の事を少し話そうかな。その方が君もこの後の話が聞きやすいと思うしね」
 あぁ…それはどう言う意味だ…。やはりこれは、飲まないと聞けない話なのか。
 そして私はもう一杯、手酌で注いで飲み干してみせた。


 「ふふっ、いい飲みっぷりだ」
 「………」
 「そう、君も既に知ってると思うが、僕は何年も前に離婚していて、今は独身なんだ。久美子君の世話になった娘は、別れた女房と一緒に暮らしているし、僕は一人暮らしなわけだよ」
 「はぁ…」そうですね、と心の中で応える。
 「だけどね、君にだから教えておくけど、実は恋人がいるんだ」
 え!っと驚いてみせた。が、その事実は妻から訊いている。
 先生は私の表情など気にせず、グラスを口に運んでいる。


 「恋人といったって子供じゃあるまいし分かるよね、それがどんな関係か」
 「は、はぁ」またも頼りない返事だ。
 「ふふっ、まぁ愛人とかセックスフレンドといった方が分かり易いよね」
 ううッ、改まってそんな言葉をぶつけられると萎縮してしまう。
 「どう?こんな話も聞きたいだろ」先生がビール瓶を向けて来ながら、私の覚悟を計っている、ような感じだ。
 「でもね、時には夫婦もやるんだよ」
 「え、どう言う意味ですか」
 「疑似夫婦さ」
 「疑似夫婦?」
 「そう。愛人、セックスフレンドだとしても付き合いが長くなればマンネリが生まれてくるだろ。だから新しい刺激を探したんだよ」
 「あぁ、それが…」
 「そう、その彼女と二人で夫婦として色んな所に顔を出したり、呼んだりネ」
 「それは…」と聞きかけてゴクッと息を飲み込んだ。先生の目が据わって見えたのだ。
 その先生がこちらに向かって顎をしゃくる。もっと飲めと云っているのか、私は慌ててグラスを口に運ぶ。


 「長い事教師をやってるとね、色んな人に会ったり色んな噂を聞いたりするんだよ」
 「………」
 「君は知ってるかな…悩みを抱える教師やお堅い職業の人達を相手に、コーディネートをしてる人がいてね。悩み多き人達がストレスから性犯罪なんかを犯さないように、解放出来る場所を用意したり、解放出来るシチュエーションを作ったりしてくれるんだ」
 「ああっ!」そんな事が…と云おうとしたが、口が開かなかった。それでも頭の中には、“ある人“の顔を浮かべていた。
 「まぁ僕も…と言うか僕達も縁があって、たまに世話になるんだけどね」
 「………」
 「とまぁ、それだけ我々教師連中は病的なストレスに犯されているという事だよ。それで半年ほど前、君の奥さん、久美子君から相談のメールを貰った時も直ぐにピンときたんだ。彼女も恐らく、病的なストレスを抱えてるってね。でも、悩みは彼女自身の事だけじゃなかったんだよね」と先生が口元を歪めた。
 私は遂に来たかと、身構えてしまう。
 「そう、久美子君の相談のメインは、君の事だったんだよ」
 「あぁ…」
 「彼女も話しずらかったと思う。だから僕の方から聞いてみたんだよ」
 「そ、それはどんな風にでしょうか…」
 「ああ、『ひょっとして、寺田君が性的な事件でも起こしそうなのかい?』って」
 「ああっ!」
 「ふふっ、その時の久美子君も今の君みたいな反応だったよ」
 あうッ、思わず今度は、背筋が伸びてしまう。
 「図星みたいな様子だったから『じゃあ、家にパソコンがあるなら1度ネットの履歴が見れないか試してごらん』って云ってみたわけさ」
 「………」
 「そう、それで久美子君は視たんだな。もちろん君自身もシッカリ記憶にあるやつをだね」
 ああっ!。


 「ふふふ。それでね、僕の娘のストーカー騒動の事で頻繁に連絡を取るようになってたんで、そのネット履歴の報告を聞く機会を改まって設けたんだ。じっくり聞かせて貰おうと思ってね」
 「あぁ、そんな事が…」
 「ああ、そうだよ。それで君の性癖も知る事になってね、久美子君にはこう告(い)ったんだ『ご主人…寺田君に付き合ってあげろ。おそらく彼の悩みは半端なものじゃない。間違いを起こして世間から後ろ指を指される前に、君も彼の性癖に寄りそってやれ』とね」
 「そうだったんですか!」
 「だけど久美子君は、ずっと戸惑ってる様子だったな。だから君の方に態度として現れたのは、最近じゃないのかな。思い当たる事はないかい?」
 あッと、見事に日曜の一夜の出来事が浮かんできた。そして、妻に最後の一押しをしたのはあの日の昼間、この店で秋葉先生と会ったからに違いない、と思えた。
 「ふふっ、どうやら身に覚えがあるみたいだね。それは大いに結構な事だよ」と口にして、先生がウンウンと頷いている。
 「まぁ僕としたら時間が掛かったと思ったけどね。と言うのも、久美子君がそのネット履歴の話を初めて僕にした時から、彼女自身も興味は持っていたみたいだからね」
 「きょ、興味を、妻が…ですか…。その興味って…」
 「んん、決まってるじゃないか、性的好奇心ってやつだよ」
 「ああッ!!」
 「そう、それで久美子君には色々とな…ふふふ」
 「い、色々とは…」
 「んん、まあ生徒に教えるのと同じ云い方をするなら“社会体験”ってところかな」
 「え!その社会体験って…」
 「ふふ、その詳しい内容を話すには飲みが足りないな。勿論、僕もだけど」
 と告げた先生が立ち上がって、カウンターの中へと進んでいく。新しいビールでも取りに行くのだろうか。


 先生は直ぐに戻ってきた。手にはよく見る栄養ドリンクの小瓶が2本。
 「これはね、実は中身は違うんだよ」と、手に持った小瓶を顔の前で振って「ブレンドなんだよね」と目を向けてきた。
 「ブ、ブレンド?」
 「あぁ、非合法のね」
 「ええっ!」
 「とは云っても、人体にはさほど影響はない。一時的に夢を見るだけだよ」
 「ほ、本当ですか」
 「ああ、この中身は“神華の雫(シンカノシズク)”といって一種の精力剤、それに興奮剤を少し混ぜて薄めたやつなんだ」
 「せ、先生は…」何故そんな物を…と続けようとしたが、口が動かなかった。
 「なんだ、びっくりしてるのかい。こんなのは普通の栄養ドリンクとそんなに変わらないさ。勿論、女性だって飲める物だよ」
 「ま、まさかソレを…」
 「ふふふ…」
 先生の笑いに身体がゾクゾクと震えて来た。あぁ…私は何か過ちを犯そうとしているのだろうか…。
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 妻との衝撃的な一夜を過ごしてから、4日が経った。
 その4日間の中には、清々しい朝を迎える事が出来た日もあった。それは決まって、前日の夜に久美子が再び“妻の一人語り”をしてくれた時だった。
 その時の妻は、少しばかりの酒を呑んで、アルコールの力も借りながら私のエロ履歴にあった変態女を演じてくれるのだった。
 私は自分のエロ履歴を視られていた事が、結果的にはケガの功名となって、思わぬ恩恵を受けるようになったわけだ。
 とは言っても私の真面目な性格は“歳の差夫婦”の奈美子さんとセックスしてしまった負い目を忘れる事はなかった。


 それともう一つ気になっている事があった。
 妻が先日の日曜、M駅の【BAR 白昼夢】で、秋葉先生に相談をしたその詳しい内容だ。
 妻はどこまで私の変態気質を教えたのだろうか。秋葉先生に限って、私が変態である事を世間に吹聴するとは思えないが、小心者の私はやはり恐いのだ。妻から秋葉先生の不倫事実と、その“プレイ”の内容も少しは知ったつもりだったが、それもどこまで本当かは分からない。
 この数日間、妻と床を一緒にした時も、私は心の何処かに小骨が刺さった気持ちでいたのだった。


 金曜日。考えた末、私は秋葉先生と会って直接話しをしてみようと決めた。
 早速昼休みに知り合いの教師仲間達に、メールで秋葉先生の連絡先を尋ねてみた。私の記憶が正しければ、先生は隣町の中学で教頭の職に就いている筈だったが、直接学校に電話するのは控える事にしていた。
 妻に聞けば携帯番号やメールアドレスも分かるのだろうが、やはり彼女には聞きづらかったのだ。
 そしてその日の夕方、予期せぬ事に先生本人からショートメールが来たのだった。


 《寺田君
 ご無沙汰しています。
 僕の連絡先を探していたみたいですね。
 急ぎの用件でも出来たのかな。
 僕の方は明日明後日のどちらかなら時間はとれるから、よかったら連絡してみて下さい。
 では。      秋葉洋司》


 私は暫し、そのメールを何度か読み返した。
 私からのメールを受け取った誰かが、先生に直接私の携帯番号を教えたのだろうが、今更そこを追求する気はなかった。それよりも緊張が先に立つ自分だった。いざ会った時には、どういう風に話しを切り出そうか。
 と考えても、今のところ作戦などは思いつかない。こちらも先生の弱みーー不倫事実に変態気質を知っているのだからと自分に言い聞かせていた。
 おそらく先生の方は、私が妻の久美子から連絡先を聞かなかった事に疑念を持った筈だ。私はそれなりに考えて返信を送る事にした。


 《秋葉先生
 寺田です。ご無沙汰しております。
 実は妻の事で相談したい事があります。
 明日の土曜日か日曜日、どちらでも構いませんのでお時間を頂けませんでしょうか。
 詳しい事は会った時にお話ししたいと思います。
 よろしくお願いいたします》


 目的を“妻の事”とした事で、先生からも妻にこの件が伝わる事はないだろうと自分を納得させていた。
 やがて返信が来た。


 《承知しました。
 では、明日の土曜日13時にM駅の北口改札で待ち合わせましょう》


 M駅とあった事には多少の驚きと同時に、やはりと言うどこか納得の気持ちが生まれていた。
 私はこの日の夜は“妻の一人語り”を聞く事もなく、明日の事を考えながら眠りについたのだったーー。


 ーー土曜日。
 今朝も比較的気持ちよく朝を迎える事が出来た私だった。
 顔を洗いリビングへと向かって、妻に「おはよう」と声を投げ掛けた。
 久美子はいつも通りに家事をしていた。返って来た「おはようございます」の声にも明るい響きが含まれていた。


 妻の手が一休みした時だ。
 「あのさぁ久美子の今日の予定は?僕の方は、また古本屋に行くつもりなんだよね」と若干声が震えた気がしたが、何とか言葉にしていた。
 「そうですねぇ、アタシの方は」と云いかけたところで「あ、ひょっとして奈美子さんと体操教室?」と割って尋ねてしまった。


 「は、はい、その予定です。でも、奈美子はお休みなんで一人で…」
 何処と無く緊張を感じる妻の言葉だったが、私はシッカリと頷き返していた。その私に彼女が続ける。
 「でも、午前中は家にいます。実は仕事が溜まってて持ち帰ってるんです。だから家で」
 その言葉にも私は頷いていた。最近では教師が持ち帰った書類等を紛失する事が何度とあって、極力事務仕事は学校内で済ますようにと御用達のある学校が増えているらしい。しかし、私や妻が勤める学校はその点、少し緩かったのだ。
 私はもう一度頷き「頑張って」と声を掛けていた。


 昼前になると少し早いが家を出た。仕事をしてる妻に昼食の用意をしてもらうのも申し訳なく、外で食べようと思っていたのだ。
 家からM駅までは乗り継ぎがスムーズに行けば1時間ほど。この日も問題なく目的地に着く事が出来た。


 改札を出て、北口でラーメンでもと足が向きかけた私だったが、何故か気持ちは南口の方に惹かれていた。
 やはり“悪“の魅力に取り込まれていたのか、フラフラとした足取りは南口のエスカレータに向かったのだった。
 ロータリーに降りてスマホで確認すれば、約束の13時まではまだ余裕がある。私は何時かのように、この辺りを探索する事にした。


 少し歩けば、神田先生の事務所のある古い雑居ビルの前にやって来た。
 事務所といっても、中にはマジックミラーの部屋があって、そこを病的な趣向の持主達に時間貸しをしたりしているのだ。その利用者の大半は恐らく、教員達なのだろう。こうしている間にも、訳ありのカップルがビルに入って行くのではないかと奇妙な緊張を感じていた。帽子にサングラス、それに何時かの私のように変な髪型の人はいないか。私はそんな事を気にしながら暫くそこに立っていたのだ。


 ふと気づけば、一人歩きの女性の姿が目に付く。歳は妻と同じく位かもう少し上か、いわゆる熟女の部類に入る人達だ。
 あぁ、ひょっとしてこの女性は人妻売春を…と思ったところで、記憶の中から何時かの女店主の言葉が甦って来た。


 ーーみんな訳ありだけど…。
 ーー家に帰れば普通の主婦だし。
 ーー倦怠期の…あっちの方だって凄いのよ。
 ーー旦那にやった事のないサービスだって…。


 ゴクリ、私は知らずに唾を飲み込んでいた。その目の前を又、人妻風の女性が通り過ぎて行く。しかし、その女性は隣の体操教室があるビルに入って行った。そう、ここにジッといたら妻が教室にやって来てしまう。古本屋に行ったはずの私がいたら、おかしな事になる。
 と、その時グウっと腹が鳴った。丁度よい頃合いだ。今のうちに腹を満たしておくのだ。
 駅の方に踵を返せば、あの店の事が浮かんでいた。例の女店主がいる店だ。妻との遭遇を考えれば北口に行くべきだろうが、私は恐いもの見たさで、もう一度その店に行く事にした。


 今日のその店は、それなりの混み具合だった。女店主の姿はあったが、流石に客の対応で忙しそうだ。
 私は手っ取り早く済まそうと、土曜日もやってるランチを注文した。
 頼んだ定食がきたところで、改まって客の様子を探る。今日は多種多様な客層だ。若いカップルに中年カップル、一人でドリンクを飲んでる中年女性がいれば、それを見詰める私のような中年男もいる。流石に家族連れの姿は見受けられない。


 食べ終わって、食後のコーヒーに口を付けながら時間を確認する。あと少ししたら、ここを出発しよう。そう思いながら、窓の外を眺めてみた。視界に映るのは朽ち果てた感じのビル群だ。
 あれらのビルの中では、どんな人間模様が織り成されているのだろうか。当然、性的な行いも絡んでいる筈だ。
 そんな事を考えながら外を見ていると、あの夜のマジックミラーの部屋の様子を思い出した。
 ヤモリみたいに裸体をガラス窓に貼り着けて揺すっていた女ーー “歳の差夫婦”の奈美子さんの姿は衝撃的だった。あれが私と同じ教師と知っていたから、尚更その衝撃は強烈だった。あの女性が職業的売春婦だったら、あそこまでの驚きはなかった筈では、とも考えてしまう。
 そして、未だに私はあれが妻の久美子だったらと妄想してしまう時がある。そしてそんな時は、きまってアソコが硬くなっているのだった。
 あぁ、私はやっぱり生粋の変態男だ。
 いや…。
 それでも…。
 これから会う秋葉先生にだって、それなりの変態性癖があるのだ。と、期待している私がいる。
 先生は、妻の友人の奈美子さんを実際のところ…どんな風に…調教しているのだろうか…と、無意識に二人の関係を妄想しようとしている。
 あぁ、秋葉先生との話はどんな風になるのだろうか、武者震いが湧いて仕方がない。
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 妻の表情は薄闇の中ではよく分からなかった。しかし、その中から落ち着いた声がしてきた。
 「その子…実はそれが奈美子なんですよ」
 「ええっ!な、奈美子さんも教師だったの!」
 「はい。彼女は大学卒業後、一度一般企業に就職したのですが、やっぱり教師になりたいと辞めたんですね」
 「じゃあ、教職課程は取っていたのか」
 「はい、アタシと一緒に履修してました。因みに、隣同士で席に座っていると、よく双子に間違えられましたわ」
 「そうか、そんな事が…。それで、奈美子さんが教師をやりたいって思ったのも、久美子の影響なのかな?」
 「ん~どうでしょうか。アタシは職場の愚痴を結構聞かせてましたけど…」
 「それでも奈美子さんは…」
 「はい。それで試験に受かって、最初の採用が◯◯中学だったんです」
 「あ~あそこか。じゃあ、僕達も同じ職場になった事はないよな」
 「ええ、何度かニアミスといいますか、入れ違いになった事がありましたけどね」
 「なるほどね。それにしたって、その奈美子さんがどうして上司と不倫を…」
 と、在り来りの疑問が口に付いたが…。


 「それはさっき云った通りで、最初は教務を指導されつつ、次第に仲が良くなり、やがてと…。それと因みに、奈美子は一度も結婚した事がないんですよ」
 「ああ、そうなのか」
 「はい、そうなんです。それで、奈美子とは会えない時もメールで近況は教え合ったりしてましたし、相談にも乗ってましたから」
 「なるほど。それで、決定的な不倫関係になった時も、直ぐには分かったの?」
 「そうですね、わりとすんなりと。彼女も周りに相談とか出来る人が少なくて」
 「そうなんだよな、教師は世間が狭いし、それに誰にでも相談できる話じゃないしな」
 「仰る通りです。それで何度かお酒に付き合ってるうちに色々と…」
 「ああ、それがさっき久美子が云った話で、二人のその…プ、プレイの内容の事までも…」
 「え、ええ、そうですね、多少は…。でも、さっきの造り話には、あなたの…そのぉ、エッチな履歴からの想像がかなり入っていますわ」
 「ああっ!!」
 妻の言葉に一瞬、声を上げてしまった。
 彼女の先ほどの卑猥な表現や描写は、私の“癖”を見抜いて、脚色も加えてたと言うのか…。ああ…そうだ、そうなのだ!それに、いくら親友といっても、不倫相手との情痴の内容をあそこまで細かく描写して教えたとは考えずらい。まして女性同士が。
 あぁ…またも身体が落下して行く気分だ。


 「………」
 「あなた…どうしましたか」
 「い、いや、大丈夫だよ…」
 私は妻の声に、コホンと咳払いをした。
 「そ、それで奈美子さんの相手の男性はどんな人?まさか僕の知ってる人だったりして」
 と私が口にしたところで「はい実は」と、口ごもりながらの妻の返事だ。
 「あの…秋葉先生…なんです」
 「な、何だって!」身体が飛び上がるほどに驚いた。
 「ええ…そうなんですよ。秋葉先生なんです」


 唖然とした私の中に、ジワジワと先日バッタリ会った秋葉先生の顔が浮かび上がってきた。
 確か先生は…ああ、そうだ。秋葉先生は今は離婚しているのだ。
 「あのさぁ、秋葉先生はだいぶ前に離婚してたよね。それって…」
 「ええ、離婚されたと噂で聞いてましたが、その詳しいところは…」
 「でも、その噂は本当だったって事だものね」
 「はい、そうです。奈美子との事が引き金になったのは間違いないでしょうし、別れた奥様とは以前からも上手く行ってなかったようで…」
 流石にその辺りの詳しい状況までは、妻も知らないらしい。奈美子さんにしたって、あまり話したくはないだろうし。
 それにしてもだ。あの秋葉先生が奈美子さんを調教してる場面を想像しようとすると、人は見かけによらずと言うか得体の知れない興奮が湧いてくるようだ。


 その時、もう一つ気になる事を思い付いた。久美子と秋葉先生の事だ。
 妻は以前の教え子ーー秋葉先生の娘さんのストーカー対策を先生から相談され、解決に乗り出した。その時は勿論、奈美子さんの存在もあった筈だ。そして、探偵を使ってそれを解決した事が要因で私ーー寺田達夫の事を相談した…と、今夜の妻の説明だった。そう、妻がそこのパソコンの履歴から知ってしまった“夫”の変態的な性癖の相談も秋葉先生に…。


 「あなた…大丈夫ですか」
 暗がりから何ともしおらしい声ではないか。妻はその“しおらしい“声で、秋葉先生にどんな風に“夫”の相談を持ち掛けたのだろうか。先ほど口にしたような卑猥な表現をリアルに聞かせたのか。まさか自ら実演を!
 と思ったところで、股間がキュッと刺激を感じた。久美子が私のアレに力を加えたのだ。
 そして、私の下腹部へと身体を…いや、唇を持って行くではないか。
 股間のソレがぬるっと唾液に塗(まみ)れた途端、ううっと声が漏れてしまった。
 そして妻が、先ほどと同じように亀頭からカリ首までを舐めだした。
 私の口からはウウウッ、オオオッと早くも情けない呻き声が上がった。


 「あなたぁ…」
 唇を離した妻から再び、しおらしい声がした。彼女が私の腰に手を回してくる。そして私の身体を横向きに、それから犬の格好へと誘ってきた。
 私の身体は四つん這いに、妻の顔に尻を向けて畏まった。すると直ぐに、ソコがネチャっと拡げられた。あぁっ、久美子が私のアナルを、と思った瞬間、その中心にドリルのような…ううッ、これはアナル舐めではないか!
 しかし、それだけではなかった。股間の“ソレ”を握るとシゴキだしたのだ。
 暗がりの中にネチャネチャとアナルを抉る音と、時折りチュッチュッと金の袋に唇を這わす音が交互に聞こえてきた。硬くなった肉棒をシゴかれながらだ。


 私は意識が飛びそうになる合間に、妻のこの変貌を考えた。
 奈美子さんと秋葉先生の情痴の戯れを知り、その上に私のエロ履歴を知って、刺激を受けたのが原因なのか。
 そんな事を考えながらも絶頂が近づいて来る!っと思った時だ。
 「あなた…アタシも…お願いします。…今度は上から」
 あぁ…又もしおらしい声だ。


 私は意図を察知して仰向けになると、妻を腰の上に導いた。
 彼女は直ぐに私のソレを握って自身のソコに充てがった。私の硬度は充分に保たれている。
 ググっと沈み込むと、妻の膣(ソコ)がジュルジュルに泥濘んでいるではないか。妻も自ら語る事で濡らしていたのだ。


 「はぁぁっ、ウウウッ…あなた、気持ちいいですわぁ」
 噎(むせ)び泣くような声の方を向けば、妻の表情がぼんやりと分かる。この角度なら常夜灯の灯りで分かるだ。その妻が「あぁ堪らない…」と呟けば、私は下から膣(つま)を突き上げた。
 「んーーッいいッ!」
 悲鳴に近い声を響かせ、妻は膝を立ててきた。そして両手で私の腰回りを掴むと、自ら腰を上下に振り始める。その揺れに乳房もユサユサと揺れ始めた。乳房の真ん中、乳輪が目玉のように見える。
 あぁ、この姿はあのマジックミラーのガラス窓に貼り着いていたヤモリじゃないか。そう、歳の差夫婦の方の奈美子さんの痴態だ。いや、ちょっと違うか。これはカエルだ。先ほど妻の口からも出た、秋葉先生の命令に応えた妻の友達の奈美子さんの痴態がこれではないのか。


 「いいッ、いいのぉーーッ!」
 妻が雄叫びを上げた。その口からニュルと舌が伸びてきた。そして宙を舐め回し始めた。
 あぁっ、これは擬似3Pだ。まさか久美子は3Pを…やった事があるのか!それともやりたい気持ちがあるのか!と私の思考が掛け上がっていく。
 その時ふっと二人の視線が合った。薄闇の中でも、そう感じたのだ。
 妻がニヤッと笑った…気がして身体がゾクゾクっと震えてきた。


 「あぁ…あなた、見ててぇ…」
 甘ったるい声を吐いて、妻が腰を少し浮かせる。ソコとソコが繋がったまま、彼女が身体を回す。背中を向けての騎乗位だ。
 「あなたぁ、もっと下さいっ。久美子をもっと突いてぇっ!」と、妻の膣(ソコ)が私を締め付けてきた。


 妻の懇願にも、既に限界が近づいていた。
 「ううう、ああっ…」今夜3度目の射精がやってき来そうな気配なのだ。
 顎を上げれば直ぐそこに不浄の門。臀(ケツ)が上下される度に、妻のアナルがヒクヒクする。この画も又、エロサイトの記憶そのものだ。あぁ…いつかこの穴に、私のコレを挿(い)れる時が…と思った瞬間、今夜最後の爆発を迎えたのだった…。
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私の目の前、秋葉先生がようやくウンウンと頷いた。
 そして「黒子だけど、奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ」
 「!…」
 「だけどね、ふふっ、たまにシールを貼る事があるんだ」
 「シール?」
 「ああ、そうだよ、シールだ」
 「何故シールなんかを」
 「んっ、それは久美子君の耳たぶの下にあるからだよ、黒子が」
 「えっ、どういう意味ですか」
 「実はね、以前に久美子君と同じ勤務先になった時期があっただろ」
 「ああ、それは私も聞いています」
 「うむ、その頃、僕と久美子君は言わば上司と部下の関係で、色々と指導していたわけだ。そのうちに僕の方が、彼女に対して好意を持つようになってな」
 「え、それって」
 「ああ、分かり易く言えば、久美子君と犯(や)りたくなったわけだよ」
 「ええっ!」
 「それでも中々上手くいかず、いずれ僕が別の学校に転勤になったんだ」
 「………」
 「その後は会う機会もなくなって、疎遠になっていったわけだよ。そんな時、当時の勤め先に赴任して来たのが奈美子だ。初めて見た時に、ずいぶん久美子君と似てると思ってな。その事を奈美子と親しくなった時にポロっと云ったんだ。奈美子もそれが直ぐに久美子君と分かってな。聞けば同じ大学を出ていて、仲も良かったと言うから更にビックリだよ」
 「そんな事があったんですか」
 「ああ、それから僕と奈美子は親密な関係になって行くわけだが、ある時に、久美子君の耳たぶの下に黒子があった事を何故か覚えていてね、それを思い出したんだ。奈美子にも訊いてみれば、親友の黒子をよく覚えていてね。それで暫くして、奈美子にお願いしたんだ」
 「そ、それは何を?」
 「うん、黒子を付けてくれと。久美子君と同じ所にシールでいいから付けてみてくれないかとね」
 「あぁ…」
 「そう、僕は正直に告(い)ったよ。前から久美子君と一度オマンコしてみたいと思ってたんだ、ってね」
 「あッ!」
 「奈美子は特に驚く事もなくてね。と言うのも、その頃の僕達は互いに変態度を認めあってて、性癖をカミングアウトしあってたから、奈美子も理解を示してくれたわけだよ」
 「せ、先生に、そんな癖が…」
 「ああ、そうだよ。今の君なら聞ける話だろ」
 「ああ、はい」
 「ふふっ、それだけでも薬の効果があったかな」
 「ああっ」
 「そう、それで髪型も久美子君に似させて、時に黒子のシールを貼って貰って、奈美子に久美子君を演じて貰ったわけだよ。それにしても、今のシールは精巧に出来てるね。僕はその黒子を意識しながら奈美子を久美子君と思って、これまで頭の中だけでしか犯(や)れなかった事をたっぷりやったんだよ」
 「な、奈美子さんはそんな…扱いといいますか、それを受け入れたんですか…」
 「だから、奈美子もストレスの塊だったんだよ」
 「ああッ!」
 「そう、教師特有の病的なストレスに蝕まれたから…いや、蝕れないように、精神の開放を性的開放に委ねたんだよ」
 「アアアッッ、ウウウッ」
 「そしてある時、久美子君から君の相談を貰って、それを切っ掛けに会うようになってね。背景には奈美子が僕への相談を促した、と言う事もあるんだけどな」
 「………」
 「そう、それに娘のストーカー被害が発覚して、それを久美子君に相談したりもしたんで、余計に会う機会が増えてね。久美子君自身も凄いストレスを抱えてるのは分かっていたから、解消の手伝いをしてやろうと思ってね」
 「そ、それって」
 「ん、もう分かっているだろ。奈美子と相談してマンションに呼ぶようになったんだよ」
 「あぁ、奈美子さんと夫婦として借りてるマンションですか」
 「覚えていたね。そう、そこでさっきも云った変態プレイの協力をして貰ったよ」
 「………」
 「ん、どうだね?」
 「あ、あの…それで先生は、く、久美子とはセックスまでいったんでしょうか…」
 「それはさっきも云ったじゃないか」
 「あ、あぁ…そうでしたか。けど、ハッキリしないんですよ頭の中が。先生の話なのか自分の妄想なのかが。思い出そうとしても…そう、ひょっとしたら、全ては白昼夢ではないかと…」
 「………」
 「………」
 「…じゃあ、どっちが良い?」
 「え!どっちと言いますと…」
 「ん、だから久美子君とセックスした方が良かったのか不味かったのか」
 「そ、それは…」
 「ふふふ、いや、悪い悪い。久美子君とはまだ犯(や)ってないから大丈夫だよ」
 「………」
 「逆に聞くけど、君は奥さん以外の“誰か“と浮気…セックスをした事はないのかい?」
 「あうッ!」
 その一言に、身体の中を電流が走り抜けた。


 「んっ、どうした、大丈夫かい?」
 「あ、あの…実は1度だけ」
 「ふふっ、分かってるって」
 「えっ!」
 「ああ、君は何時だったか◯◯町の◯◯ホテルに行った事があるだろ」
 その言葉に、一瞬にして電流が流れたように背筋が伸びてしまった。
 「ロビーをこっそり見ていたら、変な髪型をした男性を見つけてね。本人は上手く化けたつもりかもしれなかったが、僕には直ぐに分ったよ」
 あぁ、あの時…。
 そして、やはり「先生と奈美子さんだったんですね“歳の差夫婦”って…」
 「ん、歳の差…?」
 「あ、いや…」
 「確かに、僕と奈美子は一回り以上の“歳の差”があるが?」
 「いえ、それはこちらの事でして…はい」
 私の聞き取れないような小さな声にも、先生は特に興味を示すような事はなかった。


 「あの…確かに私は“ある人”を通して誘いを受け、そのホテルに行きました。そこで」
 「ああ、分かっているよ。僕もまさか寺田君が現れるとは思っていなかったから、その時は凄くビックリしたよ。同時に恐ろしい偶然があるものだと2度ビックリしたね」
 「本当に仰る通りです」
 「しかし狭い世界だから、共通の知り合いがいてもおかしくはないよね」
 「はい…」
 頭の中には、渋谷君や神田先生の顔が浮かんでいた。考えてみれば、彼等の仕事の範囲もある程度は決まっている筈なのだ。まして体験者によって紹介が生まれるのだろうから、自ずと狭い世界での出会いになってしまう。


 コホン、先生の咳払いがした。私は改めて先生の顔を見つめる。
 「それで、君は奈美子を抱いたわけだ。だから僕も、堂々と久美子君をね。どうだい“ご主人”」
 「あぁ…」
 私には先に奈美子さんとセックスしてしまった負い目がある。それに、妻を寝取られたいという願望もある。そう、今ならハッキリそれが自覚できるのだ。
 しかし…。
 「あのぉ、先生」
 「ん、なんだね?」
 「やっぱり、その、無理そうです…」
 「………」
 先生は私は暫く見詰めた後、フーっと大きく息を吐き出した。そしてニコリと笑った。
 「そうか。それは仕方ないなぁ」
 「す、すいません」
 「いや、気にする事なんか何もないよ」
 「………」
 「君の方は、最近になって久美子君との仲が良い方向に向かってるみたいだしね」
 先生の言葉に、私は無意識に頷いていた。そうなのだ。先だっての日曜日から、久美子の“一人語り”によって私の欲求は満たされつつあるのだ。同時に妻の精神も開放されてると実感する事が出来ているのだ。奈美子さんとセックスした負い目はあるわけだが、その秘密を内に秘めるのも快感の一種と考えよう。私は自分の思考を上手くコントロールしようとしていたのだ。


 先生との会話はその後、世間のニュースや職場の話題に変わり、いたって健康的な時間となっていった。不思議なもので、陰湿な空気が流れていたこの店の雰囲気も、開店を待つ有りふれた酒場の一つに思えていた。
 そして、頃合いを見計らった時だった。
 「秋葉先生、ではそろそろ」と腰を浮かせようとした。
 先生の方も、引き留める素振りを見せる事もなく、あっさりとお別れの挨拶となったのだった。
 「じゃあ寺田君、また何かあればね」
 先生は最後に、ウインクまでみせていた。その表情(かお)は、年甲斐もなくお茶目な一面を浮かべていた。


 先生が店のドアを開けてくれて、私は陽の高い世間へと歩み出た。その時だ。
 「そうだ。久美子君の事だけど」
 その言葉に、一瞬緊張が走った。
 「奈美子が今まで通り、お茶会なんかに誘うのは許しておくれ」
 私は笑みを作ろうと試みながら頷く。
 「僕から久美子君を誘う事は、もうないからね」
 「は、はい」と私は畏まった。
 「でも、久美子君の方から“僕達夫婦“に新たな相談でもあったら…ふふふ」
 「………」
 先生がまだ何か云いたそうに見えた私だったが、その会話を自ら打ち消すように、先生はニコリと微笑んでドアを閉めたのだった。
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 BAR白昼夢ーー。
 目の前、秋葉先生が手に持つ小瓶を、私はジッと見ていた。ソレは確かに、栄養ドリンクの瓶にしか見えなかったが、中身は『シンカノシズク』と言う精力剤の一種だとか。


 「どうしたんだね、心配かい?」と、先生が真顔で訊いてくる。
 「え、ええ、あまり聞いた事のない物ですから」
 「ふふっ、まぁ仕方がない。でも、僕達もたまに世話になるけど、後遺症とかは全くないよ。依存する事もないしね」
 「本当ですか」
 「ああ、勿論だよ」


 「先生はソレを、奈美子さ…」と云ってしまったところで、慌てて口を抑えた。
 一瞬、先生の目が光った気がした。
 「…そうか。フムフム、久美子君から聞いたんだね」
 先生の言葉に、私は「すいません」反射的に頭を下げている。
 「いや、いいよ。ただし、他では彼女の名前は出さないように気をつけておくれよ。特に教師連中の間ではね」
 「は、はい、それは勿論です。それに、そんな事を私が吹聴したって分かったら、私の方だって…」
 「そうだな、君の変態性癖が世間にね…それに、君の奥さんの久美子君が変態マゾ女って事もね…」
 「ええっ!!つ、妻がマゾ…女ですって!」
 「ふふふ」
 「せ、先生、それは一体どういう…」
 「聞きたいかい?気になるよね。でも、聞くには…」と、先生が又も小瓶を振っている。やはり“ソレ”を飲まないと聞けないような話なのか。


 「少し飲んでみるかい、勇気を出して。僕も付き合うからさ」
 先生は云うなり、1本のキャップを開けはじめた。
 開いたところでもう1本のキャップも開けて、私に向けて来た。私はそれを恐々と受け取った。
 「じゃあ、もう一度乾杯だ」
 カチリと小さな音がすると、先生はあっさり、というか手本を示すように飲み干した。そして、視線で私に勧めてくる。
 私はゴクリと息を飲むと口をつけ…そして一気に飲み込んだ。


 喉を通った感触は確かに栄養ドリンクか。覚悟していたほどの刺激は全くない。そんな私の様子を見てか「寺田君、どうだい何もないだろ」と先生が笑っている。
 「では、話に戻ろうか。ええっと、何の話をしていたんだっけ、寺田君」
 如何にもの教師の口調に聞こえて、一瞬生徒の気分になった気がした。
 「え~っと、久美子の、しゃ、社会体験のところでした」と告げた瞬間、視線の端で小さな光が瞬いた。その光の流れを追い掛けると、それは天に昇り、光の雫となって降ってきた。
 あぁ…雫…コレが神華の雫か…。


 「寺田君」
 声に前を向き直れば、優しそうな先生の顔だ。
 「そう社会体験、な~んて堅苦しい話じゃなくて、久美子君がオマンコを濡らす話だよ」
 「アーーーッ、そ、そうでした!それを聞きたかったんでシュよ」と声が変だ、と思ったが気にならなかった。それどころか、背中の後ろからモワモワと高鳴りが湧いてきた。
 眼の前では、先生の口がパクパク開いたり閉じたりしていた。口の中からは言葉が舞い上がって行くのが見える。
 その言葉は宙で文字となり、私の頭の中に降りて来た。


 ーー寺田く~ん、半年ほど前に久美子君から相談があったんだよ…。
 ーー彼女は君がストレスを抱えてると心配してたっけね~。
 ーー彼女自身も職場のストレス、夫の心配、彼女も疲れていたみたいだよ…。
 ーーだから機をみて、奈美子と夫婦として借りてるマンションに呼んであげたんだよね…。
 ーーそこで、僕達のセックスを見せてあげるって云ったら、驚いていたよ…。
 ーーでも、僕達は気にせず裸になったんだ…。
 ーー久美子君はどうしてそんな事が出来るのかと聞くから、夫婦だからと答えたよ…。
 ーー僕達の姿を見て、どうすれば寺田君に寄り添えるか考えてごらんって云ってね…。
 ーーそれから僕達は久美子君に撮影をお願いしたんだよ…。
 ーー僕と奈美子は色んな格好でシャブリあったり舐めあったりしたね。うん、見せつけるようにね…。
 ーー奈美子がアソコを拡げると、久美子君は撮影をしてくれてたね。おそらく、久美子君も自分のアソコを濡らしてたと想うよ…。


 ーー奈美子のヤツも最初の頃は他人に見せるなんてと恥ずかしがってたけど、あの薬のせいか、元々持ってた資質のせいか、大胆になってきてね。友達の前で平気で尻の穴まで見せていたよ…。
 ーー僕のアソコも異様に膨らんでね。ソレで奈美子をヒーヒーいわせてたよ…。
 ーー久美子君は時おり撮影を忘れて、僕達の絡みに魅入られる事があったね…。
 ーー僕達も調子に乗って、やった事のない体位を披露したよ…。
 ーー押し車って知ってるかい?後ろから挿入したまま歩くんだ。奈美子は四つ足で、僕は腰を前に突き出すようにしてね。久美子君もやってみたいと思ったんじゃないかな…。
 ーーそれと、僕のアレが奈美子のアソコに入っている所を近くから撮らせたりもしたね…。
 ーーその映像を、プレイの後に三人で視たりもしたね…。
 ーー他には仮面を着けてプレイしてるところを撮った日もあったね…。
 ーー久美子君もだんだんと慣れてきたけど、毎回生殺しで辛かったんじゃないかな…。
 ーーん、久美子君と僕が“本番“をやったかって?
 ーーフフフ、さぁそれはどうだろうか…。
 ーーまぁ、そうやって色々と妄想してるだけでも楽しいんじゃないかな…。


 ーーだけど、僕の勃(た)ちが悪くなってきてね。ふふっ、歳には勝てないって事だね…。
 ーーそんな時“あの人達“を知ってね、お願いに行ったんだよ…。
 ーー実際に相手をしてくれたのは若い人だったね…。
 ーーその彼とは色んなプレイをやったよ…。
 ーー僕の前で奈美子がその彼とプレイする処を見るのは刺激的だったな…。
 ーーその彼は日によって手を変え、品を変えて楽しませてくれたよ…。
 ーー僕自身にも新たな発見があったよ。自分の中にSとMが同居してるって分かったしね…んんっ!?。
 ーー寺田君!?


 「どうした寺田君?」
 「ヒッ、ヒィーーッ!ヒィーーッ!ヒィーーッ!」
 「おいっ、寺田君!」
 「………」


 頭の奥で、色んな顔が現われては消えていた…久美子、奈美子さん、秋葉先生、渋谷君、それと仮面の女…。
 と、誰かが私の名前を呼んでいる…。
 やがて、瞼がゆっくり開いていき…暗い天井が目に付いた。
 天井に“言葉”が、いくつか舞って見えた。それが今度は、黒い雫となって消えていく。あぁ… “黒子”のような雫だ。
 すると、身体が揺れている事に気が付いた「寺田君、大丈夫かい」先生が私の身体を揺すっていたのだ。


 私は2、3度頭を振って、ゆっくりと椅子の背もたれから身体を起こそうとした。
 「わ、私は一体…」
 「ああ、話を聞かせてたら、急に痙攣が起きたみたいに震え出したんだよ。…大丈夫かい」
 「は、はぁ…」
 「頭が痛いとか、気持ち悪いとかは?」
 「え、ええ、大丈夫みたいです」と口にしたが、頭はまだボォっとしている。
 「ちょっと待ってておくれ。冷たい水を持って来るから」
 そう告げて、先生がカウンターの中へと入って行った。その後ろ姿に、先生はあの“薬”を本当に飲んだのだろうか、そんな疑問が重い頭を横切った。
 私は瞬きをして、一度目を瞑った。
 目を閉じた私の耳に、ガチャガチャと氷の音が聞こえてきた。先生が製氷器から取り出しているのか。その音の合間をプチプチと“黒子”が弾け飛んでいる。


 やがて先生が戻って来て「寺田君、まだ、ボォっとしてるみたいだけど、本当に大丈夫?」と、水差しと氷の入ったグラスを置いてくれた。そして、波々と注いでくれる。私は頭を下げて、それを飲み干した。
 先生は私の様子を観(み)ながら「もう1杯くらい飲んでおこうか」と云って、空になったコップに注いできた。
 「これには何も入ってないからね」
 その言葉にむせ返りそうになりながらも、続けて飲み干してみた。
 胃の奥に水が染み渡って暫くすると、身体が熱くなってきた。そして、額の辺りから汗が吹き出る感触を覚えた。
 「発汗が来たら、スッキリすると思うよ」と、先生が頷いている。


 「でも寺田君、今日はこの辺で止めておこうか」
 「いや…あの、実は黒子が」
 「黒子!?」
 「はぁ、そうなんです、黒子なんです。さっき黒子が降って来たんですよ。それで…」
 先生は私を心配げにシゲシゲと覗きこんできた。それでも私の口は止まらなかった。
 「あのお…先生の彼女、奈美子さんの右の耳たぶの下に、黒子なんてありませんよねぇ」
 私自身も何故そんな質問を口にしたのか、理由など理解できなかった。先生を見れば、目が真ん丸と拡がっていた。初めて見る先生の表情(かお)かもしれない。


 「寺田君、君はやっぱり面白いところがあるなぁ」
 「あ、いや、すいません…」
 「………」
 「ま、不味かったでしょうか…」と言い掛けたところで「いや大丈夫だよ。うん、君はやっぱり面白い人だ」と呟きが聞こえた。
 私は先生のその顔を暫くの間、見詰めていたのだった。
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 待ち合わせの時間に遅れないようにと店を出た私ーー寺田達夫。
 約束の5分前、北口の1番大きな改札の前にやって来た。秋葉先生はまだ、来られていないようだ。
 暫く改札の中を見つめていると、向こうの方から記憶通りの姿がこちらにやって来るのが見えた。秋葉先生だ。
 目の前に来られた先生は相変わらず恰幅が良く、茶色いブレザーを着こなした姿は威厳に溢れていた。


 「やあ、寺田君、久しぶりだね」
 「ご、ご無沙汰してます。今日はよろしくお願いします」
 先生を前にすると、私の緊張は嫌でも高まっていく。
 先生の方は、私の表情(かお)を覗くや「ちょっと痩せたかな?けど、顔色は思ったほど悪くないね。お世辞にも良いとは云えないけど」と、リラックスした感じだ。
 それから、ふふふと口元を歪めて「君の顔を見ると、何だか今日の相談事の中身が分かる気がするよ」と目を細めて告げてこられた。
 こちらは顔を強張らせるだけだと言うのに。


 「じゃあ、秘密の話をするのに相応しい店があるからそこに行こうか」
 先生は笑みを浮かべながら、踵を返して歩き始めた。私はその後を追いかける。
 人の波をやり過ごしながらエスカレーターに向かい、そこを下れば覚えのある場所だった。先日、久美子と秋葉先生が落ち合った場所だ。先生はそこを通り過ぎると足を速めた。
 先生の横に肩を並べてチラリと横顔を覗く。微かに白髪が確認出来るが、皺も少なく肌の艶も良さそうだ。歳は私より一回以上も上なのに。


 「久美子君とは上手くいってないのかい?そんな事はないよね」
 いきなり向けられた質問にドキリとした。先生を見れば、口元がニヤついている。
 「く、久美子とは、そのまぁボチボチです…はい」
 「ボチボチか。と言う事は悪くないという事だな」と告げて、今度は朗らかな笑みを向けてきた。
 「君は久美子君と結婚してどのくらい経つのかな」
 「えっと10年以上は…」
 「ん、何だか頼りない言い方だな。でも夫婦ってそんなもんだよな」
 「………」
 歩きながら話す先生。それも思った以上に口が回る先生に、意外な気がしながらも緊張が少し解れる気がした。これはすんなり、色んな事が聞けるかもしれない。


 やがて覚えのある通りにやって来た。
 雰囲気は先だってと同じで、今日土曜日のこの時間帯も人が疎(まば)らな飲み屋街だ。
 先生が足を止めたのは、例の店【BAR 白昼夢】の前だった。
 先生は扉の前で一旦振り返って私を見た。その目が、ここでいいよな、と怪しく誘ってる気がして、身体が竦みそうになってしまった。
 「さあ、ここだよ。入ろうか」と落ち着いた声だ。
 私は先生の後ろ姿に引き込まれるように足を進めた。


 店の中は想像した通り、落ち着いた感じの造りだった。
 先生が照明のスイッチを入れれば、浮かび出たのはレトロな灯りだ。


 カウンターの中に入った先生が「さぁどこでもいいけど、そこがいいかな」と云って、二人掛けのボックス席を指さした。
 店は小さなボックス席が二つに、カウンターは5人でいっぱい。かなり小ぢんまりとした店だった。


 瓶ビールを取り出し、グラスの用意を始めた後ろ姿に「あのぉ今日は誰もいないんですか」と聞いてみた。
 「ああ、開くのは暗くなってからだからね。来るのはバーテンが一人で、その彼がいつも一人で切り盛りしてるよ」
 「あっそう言えば」そこで私は久美子から聞いた言葉を思い出した「この店って、先生の教え子さんがやってるとか…」
 「久美子君から聞いたんだね。そうだよ、かなり古い子なんだけどね。うん、その彼からここの鍵を借りたんだよ」
 先生はそう云いながら、盆を持ってこちら側に出てきた。


 小さなテーブルを挟んで向かい合った私達。
 「さぁいこうか」
 私がビール瓶を持った所で、先に先生が注いでこられた。私は恐縮しながらも頂く事にした。そして直ぐさま注ぎ返す。
 軽く乾杯したところで「今日は久美子君の事で相談だったよね」と、いきなりの本題だ。私は蒸せそうになりながら頷いている。
 「ふふっ、何となく内容も分かりそうな気がするけど、喋り辛くなったら云っておくれ。酒は色々あるからね」
 はぁ…と、頼りない返事をしてしまう私に「それに、腹を割れないなら、口を割らせる酒もあるからね」
 一瞬、先生が冗談を云ったのかと思ったが、意味は読み込めない。先生は早くも1杯目を飲み終わって、2杯目を口にするところだ。
 私も酒の力を借りてと、自分に言い聞かせながらグラスの残りを一気に呑みほした。
 そして「秋葉先生、あのですね、妻の久美子から私の事で何か相談とか愚痴とか聞いてらっしゃいませんか」と、一息で口にした。そう、今日の相談とは言ってみればこれだけの事なのだ。
 先生はグラスを置くと口元に笑みを浮かべた。
 「ふふふ、聞いてるよ。聞いてるとも、君の事は色々とね」
 その声の響きに、背筋がキュッと硬くなっていった。


 「じゃあ、どこからか話そうか…そうだなぁ」
 先生が呟きながら、その目は私を甚振る目ではないのか。
 「でも、その前に僕自身の事を少し話そうかな。その方が君もこの後の話が聞きやすいと思うしね」
 あぁ…それはどう言う意味だ…。やはりこれは、飲まないと聞けない話なのか。
 そして私はもう一杯、手酌で注いで飲み干してみせた。


 「ふふっ、いい飲みっぷりだ」
 「………」
 「そう、君も既に知ってると思うが、僕は何年も前に離婚していて、今は独身なんだ。久美子君の世話になった娘は、別れた女房と一緒に暮らしているし、僕は一人暮らしなわけだよ」
 「はぁ…」そうですね、と心の中で応える。
 「だけどね、君にだから教えておくけど、実は恋人がいるんだ」
 え!っと驚いてみせた。が、その事実は妻から訊いている。
 先生は私の表情など気にせず、グラスを口に運んでいる。


 「恋人といったって子供じゃあるまいし分かるよね、それがどんな関係か」
 「は、はぁ」またも頼りない返事だ。
 「ふふっ、まぁ愛人とかセックスフレンドといった方が分かり易いよね」
 ううッ、改まってそんな言葉をぶつけられると萎縮してしまう。
 「どう?こんな話も聞きたいだろ」先生がビール瓶を向けて来ながら、私の覚悟を計っている、ような感じだ。
 「でもね、時には夫婦もやるんだよ」
 「え、どう言う意味ですか」
 「疑似夫婦さ」
 「疑似夫婦?」
 「そう。愛人、セックスフレンドだとしても付き合いが長くなればマンネリが生まれてくるだろ。だから新しい刺激を探したんだよ」
 「あぁ、それが…」
 「そう、その彼女と二人で夫婦として色んな所に顔を出したり、呼んだりネ」
 「それは…」と聞きかけてゴクッと息を飲み込んだ。先生の目が据わって見えたのだ。
 その先生がこちらに向かって顎をしゃくる。もっと飲めと云っているのか、私は慌ててグラスを口に運ぶ。


 「長い事教師をやってるとね、色んな人に会ったり色んな噂を聞いたりするんだよ」
 「………」
 「君は知ってるかな…悩みを抱える教師やお堅い職業の人達を相手に、コーディネートをしてる人がいてね。悩み多き人達がストレスから性犯罪なんかを犯さないように、解放出来る場所を用意したり、解放出来るシチュエーションを作ったりしてくれるんだ」
 「ああっ!」そんな事が…と云おうとしたが、口が開かなかった。それでも頭の中には、“ある人“の顔を浮かべていた。
 「まぁ僕も…と言うか僕達も縁があって、たまに世話になるんだけどね」
 「………」
 「とまぁ、それだけ我々教師連中は病的なストレスに犯されているという事だよ。それで半年ほど前、君の奥さん、久美子君から相談のメールを貰った時も直ぐにピンときたんだ。彼女も恐らく、病的なストレスを抱えてるってね。でも、悩みは彼女自身の事だけじゃなかったんだよね」と先生が口元を歪めた。
 私は遂に来たかと、身構えてしまう。
 「そう、久美子君の相談のメインは、君の事だったんだよ」
 「あぁ…」
 「彼女も話しずらかったと思う。だから僕の方から聞いてみたんだよ」
 「そ、それはどんな風にでしょうか…」
 「ああ、『ひょっとして、寺田君が性的な事件でも起こしそうなのかい?』って」
 「ああっ!」
 「ふふっ、その時の久美子君も今の君みたいな反応だったよ」
 あうッ、思わず今度は、背筋が伸びてしまう。
 「図星みたいな様子だったから『じゃあ、家にパソコンがあるなら1度ネットの履歴が見れないか試してごらん』って云ってみたわけさ」
 「………」
 「そう、それで久美子君は視たんだな。もちろん君自身もシッカリ記憶にあるやつをだね」
 ああっ!。


 「ふふふ。それでね、僕の娘のストーカー騒動の事で頻繁に連絡を取るようになってたんで、そのネット履歴の報告を聞く機会を改まって設けたんだ。じっくり聞かせて貰おうと思ってね」
 「あぁ、そんな事が…」
 「ああ、そうだよ。それで君の性癖も知る事になってね、久美子君にはこう告(い)ったんだ『ご主人…寺田君に付き合ってあげろ。おそらく彼の悩みは半端なものじゃない。間違いを起こして世間から後ろ指を指される前に、君も彼の性癖に寄りそってやれ』とね」
 「そうだったんですか!」
 「だけど久美子君は、ずっと戸惑ってる様子だったな。だから君の方に態度として現れたのは、最近じゃないのかな。思い当たる事はないかい?」
 あッと、見事に日曜の一夜の出来事が浮かんできた。そして、妻に最後の一押しをしたのはあの日の昼間、この店で秋葉先生と会ったからに違いない、と思えた。
 「ふふっ、どうやら身に覚えがあるみたいだね。それは大いに結構な事だよ」と口にして、先生がウンウンと頷いている。
 「まぁ僕としたら時間が掛かったと思ったけどね。と言うのも、久美子君がそのネット履歴の話を初めて僕にした時から、彼女自身も興味は持っていたみたいだからね」
 「きょ、興味を、妻が…ですか…。その興味って…」
 「んん、決まってるじゃないか、性的好奇心ってやつだよ」
 「ああッ!!」
 「そう、それで久美子君には色々とな…ふふふ」
 「い、色々とは…」
 「んん、まあ生徒に教えるのと同じ云い方をするなら“社会体験”ってところかな」
 「え!その社会体験って…」
 「ふふ、その詳しい内容を話すには飲みが足りないな。勿論、僕もだけど」
 と告げた先生が立ち上がって、カウンターの中へと進んでいく。新しいビールでも取りに行くのだろうか。


 先生は直ぐに戻ってきた。手にはよく見る栄養ドリンクの小瓶が2本。
 「これはね、実は中身は違うんだよ」と、手に持った小瓶を顔の前で振って「ブレンドなんだよね」と目を向けてきた。
 「ブ、ブレンド?」
 「あぁ、非合法のね」
 「ええっ!」
 「とは云っても、人体にはさほど影響はない。一時的に夢を見るだけだよ」
 「ほ、本当ですか」
 「ああ、この中身は“神華の雫(シンカノシズク)”といって一種の精力剤、それに興奮剤を少し混ぜて薄めたやつなんだ」
 「せ、先生は…」何故そんな物を…と続けようとしたが、口が動かなかった。
 「なんだ、びっくりしてるのかい。こんなのは普通の栄養ドリンクとそんなに変わらないさ。勿論、女性だって飲める物だよ」
 「ま、まさかソレを…」
 「ふふふ…」
 先生の笑いに身体がゾクゾクと震えて来た。あぁ…私は何か過ちを犯そうとしているのだろうか…。
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 妻との衝撃的な一夜を過ごしてから、4日が経った。
 その4日間の中には、清々しい朝を迎える事が出来た日もあった。それは決まって、前日の夜に久美子が再び“妻の一人語り”をしてくれた時だった。
 その時の妻は、少しばかりの酒を呑んで、アルコールの力も借りながら私のエロ履歴にあった変態女を演じてくれるのだった。
 私は自分のエロ履歴を視られていた事が、結果的にはケガの功名となって、思わぬ恩恵を受けるようになったわけだ。
 とは言っても私の真面目な性格は“歳の差夫婦”の奈美子さんとセックスしてしまった負い目を忘れる事はなかった。


 それともう一つ気になっている事があった。
 妻が先日の日曜、M駅の【BAR 白昼夢】で、秋葉先生に相談をしたその詳しい内容だ。
 妻はどこまで私の変態気質を教えたのだろうか。秋葉先生に限って、私が変態である事を世間に吹聴するとは思えないが、小心者の私はやはり恐いのだ。妻から秋葉先生の不倫事実と、その“プレイ”の内容も少しは知ったつもりだったが、それもどこまで本当かは分からない。
 この数日間、妻と床を一緒にした時も、私は心の何処かに小骨が刺さった気持ちでいたのだった。


 金曜日。考えた末、私は秋葉先生と会って直接話しをしてみようと決めた。
 早速昼休みに知り合いの教師仲間達に、メールで秋葉先生の連絡先を尋ねてみた。私の記憶が正しければ、先生は隣町の中学で教頭の職に就いている筈だったが、直接学校に電話するのは控える事にしていた。
 妻に聞けば携帯番号やメールアドレスも分かるのだろうが、やはり彼女には聞きづらかったのだ。
 そしてその日の夕方、予期せぬ事に先生本人からショートメールが来たのだった。


 《寺田君
 ご無沙汰しています。
 僕の連絡先を探していたみたいですね。
 急ぎの用件でも出来たのかな。
 僕の方は明日明後日のどちらかなら時間はとれるから、よかったら連絡してみて下さい。
 では。      秋葉洋司》


 私は暫し、そのメールを何度か読み返した。
 私からのメールを受け取った誰かが、先生に直接私の携帯番号を教えたのだろうが、今更そこを追求する気はなかった。それよりも緊張が先に立つ自分だった。いざ会った時には、どういう風に話しを切り出そうか。
 と考えても、今のところ作戦などは思いつかない。こちらも先生の弱みーー不倫事実に変態気質を知っているのだからと自分に言い聞かせていた。
 おそらく先生の方は、私が妻の久美子から連絡先を聞かなかった事に疑念を持った筈だ。私はそれなりに考えて返信を送る事にした。


 《秋葉先生
 寺田です。ご無沙汰しております。
 実は妻の事で相談したい事があります。
 明日の土曜日か日曜日、どちらでも構いませんのでお時間を頂けませんでしょうか。
 詳しい事は会った時にお話ししたいと思います。
 よろしくお願いいたします》


 目的を“妻の事”とした事で、先生からも妻にこの件が伝わる事はないだろうと自分を納得させていた。
 やがて返信が来た。


 《承知しました。
 では、明日の土曜日13時にM駅の北口改札で待ち合わせましょう》


 M駅とあった事には多少の驚きと同時に、やはりと言うどこか納得の気持ちが生まれていた。
 私はこの日の夜は“妻の一人語り”を聞く事もなく、明日の事を考えながら眠りについたのだったーー。


 ーー土曜日。
 今朝も比較的気持ちよく朝を迎える事が出来た私だった。
 顔を洗いリビングへと向かって、妻に「おはよう」と声を投げ掛けた。
 久美子はいつも通りに家事をしていた。返って来た「おはようございます」の声にも明るい響きが含まれていた。


 妻の手が一休みした時だ。
 「あのさぁ久美子の今日の予定は?僕の方は、また古本屋に行くつもりなんだよね」と若干声が震えた気がしたが、何とか言葉にしていた。
 「そうですねぇ、アタシの方は」と云いかけたところで「あ、ひょっとして奈美子さんと体操教室?」と割って尋ねてしまった。


 「は、はい、その予定です。でも、奈美子はお休みなんで一人で…」
 何処と無く緊張を感じる妻の言葉だったが、私はシッカリと頷き返していた。その私に彼女が続ける。
 「でも、午前中は家にいます。実は仕事が溜まってて持ち帰ってるんです。だから家で」
 その言葉にも私は頷いていた。最近では教師が持ち帰った書類等を紛失する事が何度とあって、極力事務仕事は学校内で済ますようにと御用達のある学校が増えているらしい。しかし、私や妻が勤める学校はその点、少し緩かったのだ。
 私はもう一度頷き「頑張って」と声を掛けていた。


 昼前になると少し早いが家を出た。仕事をしてる妻に昼食の用意をしてもらうのも申し訳なく、外で食べようと思っていたのだ。
 家からM駅までは乗り継ぎがスムーズに行けば1時間ほど。この日も問題なく目的地に着く事が出来た。


 改札を出て、北口でラーメンでもと足が向きかけた私だったが、何故か気持ちは南口の方に惹かれていた。
 やはり“悪“の魅力に取り込まれていたのか、フラフラとした足取りは南口のエスカレータに向かったのだった。
 ロータリーに降りてスマホで確認すれば、約束の13時まではまだ余裕がある。私は何時かのように、この辺りを探索する事にした。


 少し歩けば、神田先生の事務所のある古い雑居ビルの前にやって来た。
 事務所といっても、中にはマジックミラーの部屋があって、そこを病的な趣向の持主達に時間貸しをしたりしているのだ。その利用者の大半は恐らく、教員達なのだろう。こうしている間にも、訳ありのカップルがビルに入って行くのではないかと奇妙な緊張を感じていた。帽子にサングラス、それに何時かの私のように変な髪型の人はいないか。私はそんな事を気にしながら暫くそこに立っていたのだ。


 ふと気づけば、一人歩きの女性の姿が目に付く。歳は妻と同じく位かもう少し上か、いわゆる熟女の部類に入る人達だ。
 あぁ、ひょっとしてこの女性は人妻売春を…と思ったところで、記憶の中から何時かの女店主の言葉が甦って来た。


 ーーみんな訳ありだけど…。
 ーー家に帰れば普通の主婦だし。
 ーー倦怠期の…あっちの方だって凄いのよ。
 ーー旦那にやった事のないサービスだって…。


 ゴクリ、私は知らずに唾を飲み込んでいた。その目の前を又、人妻風の女性が通り過ぎて行く。しかし、その女性は隣の体操教室があるビルに入って行った。そう、ここにジッといたら妻が教室にやって来てしまう。古本屋に行ったはずの私がいたら、おかしな事になる。
 と、その時グウっと腹が鳴った。丁度よい頃合いだ。今のうちに腹を満たしておくのだ。
 駅の方に踵を返せば、あの店の事が浮かんでいた。例の女店主がいる店だ。妻との遭遇を考えれば北口に行くべきだろうが、私は恐いもの見たさで、もう一度その店に行く事にした。


 今日のその店は、それなりの混み具合だった。女店主の姿はあったが、流石に客の対応で忙しそうだ。
 私は手っ取り早く済まそうと、土曜日もやってるランチを注文した。
 頼んだ定食がきたところで、改まって客の様子を探る。今日は多種多様な客層だ。若いカップルに中年カップル、一人でドリンクを飲んでる中年女性がいれば、それを見詰める私のような中年男もいる。流石に家族連れの姿は見受けられない。


 食べ終わって、食後のコーヒーに口を付けながら時間を確認する。あと少ししたら、ここを出発しよう。そう思いながら、窓の外を眺めてみた。視界に映るのは朽ち果てた感じのビル群だ。
 あれらのビルの中では、どんな人間模様が織り成されているのだろうか。当然、性的な行いも絡んでいる筈だ。
 そんな事を考えながら外を見ていると、あの夜のマジックミラーの部屋の様子を思い出した。
 ヤモリみたいに裸体をガラス窓に貼り着けて揺すっていた女ーー “歳の差夫婦”の奈美子さんの姿は衝撃的だった。あれが私と同じ教師と知っていたから、尚更その衝撃は強烈だった。あの女性が職業的売春婦だったら、あそこまでの驚きはなかった筈では、とも考えてしまう。
 そして、未だに私はあれが妻の久美子だったらと妄想してしまう時がある。そしてそんな時は、きまってアソコが硬くなっているのだった。
 あぁ、私はやっぱり生粋の変態男だ。
 いや…。
 それでも…。
 これから会う秋葉先生にだって、それなりの変態性癖があるのだ。と、期待している私がいる。
 先生は、妻の友人の奈美子さんを実際のところ…どんな風に…調教しているのだろうか…と、無意識に二人の関係を妄想しようとしている。
 あぁ、秋葉先生との話はどんな風になるのだろうか、武者震いが湧いて仕方がない。
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 妻の表情は薄闇の中ではよく分からなかった。しかし、その中から落ち着いた声がしてきた。
 「その子…実はそれが奈美子なんですよ」
 「ええっ!な、奈美子さんも教師だったの!」
 「はい。彼女は大学卒業後、一度一般企業に就職したのですが、やっぱり教師になりたいと辞めたんですね」
 「じゃあ、教職課程は取っていたのか」
 「はい、アタシと一緒に履修してました。因みに、隣同士で席に座っていると、よく双子に間違えられましたわ」
 「そうか、そんな事が…。それで、奈美子さんが教師をやりたいって思ったのも、久美子の影響なのかな?」
 「ん~どうでしょうか。アタシは職場の愚痴を結構聞かせてましたけど…」
 「それでも奈美子さんは…」
 「はい。それで試験に受かって、最初の採用が◯◯中学だったんです」
 「あ~あそこか。じゃあ、僕達も同じ職場になった事はないよな」
 「ええ、何度かニアミスといいますか、入れ違いになった事がありましたけどね」
 「なるほどね。それにしたって、その奈美子さんがどうして上司と不倫を…」
 と、在り来りの疑問が口に付いたが…。


 「それはさっき云った通りで、最初は教務を指導されつつ、次第に仲が良くなり、やがてと…。それと因みに、奈美子は一度も結婚した事がないんですよ」
 「ああ、そうなのか」
 「はい、そうなんです。それで、奈美子とは会えない時もメールで近況は教え合ったりしてましたし、相談にも乗ってましたから」
 「なるほど。それで、決定的な不倫関係になった時も、直ぐには分かったの?」
 「そうですね、わりとすんなりと。彼女も周りに相談とか出来る人が少なくて」
 「そうなんだよな、教師は世間が狭いし、それに誰にでも相談できる話じゃないしな」
 「仰る通りです。それで何度かお酒に付き合ってるうちに色々と…」
 「ああ、それがさっき久美子が云った話で、二人のその…プ、プレイの内容の事までも…」
 「え、ええ、そうですね、多少は…。でも、さっきの造り話には、あなたの…そのぉ、エッチな履歴からの想像がかなり入っていますわ」
 「ああっ!!」
 妻の言葉に一瞬、声を上げてしまった。
 彼女の先ほどの卑猥な表現や描写は、私の“癖”を見抜いて、脚色も加えてたと言うのか…。ああ…そうだ、そうなのだ!それに、いくら親友といっても、不倫相手との情痴の内容をあそこまで細かく描写して教えたとは考えずらい。まして女性同士が。
 あぁ…またも身体が落下して行く気分だ。


 「………」
 「あなた…どうしましたか」
 「い、いや、大丈夫だよ…」
 私は妻の声に、コホンと咳払いをした。
 「そ、それで奈美子さんの相手の男性はどんな人?まさか僕の知ってる人だったりして」
 と私が口にしたところで「はい実は」と、口ごもりながらの妻の返事だ。
 「あの…秋葉先生…なんです」
 「な、何だって!」身体が飛び上がるほどに驚いた。
 「ええ…そうなんですよ。秋葉先生なんです」


 唖然とした私の中に、ジワジワと先日バッタリ会った秋葉先生の顔が浮かび上がってきた。
 確か先生は…ああ、そうだ。秋葉先生は今は離婚しているのだ。
 「あのさぁ、秋葉先生はだいぶ前に離婚してたよね。それって…」
 「ええ、離婚されたと噂で聞いてましたが、その詳しいところは…」
 「でも、その噂は本当だったって事だものね」
 「はい、そうです。奈美子との事が引き金になったのは間違いないでしょうし、別れた奥様とは以前からも上手く行ってなかったようで…」
 流石にその辺りの詳しい状況までは、妻も知らないらしい。奈美子さんにしたって、あまり話したくはないだろうし。
 それにしてもだ。あの秋葉先生が奈美子さんを調教してる場面を想像しようとすると、人は見かけによらずと言うか得体の知れない興奮が湧いてくるようだ。


 その時、もう一つ気になる事を思い付いた。久美子と秋葉先生の事だ。
 妻は以前の教え子ーー秋葉先生の娘さんのストーカー対策を先生から相談され、解決に乗り出した。その時は勿論、奈美子さんの存在もあった筈だ。そして、探偵を使ってそれを解決した事が要因で私ーー寺田達夫の事を相談した…と、今夜の妻の説明だった。そう、妻がそこのパソコンの履歴から知ってしまった“夫”の変態的な性癖の相談も秋葉先生に…。


 「あなた…大丈夫ですか」
 暗がりから何ともしおらしい声ではないか。妻はその“しおらしい“声で、秋葉先生にどんな風に“夫”の相談を持ち掛けたのだろうか。先ほど口にしたような卑猥な表現をリアルに聞かせたのか。まさか自ら実演を!
 と思ったところで、股間がキュッと刺激を感じた。久美子が私のアレに力を加えたのだ。
 そして、私の下腹部へと身体を…いや、唇を持って行くではないか。
 股間のソレがぬるっと唾液に塗(まみ)れた途端、ううっと声が漏れてしまった。
 そして妻が、先ほどと同じように亀頭からカリ首までを舐めだした。
 私の口からはウウウッ、オオオッと早くも情けない呻き声が上がった。


 「あなたぁ…」
 唇を離した妻から再び、しおらしい声がした。彼女が私の腰に手を回してくる。そして私の身体を横向きに、それから犬の格好へと誘ってきた。
 私の身体は四つん這いに、妻の顔に尻を向けて畏まった。すると直ぐに、ソコがネチャっと拡げられた。あぁっ、久美子が私のアナルを、と思った瞬間、その中心にドリルのような…ううッ、これはアナル舐めではないか!
 しかし、それだけではなかった。股間の“ソレ”を握るとシゴキだしたのだ。
 暗がりの中にネチャネチャとアナルを抉る音と、時折りチュッチュッと金の袋に唇を這わす音が交互に聞こえてきた。硬くなった肉棒をシゴかれながらだ。


 私は意識が飛びそうになる合間に、妻のこの変貌を考えた。
 奈美子さんと秋葉先生の情痴の戯れを知り、その上に私のエロ履歴を知って、刺激を受けたのが原因なのか。
 そんな事を考えながらも絶頂が近づいて来る!っと思った時だ。
 「あなた…アタシも…お願いします。…今度は上から」
 あぁ…又もしおらしい声だ。


 私は意図を察知して仰向けになると、妻を腰の上に導いた。
 彼女は直ぐに私のソレを握って自身のソコに充てがった。私の硬度は充分に保たれている。
 ググっと沈み込むと、妻の膣(ソコ)がジュルジュルに泥濘んでいるではないか。妻も自ら語る事で濡らしていたのだ。


 「はぁぁっ、ウウウッ…あなた、気持ちいいですわぁ」
 噎(むせ)び泣くような声の方を向けば、妻の表情がぼんやりと分かる。この角度なら常夜灯の灯りで分かるだ。その妻が「あぁ堪らない…」と呟けば、私は下から膣(つま)を突き上げた。
 「んーーッいいッ!」
 悲鳴に近い声を響かせ、妻は膝を立ててきた。そして両手で私の腰回りを掴むと、自ら腰を上下に振り始める。その揺れに乳房もユサユサと揺れ始めた。乳房の真ん中、乳輪が目玉のように見える。
 あぁ、この姿はあのマジックミラーのガラス窓に貼り着いていたヤモリじゃないか。そう、歳の差夫婦の方の奈美子さんの痴態だ。いや、ちょっと違うか。これはカエルだ。先ほど妻の口からも出た、秋葉先生の命令に応えた妻の友達の奈美子さんの痴態がこれではないのか。


 「いいッ、いいのぉーーッ!」
 妻が雄叫びを上げた。その口からニュルと舌が伸びてきた。そして宙を舐め回し始めた。
 あぁっ、これは擬似3Pだ。まさか久美子は3Pを…やった事があるのか!それともやりたい気持ちがあるのか!と私の思考が掛け上がっていく。
 その時ふっと二人の視線が合った。薄闇の中でも、そう感じたのだ。
 妻がニヤッと笑った…気がして身体がゾクゾクっと震えてきた。


 「あぁ…あなた、見ててぇ…」
 甘ったるい声を吐いて、妻が腰を少し浮かせる。ソコとソコが繋がったまま、彼女が身体を回す。背中を向けての騎乗位だ。
 「あなたぁ、もっと下さいっ。久美子をもっと突いてぇっ!」と、妻の膣(ソコ)が私を締め付けてきた。


 妻の懇願にも、既に限界が近づいていた。
 「ううう、ああっ…」今夜3度目の射精がやってき来そうな気配なのだ。
 顎を上げれば直ぐそこに不浄の門。臀(ケツ)が上下される度に、妻のアナルがヒクヒクする。この画も又、エロサイトの記憶そのものだ。あぁ…いつかこの穴に、私のコレを挿(い)れる時が…と思った瞬間、今夜最後の爆発を迎えたのだった…。
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  薄暗いベッドの中で、妻の口から出た思いがけない言葉ーー寝取られ。
 妻がそこにあるパソコンの履歴から“夫”の決して人様には云えない性癖を知ってしまった事は事実で、それをこれから、改まって口にされると思って私の心は震えていた。


 「アタシ…あなたの履歴からエッチな寝取られ小説を幾つか読みました。その中に『寝取られで興奮を味わいたいのなら“妻の一人語りに限る”』と言う1文がありました」
 予期せぬその一言に、鼓動が跳ね上がった。確かにその文章は覚えている。


 「男の人の中に、そういう趣向を持った人がいる事も知りました」
 「………」妻は趣向と口にしたが、それこそが“癖”だ。そして“持った人”とは間違いなく私のような人間の事だ。


 「それを今から語りますので…聞いて下さい…」
 妻の語尾が微妙に震えていた。彼女も緊張しているのだ。
 ゴクリと息を飲み込み、恐々隣の妻を覗いた。しかし、その表情は影になって分からない。


 「以前の事なんですけど…実はアタシ、職場の上司のような人と親密な関係になった事がありました…」
 いきなりのその言葉に、心臓が縮み上がった。もしや妻は、過去をカミングアウトでもするつもりなのか。
 「その人は当時、課長で結婚もされていらっしゃいました。だけど奥様とは上手くいっておらず、色々と悩んでおられました」
 あぁ…。
 「最初はアタシが仕事を教えて貰ってる立場だったのですが、そのうちにアタシも“彼”の悩みを聞くようになりました」
 妻が無意識にだろう『彼』と口にしていた。それに学校の事を『職場』、学年主任の事を『課長』と教師特有の隠語で云っていた。自然と癖(クセ)が出たのか。


 「彼…いえ、その人とは何度かプライベートでもお酒を呑むようになりまして…」
 「………」
 「ある時、アタシもその人もストレスの絶頂の時があって…」
 「………」あぁこの展開は…。
 「それで、酔った勢いでホテルに…」と、妻が苦しそうに口にした。私はンググっと声に出ない呻きを上げている。


 「それからその関係が…」
 妻が間をおき、こちらを窺ってくる気配だ。私の方は口を利こうにも粘りついて上手く開きそうにない。
 「あなた…」
 妻の呼び掛けは、表情を読み取れない私への問い掛けか。
 唾を飲み込んで私は「つ、続けて」と、何とか口にした。私の方も昨日、いや日付けが変わってるとしたら一昨日になるが、浮気をしてしまっているのだ。ここで妻の告白を聞かないわけにはいかない。


 「はい。それで、その関係が暫く続きまして、その人は離婚していなかったから不倫の関係です」
 妻の口から『不倫』と言う言葉を耳にすると、身体に電気が走った気になってしまう。
 そして…まさか妻は、それを純愛と想っていたりして…とも考えてしまう。


 「関係が続いていきますと、その人は別の顔も見せるようになりまして…その手のホテルに入ると、普段とは全く違う顔を…」
 あぁ、それもまた寝取られ小説によくある話ではないか。
 「ええ、とても口には出せないような卑猥な事を…」と云って、妻が私を見上げた…気がした。
 私は妻の暗い輪郭を見詰めながら頷いた。そうなのだ。私のどうしようもない癖が、その卑猥な内容を聞きたがっているのだ。


 「あぁ…あなた…◯◯◯◯のですね」
 妻の語尾が“よろしい”のですね、と聞こえて、私はもう一度頷いた。
 「彼は…」
 あぁ、またも“その人”が『彼』に変わった。それだけで身構えてしまう。
 「彼は、アタシが見た事もない卑猥なランジェリーをネットで取り寄せて、それを持って来るようになったんです」
 あぁ、頭の中にアレが浮かぶ。おそらく…いや、間違いなくアブノーマルなやつだ。
 「ええ、黒や赤のSMチックなブラやショーツです。彼はソレをアタシに着せて色んな格好を…」
 「あぁ、そ、それはどんな格好…」
 私の反応に、妻の身体が密着してきた。そしてサワサワと私のお腹辺りを擦り始めた。


 「はい、テーブルの上に乗ってカエルみたいな格好をした事もありました。犬の格好になって廊下を歩いた事もあります」
 「あぁ、ほ、他には…」
 「はい、ストリップをやらされた事もありました」
 「ス、ストリップ!」
 「ええ、彼の前で一枚ずつ脱いでいくんです。ブラを外してオッバイをこう押し上げまして…。次にショーツを…はい、お尻を向けて、突き出して…ユックリと下ろしていくんです」
 「あぁ…」
 「彼はその間、何も言わずにジッと見てるだけなんです。アタシはそれだけでモジモジしてくるんです」
 「………」
 「それで、暫くしますとアタシの方から、媚を売るような声が出てしまうんです」
 「ううッ、そ、それはどう言う…」
 「あぁっん、それを…云うんですか」
 「ああ、た、頼むよ」
 「…あなたってやっぱり」
 その時、妻の手が私の股間に触れた。ソコはいつの間にか硬くなっている。
 妻は一呼吸おいて「あぁ、告(い)いますわね…はい、もっと見て欲しいです…アタシの恥ずかしい姿を…って」
 「ああっ、そんな事を云ったのか!それでやったのか、その恥ずかしい格好を…」
 「えっええ、背中を向けたまま足を拡げまして、手を床にぐーっと下ろしていきまして…」
 あぁ、それは“例”の格好ではないか。


 「アタシって身体が軟らかいじゃないですか。それで膝を曲げずにピタッと手を着けたんです」
 「あぁ…そして“彼”がソコを…」拡げたのか…と聞こうとしたが声は途切れてしまっている。
 それでも妻は、私の意図を察知したのか「いえ、彼は命令をしてきたんです」
 あぁ…と言う事は。
 「はい、ストリップですから、自分で拡げろと」
 「うっ!じゃあ自分でソコを!」
 「はい、お尻の肉を両手で外側から掴みまして…グイッと」
 あぁ!その格好は記憶の中のエロ画像そのものだ。


 「か、彼はそれでどうしたの」
 「彼は最初は黙って見てるだけでしたわ。でも…」
 「でも?」
 「はい。ずっと黙ったまま見られてますと、身体がムズムズしてきまして、何か言葉を掛けて欲しくなってきて…お願いしたんです」
 「そ、それはどんな…」
 「ええ、エッチな、ひ、卑猥な言葉を…」
 「そ、それは、具体的にどんな言葉だったの…」
 「い、云うんですか」
 「あ、あぁ…うん」
 「あぁ…はい。彼は『久美子、ア、アソコが濡れてるぞ。どこの事か分かるよな』って」
 「そ、それで」
 「はい。オ、オマンコです。久美子の厭らしいオマンコです、って」
 「い、云ったんだね…云ってしまったんだね」
 妻の久美子は私より先に、オマンコ…その四文字を男に聞かせていたのだ。


 ショックを感じた私だったが「ほ、他には」と恐々ながら次の言葉を誘っている。
 「彼は向きを代えるように言いまして、こっちを向いてMの字でしゃがめと」
 んあぁっ、それも分かる。分かってしまう。それもエロサイトで何度も視てきた画像と同じ画(え)だ。
 「それで、言われるまましゃがみましたら、片手を付いて腰を浮かせろと。はい、それで片方の手で拡げろと。そのままソコを指をVの字にして拡げるんだ、と」
 「そ、それもやったのか!」
 「はい、すいません。その時は頭がボォっとしてまして、いいなりでした」
 あぁ、その時の妻は“その男”の傀儡だったのか。と思ったところで改めて思い出した。その彼氏も私達と同じ教師なのだ。


 「いいなりのアタシは、色んな事を受け入れました。はい、オモチャです」
 「オモチャ!?」
 「はい、彼は大人のオモチャと呼ばれる性具もネットで買ってたんです」
 「久美子はソレを使われたのか!」
 「はい、とても大きくて休まる事の知らないやつです。ソレをアソコに…」
 「そ、ソレを受け入れて…」
 「はい。それをアソコに突っ込まれたり、時にはソレを咥えさせられたまま下の口では」
 んぐっ、久美子が『下の口』なんて表現を。


 「く、久美子はその責めを感じてたんだな。そうだろ?」
 「はい、とても感じてました。何度も天国に昇る気分でした」
 「そ、そんなにか!」
 「ええ。でも、その肉体的な責めもそうなのですが、言葉で厭らしい事を言われたり、言わされると身体が熱くなって、頭の中が真っ白になるんです。それに変態チックな格好を無言で見詰められてると、アタシ自身も堪らなくなるんです」
 「ああ、それはさっきも言ったストリップの事だな」
 「ええ、それもありましたが、露出を」
 「えっ露出!…露出って」
 「はい、彼との関係が進んで行くうちに新しい刺激を求めあうようになりまして」
 ううっ、それにしたって露出とは…。それと『求めあう』とは、どう解釈すればいいのだ。その時の二人は主従関係の元、性への深淵を歩んでいたとでも言うのか。
 私の心は重石がぶら下がってる気分だった。それでも私は、もう一つ気になっている事を聞く事にした。勿論、勇気を振り絞ってだ。


 「そ、それでまさかだけど…二人の中に他の男を呼ぶ…って事は」
 告(い)ってしまって私は、意味が伝わったかと考えた。
 しかし…。
 「それは貸し出しとか複数プレイの事ですよね」と妻から確認の問いではないか。
 その瞬間、あーーーッ、身体が痙攣が起きたかのように震えだした。なぜ、そんな言葉を軽々と!
 さすがの私も、一気に血が昇った。思わず身体を起こして「ひょ、ひょっとしてやったのか!おい!」と妻の顔を睨み…つけようとしたが、彼女の表情(かお)は暗がりの中だ。


 それから暫く、部屋の中に私の荒い息遣いの音だけが流れた。妻の方も黙り込んでしまっている。口にした事を後悔しているのだろうか、と思った時だ。
 闇の中から、ふふふと奇妙な笑い声が聞こえてきた。勿論、発したのは妻だ。
 その笑いが次第に大きくっなっていき、そして…。
 「あ、あなた…ププッ、じょ、冗談なんですよ。ふふふ」
 「え!?」
 「は、はい、すいません。今の話しは嘘です。アタシじゃありませんからね」
 「なっ、ど、どう言う事?」
 「うふふ、実は造り話…知り合いから聞いた話なんですよ。それを自分に置き換えて…」
 あぁ…まさかそんな…。久美子まで渋谷君と同じように造り話を。


 「ほ、本当に?」
 「…はい」
 「じゃあ、今のは誰の話なの」
 「………」


 妻は私の問いに、一瞬迷った様子だった。すると彼女の手が私の下腹部のソレを握った。
 そして「あなたのココ…こんなに硬くなってますネ」
 「………」
 「やっぱり“妻の一人語り”は効くんですね」
 「アアッ!」
 「うふふ、でも今の話は云ったようにアタシの話ではないんですよ」
 「だ、だから、誰かって…」
 「えへ、あなたって口は堅かったですよね」
 「あ、ああ」と、ぎこちなく頷いた。私の様子に妻は苦笑いを浮かべた感じだ。


 「では、絶対にナイショですよ」
 と、妻から新たな話しを聞かされたのだった。
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 私は右手に黒いマスクを握っていた。全頭マスクと呼ばれるSMチックなやつだ。
 鏡には裸の私と、顔を伏せた女が映っている。女の膣と私のソコは繋がったままだが、腰は止まっていた。
 私は思い出したように、黒マスクを左手に持ち直した。そして右手で、女の右耳に掛かる髪を掻き上げた。一瞬、女の膣が私のソレを噛み締めた。それでもそのまま顔を近づけ、耳下の黒い点に目をやった。
 そこには間違いなく“黒子”があった。
 と言う事は、この女は妻で良かったのだ。
 しかし…。
 妻の手が私の手を払いのけるように、自分で髪を掻き上げた。はっきりと黒子を見せようというのか。
 私はそこを凝視しようと、最度顔を近づけた。
 ところが女の小指が、黒子に触れたかと思うとカリカリと掻き始めた。
 その瞬間、昨日、秋葉先生が口にした言葉を思い出した『…奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ…たまにシールを貼る事がある…』
 シール!
 まさか…。
 唖然とする私の目に晒されながら、ポロリと黒く小さな塊が剥がれ落ちた。


 ガチャ。その時ドアの開く音がした。
 顔を向ければ、そこにはなんと、秋葉先生ではないか。更にその後ろには…。
 それは、黒い全頭マスクを被ったもう一人の女だった。
 女と繋がったまま、私は呆然となっている。
 そんな私に「ふふふ」秋葉先生の嬉しそうな含み笑いが聞こえてきた。
 「奈美子、どうだね寺田君のチンポは」
 ああッ、奈美子さん!。
 「あなたぁ、寺田先生のおチンポいいわぁ、やっぱりアタシのマンコにピッタリみたいよぉ」
 その声は間違いなく、あのシティホテルの薄暗い部屋の中で訊いた声だった。そして鏡の中、奈美子さんが顔を上げた。
 私は鏡越しに、その顔を見詰める。久美子に似てはいるが、確かに奈美子さんだ。となると、秋葉先生の後ろで佇む黒マスクの女が…。


 私の何とも云えない視線を受けながら、先生が後ろにいる女の肩に手を回した。
 「寺田君、君が奈美子とオマンコしてるって事は…ふふっ、僕は“この女”と犯(や)っていいって事だよね」
 えっ!
 「ええ、そうよ。アタシも気持ちいい事してるんだから、あなたも犯(や)ってぇ!」
 奈美子さんが、私と繋がったまま先生に訴えるように声を張り上げた。
 彼女の声に頷き、先生が女の手を引いて隣へと寄って来る。奈美子さんの方は“私”を逃すまいとするかのように、膣の締め付けを強めてきた。
 「ねぇ、寺田先生も止めないでぇ、もっとアタシのオマンコ突いてぇッ」
 蜜を塗したような甘ったるい声。秋葉先生の方は奈美子さんの声質にか、口元を歪めて変質者のような笑みを漂わせている。


 「さぁ久美子君!」
 あぁ…遂に、先生の口からその名前が。
 私は衝撃を覚えながら、黒マスクを見た。身体は震えてみえるが、抵抗はみられない。それどころか、二人の口が重なっていく。
 久美子が唇を許している…。
 「うふふぅ…寺田先生ぃ、アソコが膨らんで来たわよぉ」奈美子さんのアソコが、更に“私”を締め付けてきた「もっと突いてぇ、ほらほらぁ」


 隣では口吻したまま、先生が久美子の上着に手を掛けた。
 久美子はされるままに、素肌を曝されていく。
 やがて裸体が現れた。見るからに奈美子さんと良く似た裸体だ。
 黒マスク一枚で全裸になった久美子が震えている、ように観(み)える。その横では、先生までもが服を脱ぎ始めた。
 「さぁ早く、久美子もアタシの隣でオマンコ犯(や)りましょうよぉ」奈美子さんが又も甘ったるい声を吐き出している。
 服を脱ぎ終えた先生が妻の背中を押す。久美子が奈美子さんの隣、両手を鏡にあてた。


 「久美子君も向こう側から、モヤモヤしながら覗いていたんだよな。旦那と親友がオマンコしてる所を覗くのはどんな気持ちだったんだい」
 そう云って、先生がバチンっと久美子の尻(ケツ)を一打ちした。
 「いや~んッ」むせび泣くような鳴きが上がった。間違いなく久美子の声だ。
 久美子が腰を引いて、奈美子さんと同じように中腰になる。
 鏡の中に、二つの顔が並んだ。一人は素顔で、一人は黒マスクの妻だ。
 「寺田君、見てごらん。僕の方はこんなに硬くなってるよ」
 先生を見れば、股間のモノを指さしている。天に向かって聳え立つ牡のシンボルだ。
 「ふふ、一時は元気がなかったけど今はコレだからね」
 ソレを握って見せつけるこの“男”。その先生の貌が醜く歪んでいく。


 「では、久美子君のマンコを見せてもらおうかな」そう云うと先生が屈んだ。すると直ぐに、ネチャネチャと厭らしい音が聞こえてきた。
 「ああ凄いッ、凄いよ寺田君。久美子君のマンコ、ビショビショじゃないか」
 その声に私のソコがキュンとなってしまった。


 「ぐふふ、じゃあ、さっそく頂くとするか」
 秋葉先生がソレを握ると立ち上がって、妻の後ろから破れ目に当てた。まさに挿入の瞬間だ。しかし…。
 私に最後の判断を求めているのか、先生の目が見つめて来た。心の中に何時かの声が降って来る。
 『…こちら側の世界に…』
 これは白昼夢の世界か…いや、違う、奈美子さんの下の口に咥えられたアソコが、確かな“痛み”と気持ちよさを感じているのだ。


 私は心で妻に問いかける…。
 ーー久美子、いいのかい…。
 「…………」
 ーーいいんだよね?
 それから秋葉先生の目を見た…。
 そして…。
 私の頭がゆっくりと縦に揺れた。
 先生がニヤリと笑う。任せておけ、そんな声が聞こえた気がして、私はもう一度頷いた。
 すると。
 「んーーッ!」歪な響きが轟いた。先生が遂に久美子に挿入したのだ。
 「ほらッ、ほらッ、ほらッ!」
 先生がいきなり腰を激しく振り始めた。
 久美子の尻(ケツ)も激しく揺れる。その揺れが私の方まで伝わってきた。
 「ほら久美子、遠慮するな!」
 先生が妻を『久美子』と呼び捨てた。その現実にも私の身体の震えが増す。同時に奈美子さんへの突き上げが激しさを増した。


 鏡の中で黒マスクが激しく揺れている。その口元に手がニュっと伸びた。先生がマスクを捲る気だ。
 ゆっくりと…しかし、手際よくマスクが捲くられて、額が見えたかと思うと、遂に素顔が現れた。
 先生が無造作にマスクを投げ捨てて、俯く妻の口元に手を当てたかと思うと前を向かせた。
 「さぁ見せて上げなさい。貴女の厭らしい顔を、ほら!」
 声と同時に、先生の腰が妻をカチ上げた。その一撃に、妻の顔が跳ね上がる。しかし、前髪がへばり付いて表情はよく分からない。
 「さぁどうなんだ、旦那が見ているぞ。今の気持ちを教えてやれ」
 あぁ、久美子…。
 と、その時だ。
 「ヒヒヒッ、いっ、いいのおーーーッ!」
 動物のような奇妙な鳴き声が発せられた。


 「いいのよぉマンコがッ。アタシ早く、こんな変態な事、したかったの!」
 妻の声が変だ。表情もおかしい。妻は恐らく、あの薬を飲んでいる。
 その時、奈美子さんの声だ。
 「そうなのよ久美子、遠慮なんていらないのよ。旦那に本当の顔を見せれば楽になるのよ」
 奈美子さんの言葉に、私の身体は心底震えた。そこに又も、久美子の叫びだ。
 「そうよアタシ、奈美子より変態なのよ!」


 鏡の中に、卑猥な言葉を吐きあった二人が映って視える。中腰で突かれる二人の牝。
 私の勃起中枢がますます刺激されていく。血の気が引いて、何かが落ちていく感じだ。得体の知れない高鳴りが続いている。鏡に映る私の顔が、ますます歪んでいく。
 妻の表情(かお)は明らかに“逝って”いる。薬は自分の意思で飲んだのか、それとも上手く言い包められたのかは分からない。それでも、そんな事はどうでもよくなっていた。
 「寺田君、最高じゃないかッ」
 腰を抉り続ける先生の声に「ひゃひゃひゃ」私は奇妙な笑いを返した。
 この狭い空間の中で、新たな変態夫婦が誕生していたのだ。


 それからの事はまさに、白昼夢のような世界だったーー。
 秋葉先生と妻が繋がった部分に唇を持っていき、シャブったりもした。
 妻が四つん這いで突かれれば、妻の口に私のソレを咥えさせた。その私の唇は奈美子さんと口吻を繰り返した。
 奈美子さんを正常位で突き刺した私のアナルを誰かが舐めてきた。勿論、妻しかいない。狂気の声を上げて私は、久美子に飛び移った。鏡の前で立ちバックに誘った。鏡に曝す妻の顔は、完全にラリった顔だった。その貌に魅入られながら私は突き続けた。頭の中には、いつかのシーンが浮かび“押し車”を試みた。先生達の嘲笑にさえ興奮を覚えながら、私達夫婦は部屋の中を奇妙な格好で歩き廻った。


 私達4人の交わりは、いつ果てたかは分からない。薬をやってない私だったが、逝く度に女どもがシャブって来たのだ。それはもう、どっちの女か分からなかった。それほど頭の中が弾けていたのだった。
 やがて、我々4人は精魂尽きた果てたかのように、眠りに落ちていったのだった…。


  どのくらい眠っていただろうか…。
 ゆっくりと瞼が開いていき、その目に天井が映った。いつの間にか床の上で寝落ちていたのか。
 身体を起こそうとして鏡の方を向いた。鏡の前では、秋葉先生が眠っているようだ。その身に覆い被さるように身体を預けているのは奈美子さんか。
 妻はどこだろうか、と立ち上がろうとして気がついた。ベッドが揺れてる気配。そして怪しい息遣いだ。
 私はバッと背中の方を振り向いた。
 ベッドの上で、女ーー久美子が騎乗位で腰を振っているではないか。
 相手は誰だ!
 知らない男だ。
 これは夢か。それこそ白昼夢か!?
 しかしその時だ。カチャリと部屋のドアが開くと同時に、人影が現われた。


 「やぁ、いい画(え)が撮れていたのに、バッテリーが無くなってしまったよ」と、一人言でも云うように部屋の中へと進んで来たのは、神田先生だった。
 「それにしても、凄い匂いだねぇ、性臭の匂いとでも言うのかな」
 神田先生の言葉に、思わず私は自分の股間を隠そうとした。そんな私の様子など気にせず、先生が続ける。
 「寺田先生のソコも、尻の穴もバッチリ撮らせてもらっからね。勿論、久美子君もな」
 先生が笑っている。その笑みが腰を振り続ける久美子に向く。
 「撮った動画は大切に保管させてもらうよ。これからは君達にも協力者として活動してもらいたいしね」
 「そ、それは…」人質みたいなものですか…と続けようとしたが、そんな事よりも…。
 「ああ、この“彼”かい。誰だと思うね」私の表情を察した先生の声だ。
 先生の問い掛けに、私は妻達を改めた。妻の喘ぎ声は止みそうにない。
 「ほら、秋葉君の娘の元彼でストーカーした男がいただろ。それがこの彼じゃよ」
 「えっ、どういう事ですか!」
 「実はな、この彼も教師だったんじゃよ」
 ええッ!
 「そう、教師のくせに以前の教え子と付き合って、別れたあげくにストーカーになったとは言語道断だわな」
 「……….」
 「でもな、彼にも悩みがあるのが分かって、久美子君が色々と訊いてあげたんじゃ。うん、その悩みが病的なストレスから来るものだったんでな…。まぁ、ここまで話せば事の成り行きは理解できるだろ」
 「そ、そんな事が…」
 妻達はと、二人を覗けば完全に桃源郷の世界だ。それを眺める私のアソコが再び硬くなってきた。


 「それでだ、寺田君」
 ハッと顔を上げれば、嬉しそうな先生の顔だ。
 「さっきも云ったが、あなたには協力者になってもらうぞ。ほら、久美子君をご覧なさい。彼女は既に協力してくれておる。悩み多き教師の救済なんじゃよコレは」
 神田先生の言葉を頭の中で反芻しながら、腰を振り続ける妻を見詰めた。妻の蕩けきった表情は、薬が原因かもしれない。それでも…。
 先生に向き直り、顔をジッと見詰めた。
 心の中に声が降りて来るーーこれで良いのだ。これが良いのだ。
 そして…。
 私は、先生の目を見ながら黙ったまま深く頷いたのだった。




 エピローグ


 あのマジックミラーの部屋で、破廉恥な交ぐわりをしてからの私達ーー神田先生からのミッションは今のところないが、私の性癖は満たされていた。週に何度か“妻の一人語り”があるからだ。
 日常においては、久美子は週に1度奈美子さんと堂々と体操教室に出掛けている。
 私の方は暇があれば、相変わらずの古本屋通いだ。あの“白昼夢“みたいな本に出会えないかと、足を運んでいるわけだ。
 そして今日も、目的の本屋に向かっているところだった。


 最寄り駅で降りて、いつもの商店街を進むと、向こうから懐かしい顔が歩いて来るのに気が付いた。
 「渋谷君!」
 「あれ~寺田先生じゃないですか」
 久し振りに見る彼は、清々しい雰囲気だ。
 「その節はお世話になりました。渋谷君は元気でやってましたか」
 「はい、おかげさまで。寺田先生の方は如何ですか。 “ご活躍”はこれからだとか」
 彼の明るい口調には、苦笑いが浮かんでしまう。
 「活躍って、神田先生からミッションの依頼はまだ無いから、僕の方は相変わらずで、今も古本屋に行く途中だったんだよ」
 「そうでしたか」
 「ところで渋谷君の方こそ、何で又こんな所へ」
 「ああ、云ってませんでしたっけ。僕、そこの予備校に通ってるんですよ」
 「え!予備校は辞めたんじゃなかったの」
 「ええ、2年くらい前に1回辞めてるんですけど、実は又行き始めたんですよ」
 「そうだったんだ。でも又、なんで?」
 「ヘヘ、実はですね、大学に進んで教師を目指そうかと思って」
 「ええっ、教師!?」
 「そうなんです」
 「どうしてまた…」
 「うん、先生になって、病的な悩みを持つ同僚達を救ってやろうと思いましてね」
 「あぁ…」
 「ええ、女性教師には“俺”が直接。男性教師には、そうですね、奥様にでも協力してもらって、上手く“こっち側の世界”にね」
 ウィンクして見せた彼を見詰めた。彼の表情(かお)には、悪戯っ子のような笑みが浮かんでいる。
 私は彼とのやり取りを何処か懐かしく想いながらも、怪しいミッションを心待ちしている自分に気が付いた。そして、目の前と同じ悪戯っ子のような笑みを浮かべたのだった。


 おしまい。
 サンきゅー(`・ω・´)ゞ
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 私は神田先生の横を歩きながら、前方に立ち並ぶビル郡を見据えていた。周りでは、この日も普通の主婦にしか観(み)えない熟年女性や、意味ありげなカップルが行き交っている。


 「 “あそこ”は行った事があるんだよね」
 前を向いたまま、先生が顎をしゃくった。
 「え、ええ」
 「うん、優作君の“仕事”に付き合って、覗き役をやってくれたんじゃろ」
 「そ、そうなんです」
 「ふふっ、その覗きの相手が秋葉君夫婦だったと知った時はビックリしたじゃろ」
 「は、はい、それはもう…」
 私はそこまで口にしたところで、頭に浮かんだ疑問を訊く事にした。
 「あのぉ、訊きたかった事があるのですが、よろしいでしょうか」
 先生は前を向いたまま頷く。
 「秋葉先生から悩みの相談を請けた時に、疑似夫婦だとは分からなかったのですか。嘘の告知を受けたとは思わなかったのでしょうか」
 「ふふふ、そんな事か。確かに最初会った時、彼は“妻“と言う言葉を使っていたが、彼が離婚してる事は以前から知っていたからね」
 「え、そうなんですか!」
 「ああ、優作君には細かい事まで教えなかったが、私は知っていたんじゃよ。さっきも云ったが、狭いコミュニティだからね。それに“奥さん”の方も教師じゃったし」
 「あっ!」
 「そう、それを分かってて彼の相談に乗って、色々と提案をしてきたわけじゃよ」
 「あぁ…」
 その時、先生の足が止まった。
 「さぁ、着いたぞ」
 いつの間にか、目の前には昨日も見たばかりの雑居ビルだ。


 神田先生がゆっくりエントランスへと入って行く。私はその背中に声を掛ける。
 「中に秋葉先生がいるんですか」
 「いや、少し遅れて来る事になっておる。けど“準備”は整っておるから」
 告げ終えた先生の表情(かお)には、意味深な笑みが浮かんでいた。その先生がエレベーターのボタンを押す。
 到着したエレベーターに乗り込めば、更に緊張が高まってきた。
 「なぁに、今日はさっきも云ったが教師連中の狭いコミュニティで、皆が性癖を共有し合う為の一歩じゃよ」
 先生の言葉の意味は、咄嗟には理解出来なかった。だが、性的な催しが行われる事は覚悟出来た。勿論、その予兆は感じていた事なのだが。
 やがてエレベーターは目的の階に止まり、再び怪しい入口を潜る事になった。


 事務所の様子は記憶通りで、殺風景な部屋の中を、一人の若者がパソコンと向き合っていた。以前にも見た事のある彼だ。その彼は先生に「ちわっス」と頭を下げると直ぐに又パソコンに向いてしまう。
 「寺田先生、彼は上野君といって、前から私らの仕事を手伝っておる子なんじゃ」
 先生は彼を紹介したつもりなのだろうが、その上野君とやらは上目遣いに私を見ただけだ。私は軽く頭を下げながら、奥に進む先生を追った。


 狭い通路のようなスペースには、これも記憶通りの大きな鏡があった。
 「やっと着いたな。あぁ、膝が痛い」
 先生が膝を摩ってから、鏡の横のスイッチに手をやった。
 パチパチっと光が瞬き、鏡がスーッと透けていく。あの時と同じように、向こう側に部屋が現われた。
 中を覗いた私は、あっ!と声を上げた。そこに全頭マスクの女がいたのだ。


 「神田先生…これは」
 「ふふふ、どうしたね。想定内の事ではないのかね」
 あぁッ…噤んだままの口から、唸りが溢れる。
 「さて、この顔だけ隠して、一糸も纏わぬ姿を曝しているのは、どこの誰じゃろうなぁ」
 先生の言葉を訊くまでもなく、私の目は部屋の中の裸体に引き寄せられている。


 「さっそく女に“客人”が来た事を教えてやるか」
 そう呟いた神田先生の手には、スマホが握られていた。そして、落ち着いた様子で掛け始める。向こう側では、全頭マスクの女がスマホを手に取った。
 ガラス窓を挟んでやり取りを始めた二人。私はその両方を交互に見た。先生の口からは小さな声で『寺田君が…楽しみに…』と聞こえて来る。
 女の方は俯き気味にコクコク頷いている。その素振りからも緊張が窺える。
 「さぁ、この女の勇気と覚悟を拝見しようか」と、先生がスマホを閉じながら告げてきた。


 女がスマホをベッドに置いて、ガラス窓ギリギリの所まで進んで来る。女の目の前は一面鏡で、そこには自分の卑猥な姿が映っている筈なのだ。
 私は息を詰めて女を見つめる。女の裸体は妻とそっくりだ。ひょっとして女は…いや、やはり久美子なのか、と秘めていて想いが頭を過ぎった。
 今朝いきなり“急用“が出来たからと出掛けた妻。久美子は、同じストレスを抱える同種の教師の為に、その身を捧げる決心をしたのだろうか。その覚悟を示す振る舞いを、夫の私の前で行おうとしているのか。
 女ーー久美子(?)がその場で足を拡げていき、膝を張ってガニ股開きで中腰だ。両手は首の後ろで組まれて、あの夜の妻と同じ格好…そう、マゾ気質の女が、不自由な姿勢で無抵抗の意思を示す姿だ。


 「ん、どうした寺田先生。女と奥様を重ね合わせておるのかな」
 「ううッ、この女性はやっぱり…」
 「さぁ、どうじゃろうな。まぁ、始まったばかりじゃし楽しみにしてなさい」
 「………」
 口を閉じた私の前では、女が腰を廻し始めている。そのぎこちなさも、妻とそっくりだ。
 私は更に前へと顔を寄せた。鼻の頭がガラス窓にあたる。そこで抉るように目の前の肉体を見詰める。
 豊満な乳房も記憶通りのものだ。その下の剛毛も。パンツの中、私のアソコが硬くなってきた。
 と思った時だ。女の舌がニュルっと伸びて、宙を舐め回し始めた。そして両手で、胸の膨らみを鷲掴んで揉み出した。時おり股間の剛毛を掻き分ける。突起を弄り、膣穴にも侵入を始めた。これは完全に自淫の構図ではないか。
 朱い唇が艶めかしい。その唇が、堪らないわ、そんな言葉を吐いている、ように映る。


 女の揺れは、ますます激しさを増していった。腰が左右上下に揺れて、乳房もユサユサ揺れている。そして遂に、その身体がガラス窓に突っ伏した。
 しかし女は、そのまま乳房を押し着けた。乳房はそこで、グリグリ擦り付けられていく。潰れた乳房の中心、乳輪は目玉のようだ。股間の恥毛も、海藻のようにへばり付いている。
 頭の中で記憶が蘇る。これは、あの夜の“ヤモリ”だ!


 息を付くのも忘れたように、私は女の痴態に魅入られていた。
 やがて女がクルッと背を向けた。いや、尻を向けた。
 今度は中腰で尻を押し当ててきた。女は後ろ向きで、股座の中心をガラス窓に擦り付けるのだ。
 ガラス窓に貼り付いた女のアソコはアワビのようで、そのグロさは奇妙にエロチックだ。
 目を凝らせば、女のソコが濡れている。変態的な姿を曝して、早くもビショビショにしているのだ。


 「ふふふ、どうだね、この女、あなた好みの変態女かね?」
 その声に顔が跳ね上がった。
 「ふふっ、分かってると思うが、この女(ひと)も教師なんじゃよ。こうやって自分の性癖を満たして、自身のストレスも解消しておるが、免疫も付けているのじゃよ」
 「免疫、ですか?」
 「そうじゃよ。さっきも云ったが、いずれこの女にも協力してもらって、教師仲間の“欲”を満たしてやるんじゃ。そう、性欲をじゃ」
 「そ、それはひょっとして、性的な事件などを起こさないように、一種の捌け口にでもしようと考えているのですか」
 「ふふっ、あなたも分かってきたじゃないか。その通りだ。この女も、ようやく理解をしてくれてね。しかしその為には、ある程度の免疫を付ける必要があるわけじゃよ」
 「その実習みたいなものなのですか、コレは…」
 「ああ、その通りじゃ。それにな…おっ」
 先生の声に前を向き直れば、女の臀部の揺れが激しくなっている。ガラス窓にディルドでも着けて、擬似セックスをしているようだ。
 「女も高まってきておるな。では、そろそろ寺田先生の出番じゃな」
 ええッ!その声に衝撃が走り抜けた。私を呼んだのは、そういう事だったのか…。


 「さぁ、ここで脱いで行くか?中でも良いぞ」
 先生の表情(かお)を見れば、愉しげな笑みが浮かんでいる。だが、有無を言わさぬ感じだ。
 「どうしたね。あの“薬”がないと出来ないかね?」
 ううっ!その瞬間、頭の奥で、甘酸っぱいような、懐かしいような、そんな匂いが広がった、気がした。
 「寺田先生、さぁこの女との“契り“を見せておくれ」
 あぁ、久美子…。
 「あなたも、本当は私らの仲間になりたいのだろ。そんな事は分かっておるんじゃ。さぁ、ここらで覚悟を決めるのじゃ」
 私は黙ったまま、先生の顔と黒マスクの女を交互に見た。やがて身体が、フラフラとマジックミラーのドアへと進んだ。振り返る事もなく中に入って行ったのだ。


 私が中に入っても、妻の方は中腰の姿勢のままで、鏡に股座を擦り付けていた。朱い唇からは、呻き声が漏れ聞こえてきた。そう、声は向こう側には聞こえないが、ここでは聞こえるのだ。
 やがて妻が、私に気づく。しかし、驚いた様子もなく腰を上げると近づいてきた。そして、黙ったまま私の手を取った。
 手を引かれて、鏡の際へと私達は進む。鏡には自分の姿がハッキリと映ってみえる。間違いなく私は今、あのマジックミラーの部屋の中にいるのだ。向こう側にいる神田先生は、私達夫婦の姿をどんな気持ちで覗くのだろうか。
 妻の方は、視られている事など頭にないのかもしれない。その妻が跪き、私の股間に唇を寄せてきた。久美子…私は聞こえないほどの小さな声で呟いた。


 ズボンのベルトがカチャカチャと外されていく。その音が妙に生めかしい。妻はまるで、餌にありつくように私のパンツを降ろしていく。
 下半身を曝した私は、チラリと鏡に横目を向けた。遂に私は、自身の濡れ場を他人様に見せるのだ。そんな私の一物は半勃ちで、久美子が匂いを嗅いでいる。
 黒マスクの口元から覗く唇が堪らなく厭らしい。その唇が私のソレを咥え込んだ。
 ジュルジュルと厭らしい音が零れ出る。唾液に塗(まぶ)される気持ち良さは記憶通りだ。しかしそれとは別に、身体の中に怪しい高鳴りが沸いてくる。ミラー越しとはいえ、他人に見られているという事が快感なのだ。
 頭の奥では、以前に読んだ寝取られ小説のシーンが浮かんでいた。夫婦揃って痴態を曝すシーン。こうなったら、犯(や)らねば、ならない。そんな想いが駆け登ってきた。アソコが痛いほど硬くなってくるではないか。


 妻の手を取り、立ち上がらせた。そして身体を、シッカリ抱きしめる。そして口づけだ。薄目に横を観(み)れば、鏡の中に怪しい夫婦がいる。
 プハっと唇を離して、妻の両手を鏡に着けさせた。そして軽く腰を引く。中腰で突き出た丸い臀部を見下ろせば、その丸味が、好きにして下さい、と訴えてる気がして屈み込んだ。そして割れ目を拡げてやる。ソコの奥は既に、ネットリと液まみれだ。その様に私のアソコがピクピクと波を打つ。私は硬度を携えたソレを握って立ち上がった。上着に手をやり、脱いでいく。
 やがて、鏡に映ったのは共に全裸姿の私達。二つの裸体を視ると、ゾワゾワと身体が震えてくる。しかし、これこそが待ち望んでいたトキメキではないのか。視れば、鏡の中の顔が醜く歪んでいく。あぁ…これが私の本当の顔なのだ。


 私は妻の臀部を一打ちした。さぁ久美子、覚悟を決めて一緒に白黒ショーだ。私達が変態夫婦である事を世間に知ってもらうのだ。
 それッ!心の中で気合いを入れて、泥濘に肉棒を突き刺した。
 「んーーッ!」朱い唇から、何とも言えない呻き声が上がった。この後に及んで、声漏れを気にしているのか。妻こそ、まだ恥じらいを覚えていると言うのか。
 それでも私は、妻の様子など気にせず腰を振り始めた。
 鏡の中では、怪しい黒マスクの女を犯す私。心の奥から、言いようのない興奮が湧いてくる。あぁ、私は…私も変態で間違いなかったのだ。この意識こそ待ち望んでいたものに違いない。勿論、妻と一緒という事が何よりの喜びなのだ。さぁ久美子、早く厭らしい声を上げてくれ。そして素顔を曝してくれ。


 額からは汗がポタポタと丸い尻へと落ちて行く。その汗を掬って、不浄の穴に塗りたくってやる。そして穴を拡げてやる。
 「久美子、尻(ケツ)の穴が丸見えだよ」
 鏡の中、卑猥な言葉を吐いた男の口元が歪んでいる。そうなのだ、声は向こうに聞こえないから、どんな厭らしい言葉だって吐けるのだ。
 「見えるよ久美子、僕のがオマンコに入ってるところが丸見えだ!」そう叫んで、腰に強度を加えてやった。
 「どうだ久美子、気持ちいいかい!」
 それでも久美子は、ウンウンと呻き声を漏らすだけだった。
 そんな妻の耳元に顔を寄せて囁いた「久美子の厭らしい声を聞かせておくれ。スケベボクロも見せておくれ」
 私は妻の顎の辺りからマスクの中へと指を送り込んだ。そして捲り上げる。と、あんッ!声が上がった。
 それでも私は腰を打ち付けながら、マスクを鼻の上へと捲り上げた。
 「いやーんっ」今度は、悲鳴が部屋中に響き渡った。同時にそれは、私の胸に衝撃となって伝わった。
 今の声は!
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 秋葉先生と【BAR 白昼夢】での話を終えた私は、真っすぐ駅へと来た道を歩いていた。あの薬ーーシンカノシズクでボォっとした頭は既にシッカリしている。
 最後に先生から告げられた言葉が、気にならないと言えば嘘になるが、私はなるべく気にしないようにしようと思っていた。
 駅が見えてきた時だ。渋谷君の顔を思い出して、彼にメール打っておこうと足を止めた。


 《渋谷君
 ご無沙汰しています。
 先般からの諸々の相談事ですが、何とか私自身の中で解決に至りました。
 妻との日常が充実に代わりつつあり、私のストレスも何とかなりそうな雰囲気なんです。
 渋谷君には、色々と心配と迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。
 今後、もし何かありましたら、相談するかもしれませんが、その時は又懲りずに相手をして頂けれればと思います。
 では、神田先生にもよろしくお伝え下さいませ。
 寺田 》


 硬い文面になってしまったが、送り終えるとフッと肩の力が抜けた気がした。
 彼からの返信は直ぐに来た。駅の改札前まで来た時だった。


 《良かったですね(笑)
 また何かあったら気軽に連絡下さい》


 あっさりすぎる内容だったが、渋谷君らしいと私は笑みをもらした。そして、まだ南口の体操教室にいるかもしれない久美子に会わないようにと、急いで改札を潜ったのだった。


 家に戻った私。
 妻はまだ帰っていなかった。
 着替えもせず部屋のベッドに横になると、これまでの事を色々と思い返してみた。


 ーー半年ほど前から急にストレスを実感するようになった私。その様子に気づいていた妻。その妻も又、病的なストレスを抱えていた。
 妻は私の事を心配して、奈美子さんや秋葉先生に相談していた。そこで“疑似夫婦”に翻弄されたり、私のパソコンを覗いたりして、妻自身も性の深淵に近づいてしまった。
 妻はストレス解消の一つとして、体操教室に通い始めていたが、どの程度解消に至っているかは分からない。
 私の方はと言えば、滑稽な姿だけを晒していた気がする。
 久美子に浮気疑惑を抱き、その相手を探ろうとしたが、結局のところ疑惑などなく、妻は教え子のストーカー対策をしていたのだった。その教え子と言うのが、秋葉先生の娘さんだったと意外な事実もあったわけだが。
 先輩ーー大塚先生の勧めで諸々と相談した相手、神田先生と渋谷優作君にも翻弄された。渋谷君は私を、M駅の南口の怪しい街に誘い、淫靡な造り話を聞かせ、そしてマジックミラーで、ある変態夫婦の痴態を覗かせたのだ。その夫婦が、秋葉先生と妻の学生時代からの友人でもある奈美子さんとの“疑似夫婦”だった事は今日知ったばかりだった。
 秋葉先生が悩みの相談をしていた相手も、渋谷君と神田先生だったと知った時は更なる驚きだった。頭の中に蔓延っていた“歳の差夫婦“が秋葉ー奈美子の疑似夫婦だった偶然には感動すら覚えてしまう。
 何れにせよ、ここ数日の妻は私好みというか本人の資質の開放もあってか、変態的な振る舞いをしてくれている。
 これ以上に私が望むものがあるだろうか…そんな事を考えつつ、睡魔を感じ始めていた。そして何時しか、眠りに落ちていったのだった。


 ーー目が覚めたのは何時頃だったか。
 瞼の開いた私の目の前には、妻久美子の顔があった。


 「あなた、起きましたか。ずいぶん長いお昼寝でしたね」
 「ああ、ゴメン、ゴメン」と、身体を起こそうとした。
 妻は私の様子を確認すると「お茶、淹れますね」と、笑みを浮かべて部屋を後にする。
 妻の後に続いてリビングに向かった私は、寝床で考えていた事を口にした。
 「あのさぁ、今日の夜だけど、例の“ごっこ“…アレを又やらないかい?」
 『ごっこ』とは、私達夫婦が何年か前に始めた文字通りの遊びだった。夫婦のマンネリを無くす為に、恋人同士だった頃に戻ったつもりで、別々に家を出て目的の場所で『久しぶり、元気だった?』と会って、腕を組むのだ。そして、お茶や食事をして、その後は手と手を繋ぎながら厭らしいホテルへと向かうのだ。最近も一度、久しぶりにその“ごっこ”をやっているのだが、ソレを今夜もやらないかと提案したのだった。
 しかし。
 「ごめんなさい。実は何だか身体の調子が悪いんですよ」
 「え、そうなの!」
 「はい。体操教室で身体を動かしてる時から、変な感じがして」
 「熱は?」
 「熱は無いみたいです。でも頭が…」
 「そうか…じゃあユックリ休んでおくれ」
 「ありがとうございます。たぶん、事務作業が立て込んでて、根を詰め過ぎてたんだと思います。でも、直ぐに良くなると思いますから」
 「それならいいんだけど…」
 「はい。それと、夕飯用にお弁当を買って来てるので、適当に食べて下さい」
 「うん、分かった。ありがとうね」
 そして妻は、申し訳なさそうに自分の部屋へと足を向けた。


 夜ーー。
 適当なところで夕飯用の弁当を一人で食べた私。
 妻は自分の部屋にこもったきりで、物音も聞こえない。本人が告(い)ってた以上に具合が悪いのかも知れない。私の方は昼寝をしたからだろうか、目がパッチリだ。
 そのせいか、この夜、眠りについたのは明け方近かった。




 日曜日、目が覚めたのは時計の針が10時を指した頃だった。
 起き上がって、いつものように枕元のスマホを手に取れば、見慣れた点滅に気が付いた。
 開けてみればメールが何件か入っている。
 まず目に付いたのは、妻の久美子からのものだった。


 《おはようございます。
 声を掛けても起きなかったので、メールにしました。
 体調の方はすっかり良くなりました。
 今日のアタシですが、急用が出来たので出掛けます》


 私はそのメールをもう一度読み返した。
 そこにあった“急用”ーーこれは気にならないと言えば嘘になる。しかし、久美子の体調が戻っているなら、それは良しとしないといけないだろうか…。


 心に引っ掛かりを覚えながらも、他のメールにも目をやった。取り立てて意味のあるメールは見当たらない。と思ったところでショートメールに気が付いた。
 このところショートメールを私に送ってくる相手と言えば、一人しか浮かばない。


 《寺田君、秋葉です。
 昨日の今日で申し訳ないのだが、昼からまたM駅まで出て来てくれないかな。
 久美子君には、僕と会うと云って出掛けても大丈夫だからね。
 では》


 読み終えると、暫く腕を組んで考え込んだ。
 確かに一昨日の金曜日に秋葉先生に送ったメールでは、土曜、日曜ともに時間が空いてると伝えていた。先生もそれを分かっていて、急な誘いをしてきたと思えるのだが。
 何処となく不穏な匂いも感じた私だったが、時間を決めて返信を送る事にした。


 軽く食事をして家を出る。
 久美子は既に出掛けているので、秋葉先生と会う事は黙っておく事にした。
 M駅での待ち合わせの場所は決めていなかったが、昨日と同じ北口でいいだろうと考えた。
 電車の中では、妻からのメールと秋葉先生からのメールを何度も見比べながら読み返した。
 今日はこれから、一体どういう話が待ち受けているのだろうか。


 電車がM駅に差し掛かった頃だった。スマホが震えた。開けてみれば秋葉先生からのショートメールだ。
 《今どの辺りかな。
 着いたら南口のロータリーの方に向かって下さい》


 南口の文字に、一瞬武者震いが起こってしまった。
 やはり、淫靡な“性的“な話の続きなのだろうか。
 電車を降りた私は、真っ直ぐ南口へと足を進めた。
 エスカレーターを降りて、目的のロータリーからタクシー乗り場の方を向いた時だった。
 「寺田先生」
 いきなり後ろから声を掛けられた。振り向けば意外すぎる人ではないか。


 「か、神田先生、どうしてこちらに…」
 それは、例の怪しげな老紳士、神田先生だった。
 「やぁ、久し振りだね。元気にしておられたかな」
 「は、はぁ、まぁ…」
 私の頼りない頷きに、先生は「ふふふ」と笑う。
 「秋葉君の代わりに私が迎えに来たんだよ」
 秋葉君…そう告げた先生の目が、怪しい光を放っている、ように観(み)える。その先生が続ける。
 「さぁ、さっそく行くとしようか」
 「あ、あの、どちらへ?」
 「ん、秋葉君から聞いておらんのか。じゃあ着いてきたまえ」と先生が笑った。


 歩き始めて暫くすると「ところで、優作君から聞いたが、貴方はだいぶ元気になったみたいだな。良かった良かった」先生が話し掛けてきた。
 「ワシの方は、最近膝が痛くてな。こうして歩いていても、時々ズキンとくるんだ」
 「そ、それは…」大変ですね、と云おうとしたが口が動かなかった。早くも緊張が生まれている。そう、私の勘は何かの予兆を感じていたのだ。


 「それにしても、人の出会いは偶然と縁に置き換えられるが本当に不思議なものだなぁ」
 落ち着いた口調で話す先生に、私の方は黙って頷くだけだ。
 「あなたと秋葉君達にも縁があったと知った時は、さすがのワシも驚いたよ」
 あぁ…やはり、この先生の耳には事実がシッカリと伝わっていたのだ。


 「でも考えてみれば、私等の仕事のコミュニティは狭い世界での話だ。その更に狭い教師の世界で生きてる先生連中は、もっと互いを認め合わねばいけない。そう思わないかね」
 「は、はぁ、確かに…」
 「ふふっ、そうだろう。そう、人間が持つ“欲“…その一つである性欲を素直に出し合って認め合えれば、ストレスが減る。その事が健全へと繋がるのじゃよ。ふふふ」
 あぁ…。
 それから暫くは、黙ったまま足を進めた。
 やがて、見慣れた風景の先に、やはり見慣れてしまった建物の姿を見たのだった。
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 私の目の前、秋葉先生がようやくウンウンと頷いた。
 そして「黒子だけど、奈美子の右の耳たぶの下に黒子なんて無いよ」
 「!…」
 「だけどね、ふふっ、たまにシールを貼る事があるんだ」
 「シール?」
 「ああ、そうだよ、シールだ」
 「何故シールなんかを」
 「んっ、それは久美子君の耳たぶの下にあるからだよ、黒子が」
 「えっ、どういう意味ですか」
 「実はね、以前に久美子君と同じ勤務先になった時期があっただろ」
 「ああ、それは私も聞いています」
 「うむ、その頃、僕と久美子君は言わば上司と部下の関係で、色々と指導していたわけだ。そのうちに僕の方が、彼女に対して好意を持つようになってな」
 「え、それって」
 「ああ、分かり易く言えば、久美子君と犯(や)りたくなったわけだよ」
 「ええっ!」
 「それでも中々上手くいかず、いずれ僕が別の学校に転勤になったんだ」
 「………」
 「その後は会う機会もなくなって、疎遠になっていったわけだよ。そんな時、当時の勤め先に赴任して来たのが奈美子だ。初めて見た時に、ずいぶん久美子君と似てると思ってな。その事を奈美子と親しくなった時にポロっと云ったんだ。奈美子もそれが直ぐに久美子君と分かってな。聞けば同じ大学を出ていて、仲も良かったと言うから更にビックリだよ」
 「そんな事があったんですか」
 「ああ、それから僕と奈美子は親密な関係になって行くわけだが、ある時に、久美子君の耳たぶの下に黒子があった事を何故か覚えていてね、それを思い出したんだ。奈美子にも訊いてみれば、親友の黒子をよく覚えていてね。それで暫くして、奈美子にお願いしたんだ」
 「そ、それは何を?」
 「うん、黒子を付けてくれと。久美子君と同じ所にシールでいいから付けてみてくれないかとね」
 「あぁ…」
 「そう、僕は正直に告(い)ったよ。前から久美子君と一度オマンコしてみたいと思ってたんだ、ってね」
 「あッ!」
 「奈美子は特に驚く事もなくてね。と言うのも、その頃の僕達は互いに変態度を認めあってて、性癖をカミングアウトしあってたから、奈美子も理解を示してくれたわけだよ」
 「せ、先生に、そんな癖が…」
 「ああ、そうだよ。今の君なら聞ける話だろ」
 「ああ、はい」
 「ふふっ、それだけでも薬の効果があったかな」
 「ああっ」
 「そう、それで髪型も久美子君に似させて、時に黒子のシールを貼って貰って、奈美子に久美子君を演じて貰ったわけだよ。それにしても、今のシールは精巧に出来てるね。僕はその黒子を意識しながら奈美子を久美子君と思って、これまで頭の中だけでしか犯(や)れなかった事をたっぷりやったんだよ」
 「な、奈美子さんはそんな…扱いといいますか、それを受け入れたんですか…」
 「だから、奈美子もストレスの塊だったんだよ」
 「ああッ!」
 「そう、教師特有の病的なストレスに蝕まれたから…いや、蝕れないように、精神の開放を性的開放に委ねたんだよ」
 「アアアッッ、ウウウッ」
 「そしてある時、久美子君から君の相談を貰って、それを切っ掛けに会うようになってね。背景には奈美子が僕への相談を促した、と言う事もあるんだけどな」
 「………」
 「そう、それに娘のストーカー被害が発覚して、それを久美子君に相談したりもしたんで、余計に会う機会が増えてね。久美子君自身も凄いストレスを抱えてるのは分かっていたから、解消の手伝いをしてやろうと思ってね」
 「そ、それって」
 「ん、もう分かっているだろ。奈美子と相談してマンションに呼ぶようになったんだよ」
 「あぁ、奈美子さんと夫婦として借りてるマンションですか」
 「覚えていたね。そう、そこでさっきも云った変態プレイの協力をして貰ったよ」
 「………」
 「ん、どうだね?」
 「あ、あの…それで先生は、く、久美子とはセックスまでいったんでしょうか…」
 「それはさっきも云ったじゃないか」
 「あ、あぁ…そうでしたか。けど、ハッキリしないんですよ頭の中が。先生の話なのか自分の妄想なのかが。思い出そうとしても…そう、ひょっとしたら、全ては白昼夢ではないかと…」
 「………」
 「………」
 「…じゃあ、どっちが良い?」
 「え!どっちと言いますと…」
 「ん、だから久美子君とセックスした方が良かったのか不味かったのか」
 「そ、それは…」
 「ふふふ、いや、悪い悪い。久美子君とはまだ犯(や)ってないから大丈夫だよ」
 「………」
 「逆に聞くけど、君は奥さん以外の“誰か“と浮気…セックスをした事はないのかい?」
 「あうッ!」
 その一言に、身体の中を電流が走り抜けた。


 「んっ、どうした、大丈夫かい?」
 「あ、あの…実は1度だけ」
 「ふふっ、分かってるって」
 「えっ!」
 「ああ、君は何時だったか◯◯町の◯◯ホテルに行った事があるだろ」
 その言葉に、一瞬にして電流が流れたように背筋が伸びてしまった。
 「ロビーをこっそり見ていたら、変な髪型をした男性を見つけてね。本人は上手く化けたつもりかもしれなかったが、僕には直ぐに分ったよ」
 あぁ、あの時…。
 そして、やはり「先生と奈美子さんだったんですね“歳の差夫婦”って…」
 「ん、歳の差…?」
 「あ、いや…」
 「確かに、僕と奈美子は一回り以上の“歳の差”があるが?」
 「いえ、それはこちらの事でして…はい」
 私の聞き取れないような小さな声にも、先生は特に興味を示すような事はなかった。


 「あの…確かに私は“ある人”を通して誘いを受け、そのホテルに行きました。そこで」
 「ああ、分かっているよ。僕もまさか寺田君が現れるとは思っていなかったから、その時は凄くビックリしたよ。同時に恐ろしい偶然があるものだと2度ビックリしたね」
 「本当に仰る通りです」
 「しかし狭い世界だから、共通の知り合いがいてもおかしくはないよね」
 「はい…」
 頭の中には、渋谷君や神田先生の顔が浮かんでいた。考えてみれば、彼等の仕事の範囲もある程度は決まっている筈なのだ。まして体験者によって紹介が生まれるのだろうから、自ずと狭い世界での出会いになってしまう。


 コホン、先生の咳払いがした。私は改めて先生の顔を見つめる。
 「それで、君は奈美子を抱いたわけだ。だから僕も、堂々と久美子君をね。どうだい“ご主人”」
 「あぁ…」
 私には先に奈美子さんとセックスしてしまった負い目がある。それに、妻を寝取られたいという願望もある。そう、今ならハッキリそれが自覚できるのだ。
 しかし…。
 「あのぉ、先生」
 「ん、なんだね?」
 「やっぱり、その、無理そうです…」
 「………」
 先生は私は暫く見詰めた後、フーっと大きく息を吐き出した。そしてニコリと笑った。
 「そうか。それは仕方ないなぁ」
 「す、すいません」
 「いや、気にする事なんか何もないよ」
 「………」
 「君の方は、最近になって久美子君との仲が良い方向に向かってるみたいだしね」
 先生の言葉に、私は無意識に頷いていた。そうなのだ。先だっての日曜日から、久美子の“一人語り”によって私の欲求は満たされつつあるのだ。同時に妻の精神も開放されてると実感する事が出来ているのだ。奈美子さんとセックスした負い目はあるわけだが、その秘密を内に秘めるのも快感の一種と考えよう。私は自分の思考を上手くコントロールしようとしていたのだ。


 先生との会話はその後、世間のニュースや職場の話題に変わり、いたって健康的な時間となっていった。不思議なもので、陰湿な空気が流れていたこの店の雰囲気も、開店を待つ有りふれた酒場の一つに思えていた。
 そして、頃合いを見計らった時だった。
 「秋葉先生、ではそろそろ」と腰を浮かせようとした。
 先生の方も、引き留める素振りを見せる事もなく、あっさりとお別れの挨拶となったのだった。
 「じゃあ寺田君、また何かあればね」
 先生は最後に、ウインクまでみせていた。その表情(かお)は、年甲斐もなくお茶目な一面を浮かべていた。


 先生が店のドアを開けてくれて、私は陽の高い世間へと歩み出た。その時だ。
 「そうだ。久美子君の事だけど」
 その言葉に、一瞬緊張が走った。
 「奈美子が今まで通り、お茶会なんかに誘うのは許しておくれ」
 私は笑みを作ろうと試みながら頷く。
 「僕から久美子君を誘う事は、もうないからね」
 「は、はい」と私は畏まった。
 「でも、久美子君の方から“僕達夫婦“に新たな相談でもあったら…ふふふ」
 「………」
 先生がまだ何か云いたそうに見えた私だったが、その会話を自ら打ち消すように、先生はニコリと微笑んでドアを閉めたのだった。
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 BAR白昼夢ーー。
 目の前、秋葉先生が手に持つ小瓶を、私はジッと見ていた。ソレは確かに、栄養ドリンクの瓶にしか見えなかったが、中身は『シンカノシズク』と言う精力剤の一種だとか。


 「どうしたんだね、心配かい?」と、先生が真顔で訊いてくる。
 「え、ええ、あまり聞いた事のない物ですから」
 「ふふっ、まぁ仕方がない。でも、僕達もたまに世話になるけど、後遺症とかは全くないよ。依存する事もないしね」
 「本当ですか」
 「ああ、勿論だよ」


 「先生はソレを、奈美子さ…」と云ってしまったところで、慌てて口を抑えた。
 一瞬、先生の目が光った気がした。
 「…そうか。フムフム、久美子君から聞いたんだね」
 先生の言葉に、私は「すいません」反射的に頭を下げている。
 「いや、いいよ。ただし、他では彼女の名前は出さないように気をつけておくれよ。特に教師連中の間ではね」
 「は、はい、それは勿論です。それに、そんな事を私が吹聴したって分かったら、私の方だって…」
 「そうだな、君の変態性癖が世間にね…それに、君の奥さんの久美子君が変態マゾ女って事もね…」
 「ええっ!!つ、妻がマゾ…女ですって!」
 「ふふふ」
 「せ、先生、それは一体どういう…」
 「聞きたいかい?気になるよね。でも、聞くには…」と、先生が又も小瓶を振っている。やはり“ソレ”を飲まないと聞けないような話なのか。


 「少し飲んでみるかい、勇気を出して。僕も付き合うからさ」
 先生は云うなり、1本のキャップを開けはじめた。
 開いたところでもう1本のキャップも開けて、私に向けて来た。私はそれを恐々と受け取った。
 「じゃあ、もう一度乾杯だ」
 カチリと小さな音がすると、先生はあっさり、というか手本を示すように飲み干した。そして、視線で私に勧めてくる。
 私はゴクリと息を飲むと口をつけ…そして一気に飲み込んだ。


 喉を通った感触は確かに栄養ドリンクか。覚悟していたほどの刺激は全くない。そんな私の様子を見てか「寺田君、どうだい何もないだろ」と先生が笑っている。
 「では、話に戻ろうか。ええっと、何の話をしていたんだっけ、寺田君」
 如何にもの教師の口調に聞こえて、一瞬生徒の気分になった気がした。
 「え~っと、久美子の、しゃ、社会体験のところでした」と告げた瞬間、視線の端で小さな光が瞬いた。その光の流れを追い掛けると、それは天に昇り、光の雫となって降ってきた。
 あぁ…雫…コレが神華の雫か…。


 「寺田君」
 声に前を向き直れば、優しそうな先生の顔だ。
 「そう社会体験、な~んて堅苦しい話じゃなくて、久美子君がオマンコを濡らす話だよ」
 「アーーーッ、そ、そうでした!それを聞きたかったんでシュよ」と声が変だ、と思ったが気にならなかった。それどころか、背中の後ろからモワモワと高鳴りが湧いてきた。
 眼の前では、先生の口がパクパク開いたり閉じたりしていた。口の中からは言葉が舞い上がって行くのが見える。
 その言葉は宙で文字となり、私の頭の中に降りて来た。


 ーー寺田く~ん、半年ほど前に久美子君から相談があったんだよ…。
 ーー彼女は君がストレスを抱えてると心配してたっけね~。
 ーー彼女自身も職場のストレス、夫の心配、彼女も疲れていたみたいだよ…。
 ーーだから機をみて、奈美子と夫婦として借りてるマンションに呼んであげたんだよね…。
 ーーそこで、僕達のセックスを見せてあげるって云ったら、驚いていたよ…。
 ーーでも、僕達は気にせず裸になったんだ…。
 ーー久美子君はどうしてそんな事が出来るのかと聞くから、夫婦だからと答えたよ…。
 ーー僕達の姿を見て、どうすれば寺田君に寄り添えるか考えてごらんって云ってね…。
 ーーそれから僕達は久美子君に撮影をお願いしたんだよ…。
 ーー僕と奈美子は色んな格好でシャブリあったり舐めあったりしたね。うん、見せつけるようにね…。
 ーー奈美子がアソコを拡げると、久美子君は撮影をしてくれてたね。おそらく、久美子君も自分のアソコを濡らしてたと想うよ…。


 ーー奈美子のヤツも最初の頃は他人に見せるなんてと恥ずかしがってたけど、あの薬のせいか、元々持ってた資質のせいか、大胆になってきてね。友達の前で平気で尻の穴まで見せていたよ…。
 ーー僕のアソコも異様に膨らんでね。ソレで奈美子をヒーヒーいわせてたよ…。
 ーー久美子君は時おり撮影を忘れて、僕達の絡みに魅入られる事があったね…。
 ーー僕達も調子に乗って、やった事のない体位を披露したよ…。
 ーー押し車って知ってるかい?後ろから挿入したまま歩くんだ。奈美子は四つ足で、僕は腰を前に突き出すようにしてね。久美子君もやってみたいと思ったんじゃないかな…。
 ーーそれと、僕のアレが奈美子のアソコに入っている所を近くから撮らせたりもしたね…。
 ーーその映像を、プレイの後に三人で視たりもしたね…。
 ーー他には仮面を着けてプレイしてるところを撮った日もあったね…。
 ーー久美子君もだんだんと慣れてきたけど、毎回生殺しで辛かったんじゃないかな…。
 ーーん、久美子君と僕が“本番“をやったかって?
 ーーフフフ、さぁそれはどうだろうか…。
 ーーまぁ、そうやって色々と妄想してるだけでも楽しいんじゃないかな…。


 ーーだけど、僕の勃(た)ちが悪くなってきてね。ふふっ、歳には勝てないって事だね…。
 ーーそんな時“あの人達“を知ってね、お願いに行ったんだよ…。
 ーー実際に相手をしてくれたのは若い人だったね…。
 ーーその彼とは色んなプレイをやったよ…。
 ーー僕の前で奈美子がその彼とプレイする処を見るのは刺激的だったな…。
 ーーその彼は日によって手を変え、品を変えて楽しませてくれたよ…。
 ーー僕自身にも新たな発見があったよ。自分の中にSとMが同居してるって分かったしね…んんっ!?。
 ーー寺田君!?


 「どうした寺田君?」
 「ヒッ、ヒィーーッ!ヒィーーッ!ヒィーーッ!」
 「おいっ、寺田君!」
 「………」


 頭の奥で、色んな顔が現われては消えていた…久美子、奈美子さん、秋葉先生、渋谷君、それと仮面の女…。
 と、誰かが私の名前を呼んでいる…。
 やがて、瞼がゆっくり開いていき…暗い天井が目に付いた。
 天井に“言葉”が、いくつか舞って見えた。それが今度は、黒い雫となって消えていく。あぁ… “黒子”のような雫だ。
 すると、身体が揺れている事に気が付いた「寺田君、大丈夫かい」先生が私の身体を揺すっていたのだ。


 私は2、3度頭を振って、ゆっくりと椅子の背もたれから身体を起こそうとした。
 「わ、私は一体…」
 「ああ、話を聞かせてたら、急に痙攣が起きたみたいに震え出したんだよ。…大丈夫かい」
 「は、はぁ…」
 「頭が痛いとか、気持ち悪いとかは?」
 「え、ええ、大丈夫みたいです」と口にしたが、頭はまだボォっとしている。
 「ちょっと待ってておくれ。冷たい水を持って来るから」
 そう告げて、先生がカウンターの中へと入って行った。その後ろ姿に、先生はあの“薬”を本当に飲んだのだろうか、そんな疑問が重い頭を横切った。
 私は瞬きをして、一度目を瞑った。
 目を閉じた私の耳に、ガチャガチャと氷の音が聞こえてきた。先生が製氷器から取り出しているのか。その音の合間をプチプチと“黒子”が弾け飛んでいる。


 やがて先生が戻って来て「寺田君、まだ、ボォっとしてるみたいだけど、本当に大丈夫?」と、水差しと氷の入ったグラスを置いてくれた。そして、波々と注いでくれる。私は頭を下げて、それを飲み干した。
 先生は私の様子を観(み)ながら「もう1杯くらい飲んでおこうか」と云って、空になったコップに注いできた。
 「これには何も入ってないからね」
 その言葉にむせ返りそうになりながらも、続けて飲み干してみた。
 胃の奥に水が染み渡って暫くすると、身体が熱くなってきた。そして、額の辺りから汗が吹き出る感触を覚えた。
 「発汗が来たら、スッキリすると思うよ」と、先生が頷いている。


 「でも寺田君、今日はこの辺で止めておこうか」
 「いや…あの、実は黒子が」
 「黒子!?」
 「はぁ、そうなんです、黒子なんです。さっき黒子が降って来たんですよ。それで…」
 先生は私を心配げにシゲシゲと覗きこんできた。それでも私の口は止まらなかった。
 「あのお…先生の彼女、奈美子さんの右の耳たぶの下に、黒子なんてありませんよねぇ」
 私自身も何故そんな質問を口にしたのか、理由など理解できなかった。先生を見れば、目が真ん丸と拡がっていた。初めて見る先生の表情(かお)かもしれない。


 「寺田君、君はやっぱり面白いところがあるなぁ」
 「あ、いや、すいません…」
 「………」
 「ま、不味かったでしょうか…」と言い掛けたところで「いや大丈夫だよ。うん、君はやっぱり面白い人だ」と呟きが聞こえた。
 私は先生のその顔を暫くの間、見詰めていたのだった。
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 待ち合わせの時間に遅れないようにと店を出た私ーー寺田達夫。
 約束の5分前、北口の1番大きな改札の前にやって来た。秋葉先生はまだ、来られていないようだ。
 暫く改札の中を見つめていると、向こうの方から記憶通りの姿がこちらにやって来るのが見えた。秋葉先生だ。
 目の前に来られた先生は相変わらず恰幅が良く、茶色いブレザーを着こなした姿は威厳に溢れていた。


 「やあ、寺田君、久しぶりだね」
 「ご、ご無沙汰してます。今日はよろしくお願いします」
 先生を前にすると、私の緊張は嫌でも高まっていく。
 先生の方は、私の表情(かお)を覗くや「ちょっと痩せたかな?けど、顔色は思ったほど悪くないね。お世辞にも良いとは云えないけど」と、リラックスした感じだ。
 それから、ふふふと口元を歪めて「君の顔を見ると、何だか今日の相談事の中身が分かる気がするよ」と目を細めて告げてこられた。
 こちらは顔を強張らせるだけだと言うのに。


 「じゃあ、秘密の話をするのに相応しい店があるからそこに行こうか」
 先生は笑みを浮かべながら、踵を返して歩き始めた。私はその後を追いかける。
 人の波をやり過ごしながらエスカレーターに向かい、そこを下れば覚えのある場所だった。先日、久美子と秋葉先生が落ち合った場所だ。先生はそこを通り過ぎると足を速めた。
 先生の横に肩を並べてチラリと横顔を覗く。微かに白髪が確認出来るが、皺も少なく肌の艶も良さそうだ。歳は私より一回以上も上なのに。


 「久美子君とは上手くいってないのかい?そんな事はないよね」
 いきなり向けられた質問にドキリとした。先生を見れば、口元がニヤついている。
 「く、久美子とは、そのまぁボチボチです…はい」
 「ボチボチか。と言う事は悪くないという事だな」と告げて、今度は朗らかな笑みを向けてきた。
 「君は久美子君と結婚してどのくらい経つのかな」
 「えっと10年以上は…」
 「ん、何だか頼りない言い方だな。でも夫婦ってそんなもんだよな」
 「………」
 歩きながら話す先生。それも思った以上に口が回る先生に、意外な気がしながらも緊張が少し解れる気がした。これはすんなり、色んな事が聞けるかもしれない。


 やがて覚えのある通りにやって来た。
 雰囲気は先だってと同じで、今日土曜日のこの時間帯も人が疎(まば)らな飲み屋街だ。
 先生が足を止めたのは、例の店【BAR 白昼夢】の前だった。
 先生は扉の前で一旦振り返って私を見た。その目が、ここでいいよな、と怪しく誘ってる気がして、身体が竦みそうになってしまった。
 「さあ、ここだよ。入ろうか」と落ち着いた声だ。
 私は先生の後ろ姿に引き込まれるように足を進めた。


 店の中は想像した通り、落ち着いた感じの造りだった。
 先生が照明のスイッチを入れれば、浮かび出たのはレトロな灯りだ。


 カウンターの中に入った先生が「さぁどこでもいいけど、そこがいいかな」と云って、二人掛けのボックス席を指さした。
 店は小さなボックス席が二つに、カウンターは5人でいっぱい。かなり小ぢんまりとした店だった。


 瓶ビールを取り出し、グラスの用意を始めた後ろ姿に「あのぉ今日は誰もいないんですか」と聞いてみた。
 「ああ、開くのは暗くなってからだからね。来るのはバーテンが一人で、その彼がいつも一人で切り盛りしてるよ」
 「あっそう言えば」そこで私は久美子から聞いた言葉を思い出した「この店って、先生の教え子さんがやってるとか…」
 「久美子君から聞いたんだね。そうだよ、かなり古い子なんだけどね。うん、その彼からここの鍵を借りたんだよ」
 先生はそう云いながら、盆を持ってこちら側に出てきた。


 小さなテーブルを挟んで向かい合った私達。
 「さぁいこうか」
 私がビール瓶を持った所で、先に先生が注いでこられた。私は恐縮しながらも頂く事にした。そして直ぐさま注ぎ返す。
 軽く乾杯したところで「今日は久美子君の事で相談だったよね」と、いきなりの本題だ。私は蒸せそうになりながら頷いている。
 「ふふっ、何となく内容も分かりそうな気がするけど、喋り辛くなったら云っておくれ。酒は色々あるからね」
 はぁ…と、頼りない返事をしてしまう私に「それに、腹を割れないなら、口を割らせる酒もあるからね」
 一瞬、先生が冗談を云ったのかと思ったが、意味は読み込めない。先生は早くも1杯目を飲み終わって、2杯目を口にするところだ。
 私も酒の力を借りてと、自分に言い聞かせながらグラスの残りを一気に呑みほした。
 そして「秋葉先生、あのですね、妻の久美子から私の事で何か相談とか愚痴とか聞いてらっしゃいませんか」と、一息で口にした。そう、今日の相談とは言ってみればこれだけの事なのだ。
 先生はグラスを置くと口元に笑みを浮かべた。
 「ふふふ、聞いてるよ。聞いてるとも、君の事は色々とね」
 その声の響きに、背筋がキュッと硬くなっていった。


 「じゃあ、どこからか話そうか…そうだなぁ」
 先生が呟きながら、その目は私を甚振る目ではないのか。
 「でも、その前に僕自身の事を少し話そうかな。その方が君もこの後の話が聞きやすいと思うしね」
 あぁ…それはどう言う意味だ…。やはりこれは、飲まないと聞けない話なのか。
 そして私はもう一杯、手酌で注いで飲み干してみせた。


 「ふふっ、いい飲みっぷりだ」
 「………」
 「そう、君も既に知ってると思うが、僕は何年も前に離婚していて、今は独身なんだ。久美子君の世話になった娘は、別れた女房と一緒に暮らしているし、僕は一人暮らしなわけだよ」
 「はぁ…」そうですね、と心の中で応える。
 「だけどね、君にだから教えておくけど、実は恋人がいるんだ」
 え!っと驚いてみせた。が、その事実は妻から訊いている。
 先生は私の表情など気にせず、グラスを口に運んでいる。


 「恋人といったって子供じゃあるまいし分かるよね、それがどんな関係か」
 「は、はぁ」またも頼りない返事だ。
 「ふふっ、まぁ愛人とかセックスフレンドといった方が分かり易いよね」
 ううッ、改まってそんな言葉をぶつけられると萎縮してしまう。
 「どう?こんな話も聞きたいだろ」先生がビール瓶を向けて来ながら、私の覚悟を計っている、ような感じだ。
 「でもね、時には夫婦もやるんだよ」
 「え、どう言う意味ですか」
 「疑似夫婦さ」
 「疑似夫婦?」
 「そう。愛人、セックスフレンドだとしても付き合いが長くなればマンネリが生まれてくるだろ。だから新しい刺激を探したんだよ」
 「あぁ、それが…」
 「そう、その彼女と二人で夫婦として色んな所に顔を出したり、呼んだりネ」
 「それは…」と聞きかけてゴクッと息を飲み込んだ。先生の目が据わって見えたのだ。
 その先生がこちらに向かって顎をしゃくる。もっと飲めと云っているのか、私は慌ててグラスを口に運ぶ。


 「長い事教師をやってるとね、色んな人に会ったり色んな噂を聞いたりするんだよ」
 「………」
 「君は知ってるかな…悩みを抱える教師やお堅い職業の人達を相手に、コーディネートをしてる人がいてね。悩み多き人達がストレスから性犯罪なんかを犯さないように、解放出来る場所を用意したり、解放出来るシチュエーションを作ったりしてくれるんだ」
 「ああっ!」そんな事が…と云おうとしたが、口が開かなかった。それでも頭の中には、“ある人“の顔を浮かべていた。
 「まぁ僕も…と言うか僕達も縁があって、たまに世話になるんだけどね」
 「………」
 「とまぁ、それだけ我々教師連中は病的なストレスに犯されているという事だよ。それで半年ほど前、君の奥さん、久美子君から相談のメールを貰った時も直ぐにピンときたんだ。彼女も恐らく、病的なストレスを抱えてるってね。でも、悩みは彼女自身の事だけじゃなかったんだよね」と先生が口元を歪めた。
 私は遂に来たかと、身構えてしまう。
 「そう、久美子君の相談のメインは、君の事だったんだよ」
 「あぁ…」
 「彼女も話しずらかったと思う。だから僕の方から聞いてみたんだよ」
 「そ、それはどんな風にでしょうか…」
 「ああ、『ひょっとして、寺田君が性的な事件でも起こしそうなのかい?』って」
 「ああっ!」
 「ふふっ、その時の久美子君も今の君みたいな反応だったよ」
 あうッ、思わず今度は、背筋が伸びてしまう。
 「図星みたいな様子だったから『じゃあ、家にパソコンがあるなら1度ネットの履歴が見れないか試してごらん』って云ってみたわけさ」
 「………」
 「そう、それで久美子君は視たんだな。もちろん君自身もシッカリ記憶にあるやつをだね」
 ああっ!。


 「ふふふ。それでね、僕の娘のストーカー騒動の事で頻繁に連絡を取るようになってたんで、そのネット履歴の報告を聞く機会を改まって設けたんだ。じっくり聞かせて貰おうと思ってね」
 「あぁ、そんな事が…」
 「ああ、そうだよ。それで君の性癖も知る事になってね、久美子君にはこう告(い)ったんだ『ご主人…寺田君に付き合ってあげろ。おそらく彼の悩みは半端なものじゃない。間違いを起こして世間から後ろ指を指される前に、君も彼の性癖に寄りそってやれ』とね」
 「そうだったんですか!」
 「だけど久美子君は、ずっと戸惑ってる様子だったな。だから君の方に態度として現れたのは、最近じゃないのかな。思い当たる事はないかい?」
 あッと、見事に日曜の一夜の出来事が浮かんできた。そして、妻に最後の一押しをしたのはあの日の昼間、この店で秋葉先生と会ったからに違いない、と思えた。
 「ふふっ、どうやら身に覚えがあるみたいだね。それは大いに結構な事だよ」と口にして、先生がウンウンと頷いている。
 「まぁ僕としたら時間が掛かったと思ったけどね。と言うのも、久美子君がそのネット履歴の話を初めて僕にした時から、彼女自身も興味は持っていたみたいだからね」
 「きょ、興味を、妻が…ですか…。その興味って…」
 「んん、決まってるじゃないか、性的好奇心ってやつだよ」
 「ああッ!!」
 「そう、それで久美子君には色々とな…ふふふ」
 「い、色々とは…」
 「んん、まあ生徒に教えるのと同じ云い方をするなら“社会体験”ってところかな」
 「え!その社会体験って…」
 「ふふ、その詳しい内容を話すには飲みが足りないな。勿論、僕もだけど」
 と告げた先生が立ち上がって、カウンターの中へと進んでいく。新しいビールでも取りに行くのだろうか。


 先生は直ぐに戻ってきた。手にはよく見る栄養ドリンクの小瓶が2本。
 「これはね、実は中身は違うんだよ」と、手に持った小瓶を顔の前で振って「ブレンドなんだよね」と目を向けてきた。
 「ブ、ブレンド?」
 「あぁ、非合法のね」
 「ええっ!」
 「とは云っても、人体にはさほど影響はない。一時的に夢を見るだけだよ」
 「ほ、本当ですか」
 「ああ、この中身は“神華の雫(シンカノシズク)”といって一種の精力剤、それに興奮剤を少し混ぜて薄めたやつなんだ」
 「せ、先生は…」何故そんな物を…と続けようとしたが、口が動かなかった。
 「なんだ、びっくりしてるのかい。こんなのは普通の栄養ドリンクとそんなに変わらないさ。勿論、女性だって飲める物だよ」
 「ま、まさかソレを…」
 「ふふふ…」
 先生の笑いに身体がゾクゾクと震えて来た。あぁ…私は何か過ちを犯そうとしているのだろうか…。
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 妻との衝撃的な一夜を過ごしてから、4日が経った。
 その4日間の中には、清々しい朝を迎える事が出来た日もあった。それは決まって、前日の夜に久美子が再び“妻の一人語り”をしてくれた時だった。
 その時の妻は、少しばかりの酒を呑んで、アルコールの力も借りながら私のエロ履歴にあった変態女を演じてくれるのだった。
 私は自分のエロ履歴を視られていた事が、結果的にはケガの功名となって、思わぬ恩恵を受けるようになったわけだ。
 とは言っても私の真面目な性格は“歳の差夫婦”の奈美子さんとセックスしてしまった負い目を忘れる事はなかった。


 それともう一つ気になっている事があった。
 妻が先日の日曜、M駅の【BAR 白昼夢】で、秋葉先生に相談をしたその詳しい内容だ。
 妻はどこまで私の変態気質を教えたのだろうか。秋葉先生に限って、私が変態である事を世間に吹聴するとは思えないが、小心者の私はやはり恐いのだ。妻から秋葉先生の不倫事実と、その“プレイ”の内容も少しは知ったつもりだったが、それもどこまで本当かは分からない。
 この数日間、妻と床を一緒にした時も、私は心の何処かに小骨が刺さった気持ちでいたのだった。


 金曜日。考えた末、私は秋葉先生と会って直接話しをしてみようと決めた。
 早速昼休みに知り合いの教師仲間達に、メールで秋葉先生の連絡先を尋ねてみた。私の記憶が正しければ、先生は隣町の中学で教頭の職に就いている筈だったが、直接学校に電話するのは控える事にしていた。
 妻に聞けば携帯番号やメールアドレスも分かるのだろうが、や